Hiiragi , Final Game 4
これは……霧?周りが全く見えない。
ファリナは霧属性も持っているというの?
下手に動き回ったらステージから落ちてしまう可能性もある。
霧はステージを覆う範囲だったし動いたところで抜け出すのは不可能だろう。
「“ブラストウィンド”」
風の魔法で吹き飛ばそうとするが、少し吹き飛ばして直ぐに元に戻ってしまう。
この霧はファリナの魔法、魔力で出来ている。
つまり私は今、ファリナの魔力に包まれている……それは、もうファリナの手の中にいると言ってもいいでしょうね。
握り潰すも、弾き飛ばすも彼女の思うがままということね。
『ふふっ、どうかしら?私の魔法の中は心地よいでしょう?』
「そんな訳ないでしょ!じめじめしてて気持ち悪いわ!」
何処からかファリナの声が聞こえてくる。
それは前後左右、上、色んな所から聞こえてくる。
もう服は結構湿ってきていて、もう少しすればびしょびしょになってしまうわ。
『あら、残念ね。じゃあこんなのはどうかしら?』
その言葉と同時に後ろから殴られたような衝撃がくる。
慌てて振り返りながらレイピアを振るうが、空を斬るだけで何の手応えもない。
あるのは剣圧で揺らめく霧のみ。
すると今度は左側から腕を軽く斬られる。
またレイピアを振るうがやはり手応えは感じられない。
その後何度も殴られたり斬られたりしたが、反撃しても手応えはない。
しかし、私自身も大したダメージはない。
霧自体が僅かな質量を持って攻撃してきてるみたい。
そりゃ、斬っても斬れないわけだ。
受ける打撃も大した威力は無いし、切り傷も全て浅い。
かといって、これを続けられたら負けは確実ね。
「はぁ、潮時かしらね」
本当ならもっと決定的な時に使いたかった。
相手を確実に倒せるような時に……。
まぁ、仕方無いか………ただ負けるよりはずっといいよね。
先の事はその時考える!
『あら?諦める気になったのかしら?』
「まさか、そんなはずないでしょ!」
『貴女が今更何をしようと、私の魔法からは逃れられないわ』
「それはどうかしら、ね!」
そうだ、これは昨日と同じ状況よ。
再生するなら止めてしまえばいいのよ。
それに霧はほとんどが水だから、私からしたら相性が抜群ね。
「凍れ!“フリージングエア”」
私を中心にして空気が徐々に冷たくなっていくのを感じる。
でも不思議と寒さは感じない。
魔法が成功したと喜んだが、予想外の変化が起こる。
私は霧自体を凍らせようとしていたが、その霧が段々下に下がってきているような気がした。
ステージ上も先程より明らかにびちゃびちゃになっているし、霧の粒?が心なしか大きくなってきているようにも感じる。
まさか失敗……と不安になったが、そんな心配を余所に大きくなった霧の粒が凍り始める。
霧が凍っていくことによって視界がどんどん晴れていき、やっとファリナを見つけることが出来た。
「見付けた!」
「な、何で貴女が氷属性を……」
相手が呆けている今がチャンス!
