Kiri , Tea Party of Valkyrie
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「何なんですか?その最強ギルド決定戦って……」
「その名の通り最強のギルドを決める来週にある大会さ」
そんなどや顔されても……。
俺だってそれくらい分かるし。
っていうか来週かよ。直ぐじゃねぇか。
「そうじゃなくて、新しい法律が出来たばかりなのに二週間もしないうちに大会なんて……これじゃあ……」
「そっ、これじゃただのできレースになりそうね。主催者は黒龍の連中で他に参加できるようなギルドも少なく、高ランカーはほぼ黒龍が手に入れている」
そうだ。これじゃただのできレースだ。
有力なのは最初に出来た四つ。“黒龍の息吹”と“新王者の剣”“魔神の加護”“武神の加護”の四つになってしまうだろう。
この大会は多分、ただ人気を取るのが目的だろうな。
複数のギルドがある中で一番の強さを大勢の人の前で誇示出来れば、そりゃ人気も信頼も上がっていくだろう。
「だけどこの大会は参加することに意味があるんだよ。観客の前で黒龍と善戦でもしてみなよ。私達のギルドも注目を浴びるでしょ。あっ、因み言っておくと王者の騎士連中は大会の審判員として出るらしいよ」
善戦出来ればいいが、手も足も出ないところを大衆に晒せば逆の結果にしかならないけどな。
それにしても有力ギルドが一つ消えたとなると結構上位を目指せるんじゃないか?
他にいくつのギルドが参加するかは知らないけど……。
あぁ、そうか。あの間者はこの為の情報収集だったのか。
アイツが黒龍のところの間者だったら益々上位を狙えるかもな。
「マスター、他にいくつのギルドが参加するのかしら?」
と、ここで椿が俺の聞きたいことをズバリと聞いてくれた。
っていうか椿達が一緒にいたの忘れてたわ。
桜はクレアさんの夕食の手伝いに行ってるし、楓はまだ俺の背中にいるし。
「他のギルドは……何処だっけミレーナ?」
「まったく、それくらい覚えておきなさいよ。えぇっと、ウチを含めると今のところ十のギルドが参加してるわね」
もう十のギルドも出来てるのか。
結構多いな。
このままだと締め切りが何時かは分からないが、大会当日までにはもう少し増えるかもな。
「何処のギルドもギルド名がそのギルドの特徴を表してるわね。黒龍は強さの象徴だし、魔神も武神もそうでしょ?」
魔神は魔術主義で武神は武術主義だっけ?
他の出場ギルドを聞いたところ“獣王の雄叫び”という獣人族が多いギルドや“巨人の鉄槌”という山人族のギルド等があるようだ。
他にもエルフ主体のギルドや火属性のみのギルドもあるそうだ。
「そういえばウチのギルドの名前って何ですか?」
「……そういえば決めてない」
「ミレーナさん?」
「……忙しくて忘れてたわ」
「じゃあ“セレーネちゃん親衛隊”でどう?」
「それマスター入れなくね」
「却下よ」
「……ダサい」
ミレーナさんは顔を合わせてくれないし、マスターは面倒臭くなって適当に決めようとしてるよ。
というか楓起きてたのか。
起きてるなら降りてくれよ。
俺も流石に疲れてきた。
「まぁ、それは夕食を食べながら決めましょ」
そう言ってチラッと厨房前のフロアの方を見ると、夕食がテーブルの上に並び始めている。
受付にいたレベッカさんもちゃっかり席に着いてるし、いつの間にか帰ってきていたフレイアさんも席に着いていた。
ということで、夕食を頂いているわけだが、クレアさんの料理は桜に負けず劣らず旨い。
「で、結局どうするんですか?」
「うーん、皆なんか良い案ある?」
その言葉と供にアレがいいコレがいい、アレは駄目だコレは駄目だと一向に話は纏まらない。
結局のその話は夕食が終わった後も続き、既にテーブルの上にあったたくさんの料理もそれを盛り付けてあった食器の類いも全て運ばれていた。
「なんかもう面倒臭くなっちゃった」
「駄目だよ~セレーネ。名前はずっと着いてくるんだから~」
「そうだな。やはり私達の特徴を捉えたモノがいいだろう」
既にやる気をなくしてしまったマスターとは裏腹に、意外なことにもレベッカさんとフレイアさんが積極的に参加している。
俺はてっきりレベッカさんとフレイアさんは何でもいいと言うタイプだと思っていた。
まぁ、会って二日目だ。俺達はこの人達の事を全くと言っていい程知らないからな。
「あっ、ならコレなんてどうかしら」
クレアさん何か良い案を思い付いた様で、手元にあった紙にささっと書いていく。
書き終わった紙に書いてあったモノは……。
“戦乙女の茶会”
……確かにウチのギルドの初期女性メンバーの五人ははAランク以上だし、俺の妹達も常人の強さではない。
そんじょそこら女性とは違う、戦乙女っていうのも割りと合っていると思う。
戦乙女が茶会をしているイメージは全く無いが、ウチの戦乙女達は常に緩い感じがあるから茶会のイメージも分からなくもない。
寧ろ合っていると思う。
ただ俺はどうすればいいんだ?
