Hiiragi , Second Game 4
◆◆◆
「……ん」
「おぉ、サクラ。気が付いたか」
「んぅ、レイシーさん?……試合は?」
「一応私の勝ちだ。だが、私も勝ったとは思っていないのだがな。……私はサクラに初めてを奪われてしまったし」
「え?…………え!?」
「落ち着け桜。その人の悪ふざけだ」
「お兄ちゃ~ん」
意識を取り戻して早々テンパる桜を落ち着かせるために頭を撫でる。
それにしてもさっきのは確実に態と言ったな、この人。
質が悪いぜ。
「レイシーさん、あまりウチの妹を苛めないで下さい」
「いやぁ、サクラが可愛くてついな」
まぁ、分からないでもないが、ついで妹を苛めないでほしい。
どうせ初めてっていうのも魔法が破られたことだろう。
それを桜に教えると、桜はそういうことかと納得したようだ。
「そういえば、レイシーさんの幻魔法って一対一には向いてませんよね?」
「……フフッ、そうなのだよ。あの魔法は仲間がいて漸く有効になりやすい魔法なのだよ。後は敵が複数いる時でも可だな」
確かに魔法を発動している間は他の魔法も使えないようだったし、動くことも出来ていなかった。
一対一は有効にはなりにくいだろうな。
逆に多対一、一対多、多対多の様な何処かしらが複数の人がいれば、仲間が仕留めてくれたり、仲間割れを狙ったりできるわけだな。
「それにしてもいいんですか?そんなこと言っちゃって」
「ん?あぁ、いいさ。サクラみたいな対処方法はまず出来ないだろうからな」
「いや、桜じゃなくても俺達兄妹なら出来るかと……」
「なんと!?……まぁ、私もそれが分かっただけでもいいさ」
成る程、俺達には幻魔法は使わないと……いや、使うタイミングを見るって事だな。
『続いて二対二のタッグ戦を始めます。“戦乙女の茶会”キリ・ヒイラギ選手、ツバキ・ヒイラギ選手!“魔神の加護”アンディー・アドラー選手、デニス・ブルーニ選手!』
「おっ、椿とか」
「はい、兄さん!やっぱり私達は愛の絆で結ばれてるんですね!」
「はいはい、とっとと行くぞ」
「はい!」
「お義兄さん!」
「お義兄さんじゃねえよ」
椿と次の試合の為に控え室を出ていこうとしたらレイシーさんに呼び止められた。
何となく駄目な呼ばれ方をしたから突っ込んでしまった。
本来ならスルーして行くべきだった。
「お義兄さんが次の試合に負けたらサクラさんを私に下さい」
「だからやんねぇって!」
「じゃあ、お義兄さん……」
「だから……」
「を、下さい」
「やんねぇ、って何言ってんだアンタは!」
やべぇ、いきなり矛先が俺の方に向いたぞ。
「はぁ、大体負けたらって……俺等が勝ったら何してくれるんだよ?」
「……そしたらサクラを諦めるよ」
「あんまり対等じゃない気がするが、まぁいいか。……その約束忘れるなよ」
「あぁ、分かった」
漸く話が着いたところで控え室を後にし、ステージへ向かう。
ステージに上がると相手選手がやはりと言うべきか、待ちくたびれたようにイライラしていた。
「おせぇぞ、テメェ等」
「すまない」
遅れたのは事実なので素直に謝っておく。
まぁ、遅れた理由はアンタ等のマスターの所為なんだけどな。
てか、あの人何時まで彼処にいる気だろ。
「おっ、隣にいる嬢ちゃん可愛いじゃねぇか」
「ん?ホントだな。嬢ちゃん、そんなヒョロイ男と一緒にいないで此方来いよ」
お前等、急にチャラくなったな。
それより椿をあんまり刺激しないでくれ。
さっきのレイシーさんとのやり取りで既に若干キレ気味なんだから。
まぁ、俺も椿達を馬鹿にされたらキレるけど……。
「そうだぜ。雑魚でアホそうな男より此方に来いよ」
