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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
56/61

Hiiragi , Final Game 1

 

 ◆◆◆


『皆さんこんにちは!盛り上がってますか!』


『いよいよ決勝戦ですね』


『はい!今日、セレスティア王国の第一回最強ギルドが決定します!』


『皆さんも張り切って応援しましょう』


 いやぁ、実況ちゃんと解説ちゃんは今日もテンション高いなぁ。

 まだ朝だぞ。時間にしたら七時くらいじゃないか?

 いくらこの世界の住人が朝早いからって、こんな朝っぱらから始めなくてもいいだろ。


 俺達は何時ものように控え室に来ているが、連日の疲れの所為かほとんどがソファーで寝てしまっている。

 起きているのは俺とフレイアさんとミレーナさんだけ。

 意外な事にあのレベッカさんやクレアさんも寝てしまっている。


 因みに動けない楓は俺が何時ものように背負って此処まで連れてきた。

 人格は昨日の帰りには戻っていて、戻った瞬間に身体の激痛に涙していた。

 普段無表情な楓が声を押し殺して泣く姿は中々にレアだ。

 兄妹の俺等でもほとんど見たことがない。


 まぁ、それは置いといて……いよいよ決勝戦だ。

 この疲れきっている皆の中から一人選ばれる。

 それは相手も同じだ……と言いたいところだが、相手ギルドは選手層だけでなくサポートの層も厚いだろうから、士気や状態がまるで違うだろう。

 だからこそ一試合目は勝ちを取りたい。


『今日はなんとセレスティア王国現国王グラハドール・フォン・セレスティア陛下と第一王子のアレックス様、第一王女のクリスティーナ様も観戦に来ています。選手の皆さまも張り切って頑張りましょう!』


『では陛下、一言お願いします』


『あぁ。……この度は国立のギルドがこのような事になったことは大変驚いている。しかし、ギルドが複数できたことによって、互いに競い合い能力を高めていくことによって、それが国民の助けになることを願っている!』


 へぇー、あれがこの国の王様か。

 年齢は四十くらいか?結構若そうだな。

 髪も白髪とかじゃなくて綺麗な金髪だし、中々にダンディーなおじ様だな。

 王子は二十歳くらいか?流石にイケメンだな。

 姫様はまだ幼そうだな。

 身長的には桜と同じくらいだから十二歳とかそれくらいだろう。


「フレイアさん、王妃様は来ないんですか?」


「ん?あぁ、あの人は少し特別だからな」


「へぇー。王様は他に側室とか居ないんですか?」


「あぁ、グラハドール様はエミリ様一筋だ」


 エミリというのが王妃様の名前なのだろう。

 王様が正室だけとは……一夫多妻が認められているこの世界じゃ中々に珍しいんじゃないか?

