Sakura , Uproar in the Market
◇◇◆
「お兄ちゃん、桜もお店に行ってきますね」
「おぅ、頑張れよ」
今日は久しぶりに家族全員で朝食を摂る事が出来ました。
他にもギルドメンバーの方々がいましたが関係ありません。
今日は寝坊してしまって朝食はクレアさんが作ってくれたものですが、やはり家族との朝食は良いものです。
本当はもっとゆっくりしていたいところですが仕事に行かなければいけません。
今日からバリバリ働いて、桜がお兄ちゃんを養っていかなければいけないのです。
昨日は一日お店には行けなかったので、今日は朝から来ることにしました。
元々ミクルさんの仕込みとかを見てみたかったので丁度いいと思っています。
お店に着くと何時もは出ている看板が出ていない。
まだ開店はしていないということでしょう。
従業員用の裏口があるので其処から入ることにしましょう。
「おはようございます」
「ん?おぉ、嬢ちゃんか。今日は早いな」
「おはよう、桜ちゃん」
「はい、おはようございます。今日は昨日来れなかったので早く来てみました。後、仕込みとかも見たかったですし」
今日も朝から元気なミクルさんとタミルさん。
タミルさんはエプロンを掛けてフロアの掃除をしているが、ミクルさんはまだエプロンも掛けていなかった。
「そうか。実はな残念ながら仕込みはまだなんだ。これから材料の買い出しに行くんだが、一緒に市場まで行くか?」
異世界の市場は興味がある。
今までも見たことの無い食材を見てきたが、市場に行けばさらに見ることが出来るかもしれない。
「はい!お願いします」
「おぅ、そうだな。これからは嬢ちゃんに買い出しとか頼むかもしれないからな。今のうちに行っとくのがいいな。じゃあ、行ってくるぞ」
「はいよ。行っといで」
この後、桜もタミルさんに挨拶をしてお店を後にして市場を目指す。
ここセレスティア王国の市場はそこそこ大きいらしい。
アーケード商店街の様に大通りから反対の大通りまで一直線で並ぶお店の数々。
直線距離にして二百メートル超えの長さに及び、店舗数は百店舗あるという。
同じ様な精肉店や生魚店でも五、六店舗あるらしい。
更に食料品だけに留まらず、生活用品や雑貨、服やアクセサリー類のお店があり、最終的には武器屋、防具屋まであるそうです。
流石に鍛冶場付きの店は無いようですが……。
ここまで来ると市場を通り越して商店街、いや、ショッピングモール並の規模がありそうです。
この世界には無いと思うけど、映画館やゲームセンターの様な娯楽施設が入っていたら、正にショッピングモールだろう。
人の数も凄いです。
「ここがこの国一番の市場だ。今から世話になってる店を回るから迷子になるんじゃねぇぞ」
「子供扱いしないで下さい」
「ガハハッ、わりぃわりぃ。じゃあ、着いてこいよ」
「はい」
そう言って人で溢れ返っている市場の中に足を踏み入れる。
数十メートル歩いたところで一軒目のお店に着いた様です。
どうやら此処は精肉店の様で、店先に皮を剥がれた猪の様な生き物が、今から丸焼きにされますよ的な体勢で縛られ吊るされている。
「おーいモーリ、いるか?」
「いらっしゃい。……何だミクルじゃねぇか」
出てきたのは体格の良いミクルさん位のおじさん。
白いエプロンを赤く染め、大きな包丁を持ったヤバそう強面の人だった。
「おめぇの店、最近繁盛してるらしいじゃねぇか」
「まぁお陰様でな」
「ん?おめぇに娘なんかいたか?」
モーリと呼ばれ強面のおじさんは漸くミクルさんの近くにいる桜の存在に気付いたようだ。
敢えて言うなら気付かないでもらいたかった。
まぁ、どうせミクルさんが紹介しちゃうんでしょうけどね……。
「あぁ、この娘は最近ウチに入った料理人だ。この嬢ちゃんのお陰で繁盛したようなもんだ。」
「おい、おめぇ……未成年を働かせるのはまずいんじゃねぇか?」
「桜は十五歳です!」
はっ、つい何時もの癖で強面のおじさんに突っ込んでしまった。
「お、おぅ、すまねぇな」
「い、いえ。大丈夫です」
意外と良い人そうですね。
そもそも人は見掛けじゃないですからね。
「こいつは肉屋のモーリだ。嬢ちゃんはサクラ。これからは嬢ちゃんが買い出しに来る事もあるかもしれないからよろしく頼むぜ」
「あぁ、分かった」
「よろしくお願いします」
「で、今日肉は買うのか?」
「おぉ、そうだった」
そう言うとミクルさんとモーリさんは肉の値段や大きさの相談、取引を始める。
特にやることが無い桜は取り敢えず二人の取り引きを眺めることにした。
『きゃーーっ!!』
『邪魔だ!退けぇ!』
暫くすると後ろの方が騒がしくなってきた。
女性の叫び声や男の怒声が聞こえてくる。
取り引きに集中しているミクルさんとモーリさんは全く気付いていないようで、此方を見向きもしない。
果てしなく面倒事の臭いがする。
巻き込まれないように知らない振りをしてミクルさんに近寄るが、急に黒い影が桜を捕まえる。
「近づくな!近づくとこのガキを殺す!」
「キャーーッ!!」
桜のことを捕まえた黒い男は首の後ろの服を掴み首筋にナイフを添える。
凄いデジャヴなんですけど……。
つい先日もこんなことがあったような気がします。
すると近くにいた女性が悲鳴を上げて腰を抜かす。
あんたが叫ぶんかい。
此処で漸くミクルさんとモーリさんが此方に気付き、慌て始める。
「じょ、嬢ちゃん!」
「近づくな!近寄ると……」
「わ、分かった」
一歩踏み出したミクルさんは男の怒声に両手を挙げながら下がる事しか出来なかった。
暫く睨み合いが続くと人混みを割るように一人の女性が出てくる。
「貴方、人質を解放して、もう、降、参し………」
出てきた鎧を着た女性はツバ姉だった。
「アンタ最近人質になりすぎじゃない?」
「うぅ、言わないで下さい。自分でもそう思ってるんですから」
「父さんが知ったら何て言うかしらね」
「確実にお仕置きですね。って、いなくなった人の話をしてもしょうがないじゃないですか!」
「おいっ!てめぇら何言ってやがる!」
この状況で普通に会話してたら犯人さんも流石に怒りますか。
というかこの人は何をやったか知りませんが、人質を捕るの下手くそですね。
先日の人よりも酷いです。
黒い人は桜の服一枚を掴むだけで両手両足が自由だし、黒い人は桜に合わせて腰を曲げて前傾姿勢の中腰。
「あんまり騒いでるとこのチビを殺すからな!」
あっ、また………。
「あっ、そこら辺で止めた方が……」
「この人殺っちゃっていいですか?」
「……手加減しなさい」
自由な左足を使って右後ろにいる黒い人の足を一回転しながら刈る。
体勢が悪い黒い人は簡単に後ろに倒れてくるが、桜は更に一回転して踵で延髄蹴りを入れる。
最後に無理矢理体勢を戻された黒い人の顔面に拳を一発。
「あっツバ姉、ごめんなさい。飛ばしちゃいました」
思った以上に黒い人は飛んでいきました。
「はぁ、いいわ。貴女は自分の仕事を頑張んなさい」
「はいです」
ツバ姉はそのまま黒い人を追って人混みの中に姿を消していきました。
それにしてもあの黒い人は結局何をしたんでしょうか?
◇◇◆