「……コロス」
「「「「ひぃ」」」」
椿の威圧にビビったのは相手二人と俺ね。
後、近くにいた審判も。
「そ、それでは第二試合、始め!」
ビビりながらも審判が試合開始のコールをする。
相手も先程の威圧に余程ビビったのか、警戒して全く攻めてくる気配がない。
「兄さん、この試合私に任せてもらえませんか?」
「え?あぁ、いいけど……程々にな」
「分かりました。では、行きます!」
◆◇◇
「分かりました。では、行きます!」
私は兄さんが一歩後ろに下がったのを確認してから、私は一歩前に踏み込む。
私が一歩踏み込んだ瞬間に相手のクソ野郎共はより一層警戒してくる。
私はクソ野郎共の足下に無色透明の一見水の様なモノを撒き散らす。
「……なんだこりゃ。あんな大層なこと吠えておいて、こんなちっぽけな水しか出せねぇのかよ!」
「いいえ、これは呪いよ。貴方達が次に魔法を使った時には地獄の業火を味あうわ」
ネタばらしをしてしまえば、呪いでも何でもない。
私が撒いたモノはメタノール。
炭素と水素と酸素で出来るものだ。
そして相手二人は火属性の男と、優秀なことに雷属性の男。
どちらも魔法を使えば引火する。
「そんなハッタリに引っ掛かるかよ!“ファイヤーボール”」
その魔法の発動と共に 散った火花でメタノールに引火した。
「ギャーー!?熱いっ!!」
「何だよこれ!?どうなってんだよ!?熱い熱い!!」
相手の二人は何が起こっているのか全く分からないようだった。
いや、相手だけでなく会場にいる者全てが理解できなかったのでしょう。
恐らく分かったのは兄さんと楓と桜だけ……。
そう、メタノールの炎は屋外では非常に見え難いのだ。
それはもう透明な炎の様に……。
更にここは円形闘技場で当然屋根は無い。
今日は天気もとても良く、日差しもよく差し込んでくる。
「うぐぅ」
「助けてくれ~」
「そろそろ助けないと死んじゃいそうね」
魔力で作られたメタノールを消し、服に燃え移った火を消す為に大量の水を創り、プレゼントしてあげる。
火を消してあげた途端、先程まで降参する寸前だったのに倒れたまま反抗的な眼をしてくる。
「クソッ、何だったんだ今のは……」
「呪いだか何だか知らないが魔法を使わなきゃ良いんだろ!」
「まぁ、そうね」
もうやらないけど。
「それより魔法主義のギルドの人達が接近戦なんて出来るのかしら?」
「くっ」
「あら?まだそんな反抗的な眼をするのね。お仕置きかしら?“王水剣”」
私は刀を抜かずに魔法で橙赤色の液体で出来た剣を創り出す。
「つ、椿さん?その剣の名前ってあれじゃないよね?何時ものあれを拗らせちゃっただけだよね?」
「兄さん、何を当たり前のことを言ってるんですか?……」
「椿」
「……名前の通りの意味に決まってるじゃないですか」
「おぉぉい!危ないから!」
兄さんは何をそんなに慌ててるんでしょうか?
それよりも“王水剣”よ。
“王水剣”はその名の通り、王水で出来た剣だ。
王水というのは濃塩酸と濃硝酸を混ぜたもので、とても危険なものだ。
自分の魔力で創った物だからか、素手で握っても何ともない。
兄さんにも持たせようと思ったが……。
「絶対に嫌だ。てか、無理」
と、断られてしまった。
私は相手に近寄り、相手が倒れた時に落としたであろうナイフに“王水剣”を突き立てる。
じわじわとナイフを融かして穴を開ける。
それを見たクソ野郎共は慌てて降参した。
「そ、そこまで!勝者“戦乙女の茶会”!」
ちっ、これからもうちょっと遊んであげようと思ったのに……。
なんか兄さんもホッとしてるし……。
納得いかないわ!




