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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
45/61

Hiiragi , First Game 1

 ◆◆◆


 気合いを入れ直し、控え室を出て選手入場ゲートを潜る。

 闘技場の中央にある五十センチ程底上げされたステージに上り、相手の選手と対峙する。

 しかしそこでまさかの観客からの大ブーイング。

 しかも俺に対して。

 耳を澄ましてみると……。


『おい、あれやっぱり男じゃねぇか!』

『昨日のサバイバル映像じゃ分からなかったが男だな!』

『“戦乙女の茶会”は女性専用ギルドじゃねぇのかよ!』

『変態か!』

『あぁ、変態だな!』

『これはアレだよアレ、心は女の子なんです的な人なんだよ』


 と、好き放題言ってやがる。

 何か言い返したいが此処で反応したら負けな気がするので大人しくする。


 少し冷静になって相手を観察する。

 相手の名前は確か、モォーン・バッファ。

 名前の分かる通り男の牛の獣人だ。

 二メートルはある大きな体躯に頭から生える二本の立派な角、それと細い尻尾が背後で揺れている。

 そしてモォーンの片手には身の丈程あるバトルアックスを持っている。


 どうせなら獣耳っ娘が良かったと言っておこう。

 後はステージ上にはもう一人、鎧を着た如何にも騎士ですといった格好をした審判が立っている。


『此処でルールの確認です。ルールは単純、気絶、降参、場外、殺人をしたら敗北となります。それ以外は何でもありです』


『さぁ、それでは第一試合。変態対モォーンの試合を始めます!審判』


「うおぉい!今、俺の事を変態って言っただろ!」


「それでは第一試合、始め!」


「お前も何勝手に始めてんだよ!」


「審判ですから」


「そうですね!ちくしょう!」


 そうこうしている内にモォーンはバトルアックスを振り上げながら走って向かってくる。

 何故こんなスキだらけの格好で走るのか……。

 なんか無駄に疲れたから一撃で終わりにしてしまおう。


 俺は左腰にある桜お手製の刀の柄に右手を添えて少し腰を落とし、左手で鞘を握り角度を調整する。


「モォー!死ねぇ!」


「殺しちゃ失格だぜ“柊流攻式雨ノ型 斬雨キリサメ”」


 モォーンが俺の間合いに入った瞬間に刀を抜く。

 斬雨は柊流のミリ単位で調整できる居合い斬りだ。


 俺はこの居合いでモォーンが両手で持っているバトルアックスの柄を目掛けて斬り裂く。

 持っている手と手の間。

 間隔としては三十センチはあるので余裕で狙うことができた。


 柄を手と手の間で真っ二つにしたことでバトルアックスの刃の方を持っている右手に重心が傾く。

 流石と言うべきか、大きくバランスを崩すが転ぶことはない。

 だけど、更に大きなスキができる。

 喉元に刀を突き付ける。


「……降参だ」


「スキが大きすぎたぜ、オッサン」


「……俺はまだ十八だ」


「……え……スマン」


「第一試合、勝者キリ・ヒイラギ!」


『なんという鮮やかな勝利。変態のクセになかなかやりますね』


『そうですね。あの細い棒切れみたいな剣でよく闘えますね』


 試合終了の合図と共にモォーンと握手する。

 まさか俺とそんな変わらない年齢だったとはな。

 俺はステージから降りて歓声の鳴り止まない中、控え室に戻る。


「兄さん、お疲れ様です」


「キリ君よくやったね。後はゆっくり休んでくれ」


「了解です」


 控え室のソファに座ると次の選手発表が始まる。


『続いては二対二のタッグ戦です。まず“戦乙女の茶会”クレア・ハートフィリア選手、ツバキ・ヒイラギ選手と“獣王の雄叫び”ネルト・キャップ選手、コルト・キャップ選手です!』


 椿とクレアさんか。

 なんか珍しい組み合わせだな。


「クレアさん、よろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


「では、兄さん。行って参ります」


「おぅ、頑張れよ」


 椿は心配ないけど、クレアさんは闘えるのかねぇ。

 フレイアさんはああ言ってたけど……。

 クレアさんの闘いは楽しみだな。




 ◆◇◇


 私は兄さん見送られクレアさんとステージの上で相手選手が来るのを待っている。

 それにしても、クレアさんとは今まであまり接点が無かったからどんな感じなのか分からない。

 優しそうではあるけど……闘えるのかしら。


「……クレアさん、連携とかどうします?」


「そうですねぇ。お互いの事を全く知らないですし、一対一に持ち込みましょうか?」


「……そうですね」


 そっちの方が私としても動きやすいけど、結局クレアさんの戦闘は見れないのね。

 そんなことを考えていると相手選手がやって来たようだ。


 二人は名前の通り姉弟のようだ。兄妹かもしれないけど……。

 私達よりは見た感じ年下。

 二人とも可愛い容姿をしているが更に可愛いものが……。


「猫耳!!」


「……ツバキさん?」


「……いえ、何でも無いです」


 くぅ~。なんだあの可愛さは。

 私はあの娘達と闘えるのかしら?


