Kiri , Survival Start
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初めて魔法を使った日から丁度一週間。
今日はギルド最強決定戦の当日だ。
あれから魔法も随分上達したと思う。
俺で言えば、火属性……というより熱属性は触ればどんな物でも熱を上げることも下げることも出来る。
もちろん火を起こすことも可能だ。
但し、自分の魔力以外の可燃物が燃えた炎は操作できないという制限がある。
椿達妹三人は最早チートの塊だった。
質量保存の法則を完全に無視した賢者の石を持った錬金術師だった。
必要な元素が一つでもあれば魔力を代用してコピーして増幅する事が出来るらしい。
だが、所詮は魔力の代用品で増幅に使用した魔力が消費されれば代用した元素は消滅してしまうようだ。
つまり一在れば魔力の続く限り永遠に物質を造り出すことが出来るそうだ。
逆を言えば必要な元素が無ければ椿達は魔法が使えないということだ。
まぁ、そんなことは有り得ないと思うけどね。
「さて、今日は大会当日な訳だが……調子はどうだい?」
と、マスターの声が響く此処は王国の国立円形闘技場の選手控え室。
俺達のギルド“戦乙女の茶会”はあれからメンバーが増えることもなく初期の十人のままだった。
つまりこの大会に出場するにはメンバーは強制的にエントリーしなければならない。
調子の良し悪しを聞いても結局は出場しなければならないのだ。
まぁ、調子は悪くないんだけどね。
「つい先程エントリー締め切りが終わった訳だけと、エントリーはウチを含めて十六のギルドがエントリーしてるみたい」
最初の試合方式は四ギルドが四つのブロックに別れての四つ巴サバイバルで、ブロック毎の上位二ギルドが決勝トーナメントに進出来るらしい。
敗北条件は全ギルドメンバーの戦闘不能又は爆魔水晶の破壊だ。
爆魔水晶というのは魔力を籠めてから破壊すると空中で爆発するらしい。
花火みたいなもんだなきっと。
今回の爆魔水晶の扱いは自陣のフラッグみたいな物だ。
つまり簡単に言ってしまえば陣取り合戦だな。
「で、先程抽選をしてきたんだけど、なんと……私達はAブロックになったわ。因みに黒龍はC、魔神がBで武神がDよ。どうよ、凄いでしょ!」
「ウワー、マスタースゴーイ」
確かにマスターの抽選結果は凄い。
運良く有力なギルドと当たらなかった。
全ての結果はこうだ。
Aブロック
“炎魔の爪痕”
“真実の瞳”
“森の民”
“戦乙女の茶会”
Bブロック
“魔神の加護”
“巨人の鉄槌”
“風”
“絡繰”
Cブロック
“黒龍の息吹”
“大地の防人”
“和”
“天使の羽”
Dブロック
“武神の加護”
“粋水”
“獣王の雄叫び”
“不屈の精神”
と、なったようだ。
そして決勝トーナメントは次の様になる。
1A対2D
1B対2C
1C対2B
1D対2A
と、なるようだ。
つまり今日のサバイバル戦は上位二つが決まっても一位が決まるまでやるそうだ。
「ということで私達は初戦だからもうすぐ始まるかね」
マスターがそう言った後に迎えが直ぐに来た。
審判であろう新王者の剣の人がこれに乗れと馬車に乗り込まされる。
幌が付いた結構立派な馬車だ。
サバイバルを行う場所へ向かうのかゴトゴトと十五分位馬車に揺られる。
流石に立派な馬車と言っても十人はキツい。
「そういえば判定とかどうするんですか?サバイバルってことは結構広いんでしょ?」
「あっ、そうだ。忘れてた。皆これを耳に着けて」
そう言って渡された物は小さな石が付いたイヤリング。
「これ映魔水晶の欠片が付いていて本体がある闘技場に映像を送るみたい」
「……もう何でも有りですね」
と言って受け取ったイヤリングを左耳に付ける。
「あともう一つ心配事があるんですけど……開始位置って完全にランダムって言ってましたよね」
「そうだよ」
「相手との距離をどれくらい空けるとか言ってないですよね」
「……そうだね……ってまさか!?」
「一つの可能性ですけどね」
闘技場
ワァァァァー!!
『観客のボルテージも最高潮ですね』
『そうですね。試合は間もなく開始されるようです』
『因みに私は実況のキョウカ・ジットゥーと』
『解説のセツレア・カイセルでお送りします。……おや、始まるみたいですね』
ドォーンッ!
『さぁ!爆魔水晶の音と共に試合が開始されま……』
ドォーンッ!
『……した?』
『……どうやら開始直後に何処かのギルドの爆魔水晶が破壊されたようです』
『どういうことですか!?』
『私にも分かりませんが……開始位置はランダムですからね』
『成る程。では、映像を確認してみましょう。……えーと、これはギルド“戦乙女の茶会”のツバキさんの視点の様ですね』
『どうやら開始位置がお互いに向かい合った所だった様ですね。……これはリタイアしたのは“炎魔の爪痕”みたいですね』
『一方“戦乙女の茶会”は全くの無傷!この事態を予測でもしていたのでしょうか!さぁ、波乱の幕開け!Aブロックはこれからどうなっていくのでしょう!』
ふぅ。マジでこうなるとは……。
目の前には呆然と立ち尽くす相手ギルドと無惨にも破壊された相手ギルドの爆魔水晶。
俺は開始の合図と同時に飛び出し、一瞬の状況確認で正面に設置された相手ギルドの爆魔水晶を目掛け火の玉を放っただけ。
視界の端にはのんびりと馬車から出てくる相手が見えていた。
「いやぁ、本当にこんな事になるなんてねぇ。キリ君が気付かなかったら……ゾッとするわね」
「まぁ、偶然ですけどね。そうだマスター、ものは相談なんですけど……ここから先もこのまま俺達四人でやっていいですか?」
「……それはどうして?」
「魔法を覚えた俺達が何処まで闘えるか知るためですかね」
「……いいわ。じゃあ、私達馬車にいるから何かあったら喚んでね」
さぁて、マスターの許可も貰ったし確実にあと一つ狙いますか。
「楓、お前は此処で一人で防衛な。いけるか?」
「……よゆー」
「じゃあ、俺と椿と桜で攻めるぞ」
「はい」
「はいです」
「楓、状況は?」
「……北西、一キロに、六人接近中」
あれだけ派手な花火が上がればバレるよな。
楓は空気の流れを把握し、広範囲に渡る索敵が出来るそうだ。
因みに空気を無理矢理思うがままに振動させることでピンポイントで音も伝えることも出来るらしい。
物凄い壊れ性能だな。
「よしっ、楓はそのまま索敵と指示と防衛を頼む」
「……了解」
「そんじゃ、行くとするか」
俺は左手に持つ桜に創ってもらった鞘に納まっている刀を握り締める。
この刀はちゃんと必要量の鋼から創っているので、一度魔力で形を変えても魔力が無くなっても形を保っている。
椿も俺とお揃いの刀を持ち、桜は小太刀を二本持っている。
因みに楓は重いから持ちたくないと言って、苦無を二本隠し持っている。
武器を確認して森の中に飛び込む。
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