Hiiragi , Second Game 3
◇◇◆
「うぅっ……」
あれから五人のレイシーさんを倒しましたが、倒した瞬間に十人に増えて帰ってきました。
この十人も倒した瞬間に二十人にまた増えて帰ってきました。
助けて下さい、お兄ちゃん。
今は更に十人倒したところですが、最後の十人を倒した後が予測できてしまうので怖いです。
「これ……どうすればいいんですかぁ?」
桜は今、きっと涙目ですね。
レイシーさんの幻達は一人一人大した強さはありません。
二十人位ならギリギリ捌けますが、流石に四十人は絶対に無理です。
桜の体力が尽きる前になんとしてでもこの謎を解かなければ!
取り敢えず残り一人まで減らしましょう。
まず始めに、この今の状態は恐らくレイシーさんの魔法の中。
それも稀少属性である幻属性に間違いないでしょう。
そもそも桜は今、どうなってるのですかね。
精神だけが幻世界に行ってる様な夢を見ている状態なのか。
でも、それだと現実の桜は棒立ちで格好の的となっているはずです。
なのに桜はまだ幻の中です。
ということは幻の世界が現実では一瞬の事、或いはレイシーさんが何らかの理由で桜に攻撃出来ないかですね。
どちらにしても時間はあるということですね。
後者だと幻自体に殺傷能力があるか、桜の体力切れを待ってから幻術を解いて仕留めるかですね。
次はこの幻術が何処から掛かったのかですね。
予兆の様なものに心当たりが全くありません。
例えば視覚からだったり聴覚だったり……後は精神的だったりですけど桜は催眠術の様なもの受けた覚えはありませんし、不思議なものを視たり聞いたりした記憶もありません。
それなら一体何処から……。
「幻…幻術…魔法……そうです、これは魔法なんですよ。ということは……魔力に働き掛けている?」
でも、何時魔力を掛けられたんでしょうか?
流石にツバ姉みたいに魔力が見えなくても他人の魔力を浴びれば桜でも分かります。
だとしたら直接入れられた?
でも、試合が始まってから桜は一度もレイシーさんにもレイシーさんの魔法にも触れられてないし、触れることも出来ませんでした。
……試合が始まる前?
確かに試合が始まる前、今までの試合で誰もしなかった握手をレイシーさんとしましたけど……。
仮にそうだとしても結局どうやって魔力に働き掛けている幻術を解けばいいんですか?
……魔力に働き掛けている?
ってことは魔力を使いきって働き掛けるモノを無くしてしまえば……。
それにもし桜の体力切れを待つような魔法だったとしたら、現実の桜も同じ様に動いてるはず。
運が良ければレイシーさんに当たる可能性も……。
何もしないで負けるくらいなら少し暴れてみましょうか!
「フフッ、なかなか粘るなぁサクラは」
サクラには悪いけど、試合が始まる前にちょっとしたズルをしちゃったなぁ。
元々使う予定無かったしなぁ。
「それしても良いなぁサクラ。食べちゃいたい位可愛いし、パフェ美味しいし。本当にウチのギルドに来てくれないかなぁ」
ん?サクラの動きに余裕が出てきた。
成る程。そりゃ四十人になると分かってて最後の一人を消すはずないよねぇ。
この間に色々考えてるんだろうけど、幻がこんなことしたらどうかな?
そう思いながら私は幻に自殺を命じる。
最後の一人が消えたことにより四十人の幻が出現すると同時にサクラが広範囲の魔法、たくさんの土でできた棘がステージ面積の半分を占める程の範囲で発動する。
その魔法の発動と同時に四十人の幻は消滅。
魔法も私の目の前まできた。
「……焦ったぁ。でも、これで幻が増える」
四十人が消滅したことによって八十人の幻が出現……よりも若干早くにまたもや広範囲の魔法をサクラが発動する。
「なっ!?……今のタイミング、出鱈目に魔法を撃ってないか?」
そう、八十人の幻が出現する前に発動していた。
結果的には幻を消滅することは出来ていたが、どう見ても適当に撃ったものだった。
幻は更に数を増やし、百六十人になる。
最早サクラも百六十人に幻を数えることは出来ないだろう。
だが、この百六十人の幻もあっという間にサクラの広範囲魔法によって消滅していく。
幻もどんどん数を増やしていっている。
「遂に自棄になったか、サクラ。これなら決着は早く着きそうだな」
サクラの体力が尽きるのを待っていた私は、サクラのがむしゃらな魔法連発を見て予想より早く決着が着きそうだと思った。
今もなお魔法を撃ち続けるサクラを見て少し落胆する。
「所詮サクラこんなもんか」
それにしてもサクラは魔力が多いな。
まぁ、これならあのサクラの身体能力も納得がいく。
魔力が多い人は無意識に身体能力が強化されることが多いからな。
逆に言ってしまえば魔力が尽きれば身体能力も落ちる。
体力も無くなってるだろう。
「はぁはぁ……」
「ん?」
サクラの動きが止まった。
漸く諦めたか。
俯いていたサクラが顔を上げる。
上げた顔から見えたその死んでいない瞳は真っ直ぐ此方を見ている。
此方を見ている?
