Sakura , Super Busy
◇◇◆
『おおぉぉっ!』
『何だ!?今どうなったんだ!?』
『すげぇぞ、嬢ちゃん!』
『あのちっこいのやるなぁ』
『可愛いのに格好いい!』
急に野次馬からの雄叫びにも似た歓声と大勢の拍手を浴びて恐縮してしまう。
あと“ちっこい”って言ったの誰だ?
「なぁ、ミクル。お前が雇ったのって用心棒だったか?」
「いや、確か料理人だったはず……」
「あれ本当に料理人か?冒険者の方が似合ってるんじゃないか?」
「いや、嬢ちゃんは料理人だ。味は確かだからな。お前も一度食いに来い」
「……そうだな。今度行ってみるよ」
あっ、ミクルさん達も取り引きは終わったのかな?
此方を苦笑いしながら見てるけど……。
「終わりましたか?」
「それは此方の台詞だ。いや、何でもない。モーリ、さっき言ったやつ頼むぞ」
「あ、あぁ、待ってろ。すぐに持ってくる」
モーリさんは慌てて店の中に戻っていきました。
包丁を持った厳つい血塗れのおじさんが慌てて去っていくと、かなり犯罪っぽいですね。
その後大量の肉を受け取り、モーリさんの肉屋を後にしました。
「それより嬢ちゃん、怪我は無いか?」
「はい、何ともありませんけど?」
「そ、そうか。それなら良いんだ」
肉屋の後も数件のミクルさん御用達のお店を桜の挨拶回りも兼ねて回り、肉だけでなく魚や野菜、米、小麦、卵、油などのかなりの量の買い物をしました。
二人でも持ちきれない程の買い物を量を買ってしまったミクルさんは、自分で持ってきていた小さめの鞄に入れていきました。
ただ、米や大量の肉や野菜等の明らかに容量オーバーな物を次々と入れていきました。
「ミ、ミクルさん?それどうなってるんですか?」
「あん?あぁ、これか。これはな中に“ボックス”の魔方陣が敷かれてるんだ。結構高かったんだぜ」
「な、なるほどです」
これがルナさんが言っていた“ボックス”という無属性の魔法ですね。
確かにこれは便利そうですね。
高くなるのも納得できそうな機能性です。
でも、持ってるなら最初から入れれば良いのに……。
「因みにおいくらですか?」
「値段か?え~と、確か……金貨一枚と大銀貨三枚だったから十三万コルンかな」
それって日本円に直すと確か……十三万円じゃないですか!?
今の桜じゃ手も足も出ませんね。
「よしっ、材料も買ったし店に戻るか」
「はい」
お店に戻った桜達は早速料理の下拵えを始め、二時間もしないうちにお昼近くになりお店を開ける。
今日もお昼のピーク時にはあっという間に満席になり、外に行列が出来る次第。
厨房とフロアはミクルさんとタミルさんがそれぞれ集中して担当し、桜は厨房とフロアのどちらもフォロー出来るようにバタバタと行ったり来たりを繰り返します。
不本意ながらそれが小動物っぽくて可愛いと人気に火が着き、噂が人を呼び更に混雑する次第です。
そんな時、桜が厨房の手伝いをしている時に一つのある注文がタミルさんから入りました。
「DXパフェ二つ!」
ツバ姉!?こんな忙しい時にまた面倒臭い注文を……。
というか仕事はどうしたんですか!
そんなことを思いながらも手馴れた手付きで素早くパフェを仕上げていく。
ツバ姉のお陰でこのパフェだけは手馴れたもんです。
そして文句の一つでも言ってやろうとフロアに足を踏み入れる。
「ツバ姉!お仕事はどうしたんですか!」
「へ?」
指定された席へパフェを置くと同時にお客さんの顔を見ずに怒ると、不思議そうな聞き覚えの無い声が返ってきました。
恐る恐る顔を上げるとそこには見たことの無い眼鏡を掛けた女性がいました。
やってしまった!