 それに聞いた話じゃ王子が二人に王女が四人いると聞く。

 王妃様も大変そうだな。


『さぁ!記念すべき決勝戦の第一試合です!“戦乙女の茶会”セレーネ・ルミナス選手!対、“黒龍の息吹”ヴァレリ・フォン・バレンティア選手!』


「んぁ?……私の出番か?」


 寝ていたマスターだが、自分の名前を呼ばれたことに気が付き目を覚ます。

 第一試合にマスターが選ばれたのは良かったのかもしれない。

 勝てる確率が一番大きい。こんなんでもマスターだからな。

 欲を言えばランディ・バイソンに当たってほしかったが、まず一勝を取ることが大事だ。


「あぁ、セレーネの出番だが……相手はバレンティアの長男だぞ」


「あ゛ぁん?……行ってくる……殺しに」


「ちょっ!?」


 あのお気楽主義のマスターが鬼の様な顔をして、俺の制止も聞かず控え室を出ていく。

 頼むから殺しは止めてくれよぉ。

 失格になっていきなりの黒星は今後の士気に関わるから……。


「あの、マスターどうしたんですか?相手選手が原因みたいですけど……」


「アイツはヴァレリ・フォン・バレンティア。公爵家の長男だ」


「そしてセレーネの家出の原因で、元婚約者だったの」


「私から見ても相当腐った野郎だったよ」


 詳しそうなミレーナさんも口を挟んでくる。

 それにしても、あのフレイアさんまで口が悪くなるほどか。


 詳しく聞いたところ、ヴァレリという男、歳は四十三だという。

 数十人の奴隷を所持し、妻も数人いるという。

 マスターが婚約者となったのはマスターが十二の頃で、ヴァレリは三十過ぎ。

 これくらいの年の差はこの世界じゃ当たり前らしく、マスターも相手がまともな人なら別に文句はないと言ったらしい。


 ここからが酷い話で、十二歳の少女に「第二婦人としてだったら迎え入れてやらんでもない」と言ったらしい。

 公爵家の娘であるマスターをだ。

 更に驚くことに第一婦人に産まれて間もない第一王女のクリスティーナ様を婚約者にしていたようだ。

 クリスティーナ様が結婚できる十五歳になるのを今も待っているらしい。


 マスターは学園に通っていた為、卒業の十八まで待ってもらい、卒業した瞬間に家出。

 元々この話を持ってきたのが父親らしく家出するのになんの未練もなかったらしい。

 いや、一つルナの事は心残りだったようだ。

 王女は学園に通う予定もなく、十五と同時に結婚するようだ。


 よく王様も許したもんだ。

 チラッと王女の様子を見てみるが何処と無く表情が暗い。

 後、二、三年で自分の父親と同い年くらいの人と結婚だもんな。

 因みにヴァレリに子供はいないらしい。


「グラハドール様も公爵家の話を簡単には無下に出来ないからな。苦渋の判断だったろう」


「面倒臭いですね、貴族って……」


「そうだな」


 王様も嫌々なのか。

 第一王女なら他国の王子とか居ただろうに……。


「それにしても何でその貴族様がギルドなんかに?」


「さぁな。どうせ汚いてでも使ったのだろう」


 俺が知りたいのはどうやって入ったかじゃない。

 何故ギルドに入ったかが問題だ。


『……それでは第一試合……開始!』





「まさか貴方が試合に出てるなんてね」


「やぁ、久しぶりだなセレーネ」


 相変わらず嫌みたらしい男だ。

 変わったといえば前よりも太り、禿げてきている。

 それより何故この男はこの大会に出ている?

 昨日まではいなかったはずだ。


「何故、私が出ているか不思議そうな顔をしているな。……この大会には二人の補欠が認められているのだよ。昨日の試合で選手が一人やられてしまってね……」


 補欠の存在は知っていた。

 ただウチに補欠を出せる余裕がない。

 それは仕方無いと割り切っている。

 カエデちゃんには悪いけど出てもらう可能性がある。


「それはどうでもいいわ。何故貴方がギルドに?」


「そんなこと決まっているだろ?君を取り戻しに来たんだ」


「貴方のモノになった覚えはないわ。それに無理な勧誘や引き抜きは禁じられてるわよ」


「そう言うと思ったぞ。だから私は此処に来た。……今此処で決闘をしようじゃないか!」


 決闘……確かに決闘なら公式の試合だし、勝者は絶対遵守の命令権を得られる。

 法律を無視した命令も出来る。

 それに今この状況、騎士の審判がいるから公式な決闘として成り立っているわね。


「いいんだろ?審判」


「え?あ、はい。相手の了承を得れば」


「だそうだ。どうする?」


「……いいわ」


 此処で関わりを完璧に絶っておくのもいいかもしれないね。


「おぉ、それは良かった。では、審判」


「は、はい。両者の要求は試合後に聞くこととし、これよりセレーネ・ルミナスとヴァレリ・フォン・バレンティアの決闘を行います!ルールは試合同様とし、殺し以外は何でもありとします。そして決闘の勝者を第一試合の勝者ともします。それでは第一試合……開始!」


 殺しは無しか。

 審判の声量からして恐らくだが、周りの観客達には最後の試合開始の合図しか聞こえてないだろう。

 こんな所で決闘が行われているなんて夢にも思わないだろう。


「それで?貴方はどうやって闘うのかしら?どうやってそのランクまで上がったかは知らないけど、貴方全くと言っていい程闘えないわよね」


「ひひっ、そうだな。だから私は道具を使わせてもらうよ」


「道具?」


 ヴァレリは太く短い指をパチンと鳴らす。

 すると選手入場口から二人の男性と三人の女性がよろよろと入ってくる。

 身体は傷だらけで、ただの布切れに等しいボロボロになった服を着た感情の無い……いや、生気の無い表情だ。


「アレは三等奴隷達だ。問題ないだろう?」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべ聞いてくる。

 確かにルール上は、認めたくないが問題はない。

 審判も渋い顔しているが、黙認している。

 一等奴隷や二等奴隷と違い三等奴隷に人権は無く、家畜と同等…いや、それ以下の道具として扱われている。

 しかし、この国では三等奴隷の売買は全面的に禁止されている。

 ただ所持は禁じられていない為、何処で手に入れたかは知らないけど、他国で買ったと言ってしまえばそれまでだ。


「本当に腐ってる……」


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