まさか!?私が見えている!?
「……漸く……漸く、見つけました!レイシーさん!」
「なっ!?」
サクラは小太刀を構え此方に物凄いスピードで接近してくる。
「くっ“ロックブラスト”!」
「“柊流攻式雨ノ型 逆雨”」
あの娘やっぱり自力で私の幻術を解いてる!
でもどうやって?
魔力に働き掛けている幻術を……そうか、だから魔力を連発してたのか。
そしたら今サクラは魔力切れ状態のはず。
なのにこの速さは何だ?
私は慌てて魔法を発動するが、発動した大きな岩はサクラの逆手に持った小太刀によって呆気なく真っ二つにされてしまう。
スピードを緩めさせる事さえ叶わなかった。
これがサクラの地力だというのか!?
「サクラ!何でお前は魔力が切れてるのに動けるんだ?」
「……魔力が無いと動けなくなるんですか?」
「そうだ」
接近しながらも丁寧に応えてくれるサクラ。
「そうですか。……でも、桜達には関係無いです。桜達は元々魔力なんて無かった所にいましたから」
「なっ!?」
そんな場所聞いたこともない。
そんな場所が存在すると言うのか。
そんなことを考えている内にサクラは既に目の前まで来ていた。
「レイシーさん、これで終わりです!“柊流攻式雨ノ型 雨突”!」
そう叫びながら放つサクラの突き。
此方に伸びてくる小太刀は顔を横を通過して止まる。
多分頬は切れている。
この技は連突きのはず。
顔を横を通過した小太刀を見ていると身体に何かが寄り掛かってきた。
それは言うまでもなくサクラだった。
やはり体力も底を尽きていた様で意識を失っている。
「勝者、レイシー・フォトン!」
審判からの私の勝利宣言を貰うが全く勝った気がしない。
初めて私の幻魔法を破られた。
サクラが幻に掛かって直ぐあの方法を取っていたら間違いなく私がやられていた。
「……慢心し過ぎてたかなぁ」
私は私の胸で寝ているサクラを見ながら呟く。
◆◆◆
「サクラ、負けちゃったわね」
「そうだな。いきなりの黒星だが、マスター相手に善戦したんだ。十分だろ」
「そうね。迎えに行くの?」
「そりゃ大事な妹だからな」
俺は桜を迎えに行こうとソファから立ち上がると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。
マスターの「どうぞ」という声に入ってきたのは桜を背負ったレイシー・フォトンだった。
「お姫様を届けに来たぞ」
「あっ、ども」
丁度立っていた俺は桜を受け取り、空いているソファに寝かせる。
「って、何堂々と敵の控え室に入ってきちゃってんの!?」
「あ、君。サクラのお兄さん?」
「いや、人の話聞けよ!」
「私にサクラを下さい」
「だから人の話を聞けよ!ってか、やんねぇよ!」
何この人、超面倒臭いんですけど!
「サクラは強いしパフェ美味しいし、食べちゃいたい位可愛いし……だからサクラを下さい!」
「あげませんってば……って、え?アンタ、ソッチ系」
「フフッ、何の事だい?」
「……頼みますから桜をソッチ系にはしないで下さいよ」
レイシーさんはこの言葉にはニコニコしたまま返事をしてくれなかった。
というか桜が寝ているソファの空いてる所にに座って寛いじゃってるよこの人。
「お茶如何てすか?」
「む、戴こう」
何、クレアさんお茶出しちゃってるのさ。
「どうたいウチのサクラは?欲しいだろう?」
「くれるのか?」
「ん?勿論、あげないよ」
あぁ、ウチのマスターも相当面倒臭いかった。
と、その時桜が目を覚ました。