「そういえばクレアさんは武器とか持たないんですか?」


「武器なら持ってますよ。ほら」


 そう言って何も持っていない手首を返すと急に鉄製の串の様な物が出てきた。

 あれは確か千本と呼ばれる暗器だった気がする。

 ……あれ?なんか昨日の夕食の串焼きに刺さってた気が……。

 いやいや、流石にないわよね。


「それでは第二試合、始め!」


 考え事をしてる内に試合が始まってしまった。


「ツバキさん!私は男の子方をやります」


「一対一に持ち込む気かにゃ。そうはさせにゃい!」


「それもそうはさせないわ」


「にゃ!?」


 クレアさんの言葉を聞いた女の子、恐らくネルトがクレアさんに向かって走り出す。

 しかし私が余裕を持って間に割り込み、持っていた鞘に納まっている刀をバットの様に握り、フルスイングする。

 上手くガードされたが距離は離せた。

 また此方に接近される前に私が先に距離を詰める。


 それにしてもニャン語可愛いわね。


「私の相手はお姉ちゃんかにゃ?私は向こうの巨乳のお姉さんが良かったにゃ。お姉ちゃん弱そうだし、胸小さいし……。コルトが心配だから早く終わらせるにゃ」


 …………コイツ可愛くない、ブッ飛ばすわ。

 私の事を言う時だけ憐れみの目を向けてきたし、にゃが無かった。

 大して変わらない乳のクセに……。


「そうね。早く終わらせましょうか」


「そうこにゃくちゃ」


 そう言い切るよりも早く猫の様な身軽な素早い動きで接近してくる。

 真正面に迫る拳を身体を横にズラしてかわし、伸びた腕を捕って投げ飛ばすが空中で一回転して着地。

 着地と同時にまた此方に接近し、頭を狙ったハイキックをしてくるが、しゃがんでかわし軸足を払う。

 横に倒れてきた鳩尾目掛けて正拳突き。


「に゛ゃ……」


 少し後ろに飛ばしたが直ぐに起き上がる。

 流石獣人は身体が頑丈ね。

 でも流石に効いたのか直ぐに攻めてこない。


「にゃかにゃかやるね、お姉ちゃん」


「貴女は武器使わないの?」


「私は元々無手にゃ。お姉ちゃんこそ」


「私は無手でも剣でもどちらも出来るけど、折角なら相手と同じ土俵に乗りたいじゃない」


「そうかにゃ。でも、その余裕も直ぐに無くなるにゃ!」


 またもや馬鹿正直に真正面から殴り掛かってくる。

 私もまた身体を横にズラすが、慌ててバックステップをとる。


「これは!?」


 私の胸元を見ると服が綺麗に裂けていた。

 幸い肌は切れていないようだが、これは一体……。


「にゃはは、私は無手だけど自前の武器これがあるにゃ。お姉ちゃんが巨乳だったら削ぎ落としてたにゃ」


 そう言って長く伸ばした爪を見せる。

 それよりもこのクソネコ、また私の胸の事を馬鹿にしたわね。

 もう赦さないわ。


「にゃはは、これで終わりにゃ!」


「“柊流攻式雨ノ型 斬雨 ”」


「にゃがっ!?」


 私は先程の試合で兄さんが使った技を出す。

 しかし、兄さんのと違い私は刀を抜いていない。

 勿論、抜いても出来るが今回は無手に拘った。

 今回のは言うなれば無刀流居合い。

 手を指先まで真っ直ぐ伸ばし、相手の顎を指先で斬った。

 まぁ、実際は斬れずに揺らした程度だけど……。

 いくら身体が頑丈な獣人でも脳を揺らされてしまえば暫くは立てないでしょうね。


 倒れ込んで動けないネルトを見下ろす。


「私を馬鹿にした罰よ」


「試合終了!勝者“戦乙女の茶会”!」


 どうやらクレアさん達も終わったようだ。

 相手のコルトを見るとステージの床に複数の千本で服ごと張り付けにされている。

 所々傷や服が裂けていて涙目になっていた。

 男のくせして姉のネルトより随分色っぽい。


「ツバキさん、お疲れ様」


「お疲れ様です」


「怪我は無い?」


「服が裂けちゃいましたけど、無傷です」


「そう、それは大変ね。後で直してあげるわ」


「ありがとうございます」


 そうだ。クレアさんに直してもらう前に、兄さんにこの胸元を見てもらおう。

 そう思いながらステージを降りる。

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