「あっ、ごめんなさい!知り合いかと思って」
「いえいえ。お気になさらず」
深々とお辞儀するが、本当に気にしてない様子で両手を降る女性を見てホッとします。
相席のお客さんにも謝ろうとそちらを見ると、逆にそっちにはかなり見覚えのある顔がいました。
「って、カエ姉じゃないですか!?」
「……よっ」
「よっ、じゃありませんよ。いるならいるって言って下さいよ」
そう言うと何故か何時も無表情なカエ姉に渋い顔をされました。
何故でしょう?
「カエデさんの妹さんですか?」
「はい。妹の桜です。あの、貴女は?」
「私はカエデさんの上司で図書館の司書のクリムファン・ドーラです。クリムで良いですよ。よろしくお願いします」
カエ姉は本当に働いてたんですね。
「はい、よろしくお願いします」
『サクラちゃーん!注文頼むよ!』
「あっ、はーい。ただいま!……では、クリムさん失礼します」
カエ姉の上司がどんな人かもう少しお話をしたいですけど、今はとても忙しいから我慢ですね。
見た感じはとても優しそうな人ですけど……。
図書館の司書って言ってたから、図書館に行けば会えるかな?
カエ姉達が会計を済ませてから三十分程経ったでしょうか。
相変わらず満席でかなり忙しいですが、そんな時にまた一つの注文がタミルさんから入りました。
「DXパフェ二つ!」
また……。
今度こそツバ姉ですね。
さっきのテーブル席と違って今度はカウンター席。
それに黒髪の後ろ姿、間違いなくツバ姉ですね。
「ツバ姉!お仕事はどうしたんですか!」
「ん?」
……そして桜はまた同じミスをした。
返ってきたのはまたもや聞き覚えの無い声。
顔を上げるのが怖くなりそのままお深々と辞儀をする。
「す、すみませんでした!人違いでした!」
「おぉ、そうか、そうか。人違いか。私はツバネェとやらではないからな。私はレイシーだからな」
返ってきた変な答えに恐る恐る顔を上げると、ツバ姉より少し長い黒髪に紅い瞳をした美女がしました。
ツバ姉とは違った雰囲気の美人さんでした。
そういえばレイシーって何処かで聞いたことがある気がする。
「本当にすみませんでした」
「よいよい、気にするな。おっ、これがDXパフェだな」
「あっ、はい。どうぞ」
「うむ。では早速頂くかな」
レイシーさんはスプーンでパフェをすくい一口食べる。
少しの間味を占めるように固まると、パクパクと勢いよく食べ始める。
ジョッキの二倍程もある特大のパフェを一つ、僅か数分で間食してしまう。
「う、美味い!これはお主が作ったのか?」
「はい、そうですけど」
「そうか。お主の名を聞かせてくれ」
「桜は桜です」
「私はサクラのパフェが気に入った。これから毎日食べに来るぞ」
来てもらう分には良いことだが、毎日来られても桜がいない可能性だってあります。
シフトだって無いしどうなるか分からないです。
その事をレイシーさんに伝える。
「む、そうか。なら、サクラがいる時だけ来よう」
それはいいのですけど、どうやって桜がいるかを確認するのか知りたいです。
まさか結局毎日覗きに来るのでしょうか。
まぁ、いっか。
「それでは失礼しますね」
「うむ」
そのままレイシーさんは二杯目に突入する。
というかパフェの味を知らないのに二杯も頼んだのですね。
それから何事もなくお昼のピークを過ぎてから三時間程たった頃。
お客さんの数も減り、今は二、三人しかいない。
「嬢ちゃん、今日はもう上がっていいぞ」
「そうね。お客さんも減ったし、サクラちゃん今日は大変だったしね」
確かに今日は相当疲れました。
休憩も無しに行ったり来たりしましたし、DXパフェを四つも作りましたし……。
お言葉に甘えましょう。
「じゃあ、お言葉に甘えて上がらせてもらいますね。お疲れ様でした」
「おぅ、お疲れ」
「お疲れ様サクラちゃん」
早く帰ってお兄ちゃんに誉めてもらいましょう。
◇◇◆
今回出てきたレイシーさん。
実は今までに名前だけ出ています。
気になる人は探してみてね。どんな人か分かるかも。