でも焦っちゃ駄目よ。氷属性の使い手は何時でも冷静じゃなきゃ。
「秘密よ!“アイスニードル”」
呆けているといっても相手はSランク。
避けると考え、あらかじめファリナの真下じゃなく少し前に出す。当たればラッキー。
予想通りファリナは後ろに下がる。
私はファリナが後ろに下がる動作と共に一つの魔法を唱える。
「“アイスソーン”」
ファリナが後ろに下がった位置に氷の蕀が出現し、ファリナを絡めとる。
絡めとられたファリナは抜け出そうともがけば、蕀の棘に傷付けられ動くのを止め、項垂れた。
諦めたかと思ったが、審判がコールしないし、何より本人が降参をしていない。
私は留めとなるようにレイピアを強く握り締め、ファリナに向かって駆け出した。
「これで終わりよ!」
「嘗めるなぁぁぁぁ!!“ファイヤーウォール!”」
「くっ!?」
ファリナの首元にレイピアを突き付けようとしたその瞬間、ファリナの足元から炎の壁が立ち上がる。
暫くして炎が消えると、氷の蕀が溶けて自由になったファリナがいた。
「私のようなSランクがBランクの貴女なんかに負けるわけにはいかないのよ!」
ファリナはその言葉と同時に駆け出す。
そこからは凄かった。
レイピアと威力の低い魔法の応酬。
斬っては弾き、突いてはかわし、魔法を放てば相殺。
そんな応酬が続いた。
やはりファリナの方がレイピアも魔法の技術も上だ。
私はなんとか食らい付いていくのがやっと。
「はぁはぁ、切りがないわね」
「はぁ…はぁ、そうね」
「次で最後にしましょう。お互い今出せる最大の魔法で勝負を決めましょ」
「乗ったわ」
お互いに距離を取り睨み合う。
ファリナは何属性を使ってくる?特殊属性の霧?
だったら私はさっきと同じように氷属性で攻めれば……。
いや……ファリナも私が氷属性を使ってくるかもと考えるはず。
だったらファリナは火属性を……?
もう時間はない、これに掛ける!
「フレイムストライク!」
「アクアカノン!」
私の高圧の水とファリナの巨大な炎がぶつかり合う。
水と炎がぶつかった瞬間、凄まじい水蒸気が発生し、急速に膨張し始めた。
膨張した水蒸気は爆発にも似た衝撃を生み、私は吹き飛ばされた。
私は自分の身体が宙に浮いたところで意識を失った。
◆◆◆
「ちょ、ちょっと!なんでルナが氷属性の魔法を使ってんのよ!どういうことなのキリ君!」
このギャーギャーと騒いでいるのは、俺が起こしたマスター。
騒いではいないが、ミレーナさんもフレイアさんも一様に驚いているようだ。
何時もは凛々しく口を結んでいるフレイアさんでさえ、口をポカンと開けている。
「どういうこと、って言われても……ルナの努力と俺の入れ知恵としか……」
「その入れ知恵が何なのか聞いてんの!」
鬼気迫る勢いで胸ぐらを掴んでくるマスター。
「それはこの大会が終わってからにしましょうよ。今、要らない知恵を入れても戦闘スタイルが崩れてしまうかもしれないですから」
「そういうことなら……でも、大会が終わったらちゃんと聞かせてもらうからね!」
「分かりましたって」
その答えを聞くとマスターは胸ぐらを掴んでいた手をパッと放す。
別に苦しくは無いけど止めてほしいよな。
「それにしても綺麗ねぇ」
ミレーナさんの呟きでステージを見てみる。
確かに霧の粒が凍って、光を反射してキラキラ光っているように見える。
「氷霧ってヤツだな…いや、どちらかというとダイヤモンドダストの方が近いか」
「何なのソレ」
「……説明するのが面倒です」
その後、ルナ達は激しい闘いを続け、最終的には水蒸気爆発によりステージとその周辺が水蒸気によって包まれる。
此処からでは状況が分からない。
もしかしたら、審判も巻き込まれてるかもしれない。
暫くして水蒸気が晴れてくるとステージ上には、なんとか身を守った審判だけで、ルナも相手のファリナもいなかった。
ルナは場外の壁際まで吹き飛ばされていて、気を失っているようだ。
「私、ルナの所に行ってくる!」
それを見たマスターが慌てて控え室を飛び出していく。
俺はそれを見送ってからもう一度ステージの方を見ると、反対側にはファリナも壁際で倒れていた。
倒れている二人を確認した審判は試合終了のコールをする。
『両者共に場外!よって第三試合は引き分けとする!』
こうして第三試合は引き分けに終わった。