「おぉ、良いじゃないかクレア」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!戦乙女って乙女だろ?」
「当たり前でしょ」
「俺は男だ。俺には抜けろってか!?」
「ヤダなぁ、そんなこと言うわけ無いでしょ。人数足りなくなっちゃうし……」
「じゃあ何か、俺に乙女にでもなれと?」
「うん、頑張ってね」
「なれるかボケ!」
マスターのこれは冗談なのか本気なのか分かりづらい。
そして何故皆は此方を期待に満ちた目で見てくるのだ?
絶対にやらないからな。
それと妹達よ、お前らは兄ちゃんを助ける側だろうが。
お前らまで期待の目を向けるな。
「まぁ、冗談はさておき……ギルド名なんて特徴の一つなんだし気にしなくていいんじゃない?というかマスター権限でコレに決定!」
「うぐっ……」
特徴の一つだから気になるし、俺が気にする。
寧ろ世間一般様がこの名前を見た瞬間に女性専用ギルドだと思うんじゃないだろうか。
ということで、賛成八人の反対一人、無効票が一の多数決により無事?話し合いは解決し、ギルド名が決まった。
ギルド作成の為の署名をすると言って一枚の紙を回し始める。
俺もしぶしぶ署名し、無事ギルド“戦乙女の茶会”は結成された。
「ルナのは私が書いとこっと……」
そう聞こえたのは気の所為だと思いたい。
というかルナにちゃんと聞いてないけどね、ギルドに入るか。
「そういえば、いいのかマスター?」
「何が?」
「大会って一応公式なんだろ?お家にバレるんじゃないのか?」
もうこのマスターに敬語は要らないな。
「大丈夫。コレの此処見て」
そう言って渡されたのは、以前法改正があった時にティリカに見せてもらったギルド設立条件を纏めたような物だった。
俺はマスターが指差す所を見る。
“ギルドに所属する者を、他者は無理な勧誘又は危害を加えることは許されない。”
「……つまり、マスターは」
「そ、私は新法律に保護されるってわけさ」
「でも相手は公爵だろ?」
「公爵でも国が作った法には簡単には逆らえないのさ」
簡単にはね……つまり、頑張ればどうにでもなるということだろうか。
そもそもこの法は今からいや、もう起こり始めている勧誘に対しての問題が起きないようにした予防策だろう。
勧誘が落ち着けば取り払われる可能性もあるし、取り払われないとしても何らかの方法が出てくるだろう。
「まぁ、マスターがそれで良いなら良いけどさ」
この人もちゃらんぽらんだけど、そんなことは重々承知してるだろう。
「そういえば、大会は来週って言ってたけど具体的には何をするんだ?」
「それがまだ何も分からないのよ。参加人数が十人丁度じゃないと駄目って事ぐらいしか……。まぁ、最強ギルド決定戦って言うくらいだから戦力を図るのだと思うけど……」
と、マスターの代わりにミレーナさんが答えてくれる。
戦力か……今の俺達で魔法無しで何処まで通用するかだよな。
この機会に魔法を教えてもらうのも良いかもな。
此処には実力者が五人もいるのだから……。
「マスター、俺達に魔法を教えて下さい!」
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