Kiri , in the Castle Town
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日はだいぶ沈み、辺りが暗くなってきた。
そろそろ今日は終わりにしようかな。
ルナも結構疲れてるみたいだし、女の子を夜まで連れ回すのは良くないよな?
うん、良くない。
「暗くなってきたし、今日はこれくらいにしようか? 」
「そ、そうね」
「大丈夫か?調子悪そうだぞ」
「だ、大丈夫よ。ちょっと気を張り過ぎて疲れただけ」
ブルッ
「おぉう。なんかブルッときた」
「アンタこそ大丈夫?風邪じゃない?」
「いや、大丈夫だよ」
「なぁ、ルナ。明日も良かったら案内してくんないか?」
「あっ、ごめん。明日は学校があるから…………」
「そっか。じゃあ、残りの宿教えてくんない?」
「えぇ。え~と、ここからちょうど見えるあそこと、あの向こうにある大きな煙突が二つ着いてる所と、最後に門のすぐ側にある宿だけかな」
確かに正面に宿っぽいのが見える。
今日はあそこを最後にしてそこに泊まろう。
「今日は悪かったな連れ回して」
「いいわよ。心配だったから(この街が)。あっ、そうだ。明後日なら午後から暇だから街を案内しようか?」
この世界に関しての知識がゼロに等しい俺は、この世界の情報を得るには信用における友人を作っておいて損はないだろう。
やっぱり土地勘がある人と一緒の方が良いだろうし、色々聞きたいこともある。
「じゃあ、お願いしようかな」
「分かったわ。明後日のお昼過ぎにギルドに集まりましょ」
「りょーかい」
「じゃあ、おやすみなさい」
「あぁ」
さて、ルナも見送ったし宿に入る前にやることはやっとくか。
「…………いつまでこそこそ隠れてるつもりだ?」
「ゲヘヘッ、なんだ気付いてたのか」
「最初からな」
夕方、ギルドを出るときに潰したハゲとデブがぞろぞろと仲間を引き連れてやって来た。
コイツらはギルドを出て少し経った後からずっと着けてきていた。
「俺に報復でもしたいんだったら、今一人のルナを人質に取ればいいのに」
こんなことを思い付くのは、コイツらより俺が鬼畜だからか?
いや、普通思い付くよな。
「いや、あの嬢ちゃんに手を出すのは後々面倒だからな」
「…………ふぅーん」
「じゃあ、ちょっと着いてきてもらおうか」
「…………いいけど」
俺はハゲとデブの後について路地に入っていく。
大通りから少し離れた行き止まりの路地にまで入っていく。
「ゲヘヘッ、ここならアンタは逃げられないだろう?」
俺を行き止まりの方に追い詰めるハゲはそんなことを言うが、実際この空間から逃げることは簡単だ。
ただ行き止まりの路地っていうだけで空は開いてるし、路地だから壁ジャンプしてけば簡単に屋根の上に逃げられる。
まぁ、逃げる気ないけど。
「それにしても、アンタら馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまで馬鹿だったとは」
「何だと?」
「ハルゲーノさんただの強がりですよ」
あのハゲ、ハルゲーノっていうのか。お似合いだな。
これでデブの名前がデブリーノとかだったらマジウケる。
というか、あのハゲがリーダー格なのか?
大丈夫か?このチーム。
「あぁ、そうだな。デップリン。ヤツの強がりだな」
デップリンだど!?。お前ら本当に期待を裏切らねぇな。
「ぷぷっ……。いや、馬鹿だね。折角こんなに仲間を引き連れて来たのに、路地に入ってどうすんだよ。これじゃあ、結局一対一じゃないか。後、言っておくけど体力が尽きるのを待つのも無駄だぜ」
「っ!!」
「今更気付いたのかよ。だから馬鹿だっていうんだ」
「てめぇ!」
ハゲがキレて殴り掛かってくるが、一対一しかも正面からただ怒りに任せた一撃。
俺は簡単に避けて、カウンター気味にハゲの顔面に拳を居れる。
もちろん加減を忘れずに。
身体能力がどれ程上がってるのか判らない今は、加減を忘れると本当に殺りかねないので気を付けなければ。
もちろんハゲはその手加減でも一発で完全にノックアウト。
「ハルゲーノさん!クソッ、“アースランス”!」
!?これが魔法か!
デブ唱えた瞬間に、デブの頭上に土がその周囲から集まるように空中に一本の槍が出来る。
だが、結局これも正面から一直線に来るだけ。
魔法で固めたとはいえ土だ。
正面から来る土の槍を半身になって避ける。
だけど、ただ避けるのも面白くないので、土の槍を横から叩いて落とす。
「なっ!?」
「…………ふ、ふふふ、」
「何だアイツイカれたか?」
「ふはは、これが魔法か!おもしれぇ!おもしれぇじゃねぇか!」
その後も、迫り来る見えない刃(多分、風の刃)を避け、降り下ろされる水の槌を殴って弾けさせ、飛んでくる火の玉をハゲシールドを使って防いでいく。
その内、何人かが勝てないと解ったのか逃走するが、もちろん逃がさず全員沈めた。
その後に残るのは地に沈んでいくチンピラの断末魔と俺の高笑いだけだった。
俺は丁寧に一人一人仕留めていった。
もちろん魔法の使い方なんて解らないので物理で。
絶賛気絶中のチンピラを放置してルナが教えてくれた宿“猫の尻尾亭”に入る。
受付で黒髪の少女がいないか聞いたが、どうやら此処もハズレのようだ。
取り敢えず部屋を一部屋取り、食堂で夕食を採ってから部屋に戻った。
因みに宿代は銀貨三枚で夕食は大銅貨五枚だった。
残金は大銀貨一枚と大銅貨五枚。
なるべく早くギルドで仕事をしないと、後三日程でお金が尽きる。
仕事もしなきゃな。
食に関しては似たような物が多く、美味しく頂いた。
部屋は三階の三○三号室。
中は六畳くらいで家具はベッドと机とクローゼットくらい。
取り敢えずシャワーを浴び、ベッドに横になりながら今日一日を振り返る。
魔法…………楽しめたな。
今のところ見た魔法は土の槍と風の刃、水の槌、火の玉だ。
これが所謂“属性”というやつだろう。
そう考えると、今判っている属性は土と風と水と火だな。
まぁ、ここら辺も明後日ルナに聞こう。
こうしてみると意外に技術が低いとも言えない。
シャワーもしっかり設置され、トイレも水洗ではないが臭いも気にならない。
『うひゃぁ』
お隣さんから変な声が聞こえるが、疲れているのでスルー。
どうせ、冷たい水でも浴びてびっくりしたんだろう。
俺も危うく変な声を出しそうだったし……。
「はぁ、流石にちょっと疲れたかな。明日は椿が宿を出る前に探さなきゃ。……皆大丈夫かな」
今日はもう寝よう。疲れたとは言っても興奮が治まらない。
無理矢理にでも寝ないと一晩中起きてそうだ。
明日のこともあるし寝よう……………。
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