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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
47/61

Hiiragi , Second Game 1

 ◆◆◆


「帰ってきたよ~」


「お疲れ!っと言っても何もしてない様に見えたけどねぇ」


「実際に~私は何もしてないよ~」


「じゃあ、カエデちゃんが?」


「……ん」


「おぉ、そうかそうか」


 楓の返事を聞いたマスターはグリグリと楓の頭を撫でるが、どうやらお気に召さなかった様でパシッと手で払い、俺の方へ頭を差し出してくる。

 マスターが睨んでくるが仕方無く楓の頭を何時もの様に撫でる。

 すると何時もは無表情な楓だが、目を細め気持ち良さそうな顔をする。


「なんかキリ君ズルい」


「そんなこと言われても……」


『それでは第一回戦“魔神の加護”対“なごみ”の試合が始まります。第一試合は………………』


 どうやら次のギルドの試合が始まるようだ。

 “魔神の加護”は今大会の優勝候補で魔法主体のギルドだ。

 対して“和”は種族や属性も違えば戦闘方針もバラバラな集まりだが、ウチのギルドの様な準女性専用ギルドではなく、完全な女性専用ギルドらしい。


 ここの勝利ギルドが次の対戦相手となる。

 でも今日は此処からはただの観戦タイムの始まりだ。





「いやぁ、ちょっと予想外の事になったねぇ」


「そうですね」


 予想外と言っても明日の対戦相手は予想通り“魔神の加護”だ。

 予想外というのは今日全ての試合、つまり全ての一回戦を観て予想外の事が起きた。

 “武神の加護”が敗退したのだ。

 勿論、“黒龍の息吹”は順当に勝ち進んでいるが、“武神の加護”は“真実の瞳”というギルドに敗れてしまったのだ。

 “真実の瞳”はロゼッタ・グレイシーという女性マスターの率いる繊細な魔法を使うギルドだった。

 このロゼッタという人物はこの王国に現在三人しかいないと言われている魔眼の持ち主だそうだ。

 “魔神の加護”に並ぶ強力な魔法によって“武神の加護”はまさかの一回戦敗退となった。


「と言っても、明日の試合に勝ってもどうせ決勝は黒龍でしょうね」


 そうだ。“真実の瞳”は運の悪い事に二回連続で優勝候補とやり合わなければならい。

 今日だって三対三で延長戦までもつれ込んだんだ。

 明日の試合は満身創痍だろう。

 どうせだったら黒龍の連中をできる限り削ってほしいところだ。




 全ての試合を見終わった俺達はゾロゾロと十人でギルドへの道を歩いていた。

 何時もの路地を入って少し歩いた所で黒ずくめの奴が三人立っていた。


「待ちな」


 無視して通り過ぎようとしたが、前に立ち塞がって声を掛けてくる。


「なんなんですか?新手のカツアゲですか?」


「明日の試合、“魔神の加護”のギルドに負けてもらおう。お前等は不安要素だからな」


「ですってよ、マスター」


「んー、キリ君対処しておいて」


「マスター、今日何もやって無いんですからこれくらいやって下さいよ」


「何もやってなくないも~ん。頑張って応援してたも~ん」


 子供か。

 マスターどころか皆が我関せずを通そうとしてるんだけど……。

 俺だって面倒なのに。


「はぁ、おたく等黒龍の遣い?態々ギルドの名前を出すのは良くないよ。別の所から言われてるみたいだから」


「くっ」


「それに今の言い方だと魔神は情報があるから勝てるけど、俺等には情報が無いから勝てない。って言ってるように聞こえるぜ?黒龍って以外と弱い?」


「ふざけるな!そんなはずないだろ!」


 あっさり引っ掛かってくれたな。


「それはもう黒龍の遣いって事を肯定してるよ」


「くっ」


 くっ、じゃねぇよ。


「でも案外、黒龍が弱いってのも本当かもなぁ。たった十人相手に四十三人も引き連れてくるんだから」


「な!?」


 そう。俺等はコイツ等に包囲されている。

 前方にコイツ等の他に十人、後方にも十人、そんで屋根の上に二十人。


「こんなに人数を掛けないと対処出来ないなんて黒龍のメンバーも大したことないなぁ」


「くっ」


 だからくっ、じゃねぇよ。


「今日の所は帰ってやる。行くぞ!」


「あらら、お帰りですか?」


 黒ずくめ奴等は歩いてい帰っていく。

 意外とプライドはあるのね。


「ふぅ、案外あっさり帰ってくれたな」


「いやぁ、キリ君手際いいねぇ」


「マスターはマスターなんだからあれぐらい自分で処理して下さいよ」


「無駄な労力は使わない主義なので……」


 俺だって無駄な労力は使いたくないよ。

 というか皆大体そうだよ。


「じゃあ今度こそギルドに帰ろー」





 本選二日目。


『さぁ、今日は二回戦!一体何処のギルドが決勝に進むのか!』


『楽しみですね』


『では!まずは今大会のダークホース“戦乙女の茶会”対優勝候補の一つ“魔神の加護”の対決だぁ!』


『ルールは昨日と同じです』


『それでは第一試合目。“戦乙女の茶会”サクラ・ヒイラギ選手!』


「おっ、桜は今日も一人か。頑張れよ」


「はい!頑張ります」


 特に襲われるような事もなく、今日も控え室に集まっていた。

 選手発表で桜の名前が呼ばれ、桜以外の皆は観戦モードになるが、対戦相手の名前を聞いて驚愕する。


『対“魔神の加護”マスター、レイシー・フォトン選手!』


『“魔神の加護”はいきなりマスターですか。新人のサクラ選手には荷が重そうですね』


「……いきなりマスターか。……桜、大丈夫か?」


「……そっか、レイシーさんて……」


「桜?」


「あ、はい。大丈夫です。……行ってきますね」


 桜は両手で頬を挟むように叩き、気合いを入れて部屋を出ていく。


「サクラ大丈夫かしら?」


「うーん、ちょっとマズイかもなぁ」


「どうして?」


「昨日、桜が模倣が得意って言っただろ?でも、桜でも真似できないものはあるのさ。今回なんていい例だろうな。……桜でも属性が違う魔法は使えないんだからな」


「あっ、そうか」


「まぁ、と言っても桜もただでやられる訳無いけどな」


 でも、レイシーという奴がどの程度の強さなのかも分かんないからな。

 なんとも言えないな。


「マスター、レイシー・フォトンってどんな人?」


「うーん、魔法主体のギルドマスターだけあって魔法の腕は王国一じゃないかな。“幻惑の魔術師”って呼ばれてて稀少属性の幻属性を使うのよ。他にも氷とか土も使うしね」


「幻ねぇ……」


 幻と言うくらいだ、幻術の類いのモノだろう。

 それが対処出来る様なモノなのかどうなのかが重要だな。

 五感に作用するものや精神に作用するもの、どんな効果なのか分からない全くの未知の魔法だ。

 俺にはどうすることも出来ない。


 俺は窓の外、既にステージ上で対峙している桜を見ながら呟く。


「頑張れよ桜」




 ◇◇◆


 桜は今、ステージの上で一週間前に知り合い、ここ一週間毎日の様に桜のパフェを食べに来ていたレイシーさんと対面している。


「やぁ、サクラ。まさか君が相手だとはね」


「はい。桜も吃驚です。まさかレイシーさんが“魔神の加護”マスターだなんて……」


「ははっ。まぁ、良い勝負をしようじゃないか」


「はい。よろしくお願いします」


 桜はレイシーさんと握手して距離を取ります。


「それでは第一試合、始め!」


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