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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
36/61

Kaede , Training of Magic

 

 ◇◆◇


 店を出た後、本当ならギルドに帰りたかったがにぃが図書館に戻ってくるかもしれないので仕方なく図書館に戻ってきた。

 帰りも険しい道のりだった。


 いつもの定位置に座って魔法関連の本を読もうと思ったが、流石ににぃばかりに仕事をやらせるのは悪いと思ったので仕事を始める。

 先程糖分を摂取したお陰か今日は調子よく仕事が進む。


「あっ、カエデさん。大分進んだみたいですね」


「……ん」


 三冊くらい終えたところでクリムから声が掛かる。

 出来たものは製本しますね。と言ってにぃがやってくれた分とウチがやった分の計九冊を持っていってしまう。

 少し集中が途切れてしまったので休憩にしよう。


 ボーッと座りながら複写のノルマを思い出す。

 一日のノルマが確か三冊から四冊。

 初日に二冊やって、昨日は零。今日だけで九冊。

 そう考えると平均ノルマは達成している。

 このまま書き貯めるか、今日は終わりにするか……。

 続けるとしても、もう少し休憩にしよう。


「……息抜き、息抜き」


 そう言って近くにあった本に手を伸ばす。


「カエデ!」


「……ん?」


 伸ばした手を引っ込め、声の主の方を見る。

 そこにいたのはにぃを拉致ったルナがいた。でもにぃの姿は見えない。


「……にぃは?」


「キリは用事を思い出したって言って何処かに行っちゃったわ。たぶんすぐに来ると思うけど……」


「……ん、分かった」


「それにしても散らかしてるわね。……これ全部魔法関係の本?」


「……ん」


 ルナは近くにある本を手に取って確認しては戻し、また違う本を手に取って確認しては戻しを繰り返している。


「……ルナ、魔法、見せて?」


「え?此処で?」


「……ん」


 此処でと言うのは少し酷だっただろうか。

 確かに図書館で魔法は使うもんじゃないよね。貴重な物もあるだろうし。

 でも、ウチは魔法が見たい。だが、動くのはめんどい。


「どうしても?」


「……ん」


「……まぁ、初級ならいいか。“ウォーター”」


「……おぉ」


 ルナは人差し指を立て魔法を唱えると、立てた人差し指の指先から数センチ離れた所に何処からともなく現れた水によってピンポン玉より少し小さめの水の球が出来た。

 水の球はふよふよとその形を保ちつつルナの指先から一定の距離を置いて漂っている。


 全く原理が分からない。

 物理法則を無視したこれが魔法の力なのか……。


「……これ、触っても、いい?」


「え?いいわよ」


 返事を聞いたウチは恐る恐る人差し指で水の球をつつてみる。

 触った水の球は形を崩すことなくウチの指を沈めていく。

 指を差したところから波紋が拡がり、裏側でぶつかって戻ってくる。

 触った感触はただの水。普通の水の中に指を入れてる感触だ。

 抜いても指が濡れているだけ。水の球が崩れることもない。


「……それ、どうするの?」


「そうねぇ、どうしようかしら。ここら辺に撒くわけにもいかないし……。カエデ、飲む?」


「……え?飲めるの?」


「魔法で作っただけの普通の水だからね」


 そう言われたので、取り敢えず匂いを嗅いでみるが見た目通り無臭。

 ペロッと嘗めてみても無味。

 身体に異常も診られない。

 今度は水の球に口を付けて吸って全て飲むが、やはり無味。

 ウチは別に水の味を区別が付けられるような女じゃないが、これは間違いなくただの水。


「ね?飲めるでしょ?」


「……ん」


「元々今の魔法は生活水として使われてるからね。これで満足した?」


「……ん」


 見るのは今ので十分満足した。

 だから次は実際にやってみたい。

 そう思うのはウチ達異世界人にとっては仕方ない事だろう。


「……ルナ、魔法教えて」


「だから此処でやるのは難しいってば」


「……じぃー」


「そんな目で見ても駄目よ。っていうか声に出して言ってるわよ」


「……じぃー」


「だ、駄目なものは駄目なんだから」


「……じぃー」


「うっ、分かったわよ。教えるかその目怖いから止めてよ。」


 おぉ、ルナはなんて優しい人なのだろうか。

 一回頼んだだけでお願いを聞いてくれたよ。


「えーと、カエデの属性は何だっけ?」


「……風」


「それなら教えやすいわね」


 そういえばルナも風属性も持ってたっけ。


「じゃあ見ててよ。“ブリーズ”」


 ルナがその魔法を唱えた瞬間に室内である図書館で僅かな風がウチの頬を撫でる。

 机の上に置いてある紙の束や本がヒラヒラと揺れている。

 ルナが唱えた“ブリーズ”の名の通りのそよ風程度の魔法だった。

 確かにこれなら図書館内でも全くと言っていいほど被害はないだろう。


「ね?分かった?」


「……え?」


 もしかしてルナはこれで教えたつもりなのだろうか。

 魔法という概念が無いウチ達異世界人からしたら未知なるものだ。

 たった一度見せられただけで出来るものではない。

 というか、この世界の人は一度見せられただけで出来るようになるものだろうか?

 まぁ、そんなことはあり得ないだろうが。


「……コツは?」


「前にも言ったと思うけどイメージよ。イメージがとても重要よ」


 イメージと言われても、風という目に見えない不定形なモノをどうやってイメージしろと言うのだろうか。

 風の生成方法を考えると温度差とか地球の自転とかか?

 だとしても結局ウチは何が出来るというのだ。

 そもそもここは異世界で自転しているのかも怪しい。


 まぁ、簡単に考えれば扇風機みたいに強制的に風を起こすとして、結局ウチはどうすればいいのだ?

 魔力を操作するのか?

 そもそも魔力って何だっけ?


 取り敢えず、風よ出ろー風よ出ろー。


「……む」


「難しい?」


「……ん」


「まぁ、異世界人には難しいのかもね」


「……イラッ」


「また声に出てるわよ」


 ルナのどや顔がうざい。

 まともに教えることも出来ないくせに……。


 うーむ。結局どうすればいいんだろう。

 風は空気の流れ……空気?

 空気と言えば、酸素、二酸化炭素、窒素等々。

 気体を操ることが出来れば……だから結局どうすればいいんだろう。

 やっぱり魔力を理解しなければならないのか?


「……魔力の、使い方は?」


「魔力?魔力はこうやって、こう!」


 どうやら魔力を使っているようだが、ウチには何も見えない。

 本人にも見えてないと思うが、ただ身体を動かしているようにしか見えない。


「……ちっ、脳筋か」


「ちょっ、どういう意味よ!」


「……言葉通り」


 ルナがギャーギャー騒いでいるとにぃが帰ってきた。

 図書館では静かにしましょう。


 ◇◆◇

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