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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
35/61

Kaede , Go Outside

 ◇◆◇



『兄様、一緒に遊ぼ!』


『楓は今日も元気だなぁ』


『うん!』


『椿と桜が来たらな』


『姉様も桜も早く!』


『はいはい』


『待ってよぉ』





「……んっ」


 いつの間にか寝てしまったみたい。久しぶりに夢を見た。

 それもウチ達がまだ小学校低学年の頃の夢だった。

 何でこんな夢を見たんだろ?


「……あれ?……にぃ?」


 今日はにぃ達と朝御飯を食べて、にぃに図書館に連れてきてもらって、にぃに仕事を任せたはずなのににぃがいない。

 これは夢じゃないはず。

 寝る前は魔法関連の本を読み漁っていたし、現に机の上に魔法関連の本が散らばっている。

 机の上をよく見てみると一枚の紙切れが置いてある。


『楓へ

 お兄ちゃんはルナに拉致られてきます。』


 にぃがメス猫に拉致られた!

 大変だ。つぅに連絡しなきゃ!

 ……うん、そうだね。一旦落ち着こう。

 これはにぃの悪ふざけだよね。


「……あっ、これ」


 机の真ん中に置いてある紙の束を手に取る。

 にぃ、凄い!六冊分も終わってる。


「あっ、カエデさん。起きたんですね」


「……クリームパン」


「クリムファンです。じゃなくて、もしよければお昼御飯食べに行きません?」


「……外食?」


「えぇ。最近“クルーミル”というお店が有名になってきたんですよ」


「……行くのは、いいけど。……図書館、空けて、いいの?」


「良いんですよ。私にだって休憩は必要です。もし何か盗られても、他に司書を寄越してくれない国の所為です」


 この人も結構適当な人だ。

 一冊二冊無くなってた位じゃ気付けないでしょうけどね。

 まぁ、無くなったとしてもウチの読んだことのある本だったら複写しなおせるし、この人自体も本に関しての記憶力はウチ並みらしいから心配無いと思うけどね。

 どうせこの図書館にある本はほとんど読んじゃってるだろうし……。


「じゃあカエデさん。行きますよ」


「……ん」






「……まだ?」


「まだですよ」


 もう十分位は歩いたんじゃなかろうか。

 ウチ達のギルドを越え、市場を越え所だ。

 ウチはもう疲れたよ、限界ですよ。

 人も多いし、早く帰りたい。


『クソッ。何だよあの黒髪の女二人は!』


 ふと聞こえてきた声に足を止める。

 先を歩いていたクリムはウチが止まった事に気付かずにそのまま先に行ってしまう。


 それより男の言った台詞だ。

 全身を黒一色で統一した男は、黒髪の女二人と言ったのだ。

 この世界で黒髪は珍しいが普通にいるとも聞いたが、ウチがこの街に来てから一度もウチ達意外の黒髪を見たことがない。

 今現在も沢山の人が行き交う此処でも黒髪の人は見受けられない。

 そしてウチを除けば黒髪の女二人なんて思い当たるのはつぅとさぁしかいない。

 絶対この男はつぅとさぁに何かしたに違いない。


 家族に仇なすヤツは許さない。

 ……ヤツが此方に気付く前に殺っちゃう?

 ……うん、そうだね。そうだよね。

 ……殺っちゃおうか。


「カエデさん!」


 急に後ろから声を掛けられてビックリした。

 どうやら先に行ってしまったクリムが、ウチが着いてきていないのに気付いて戻ってきたようだ。


「急にいなくなるからビックリしましたよ」


 視線を男の方に戻すと、既に男の存在はなく人混みに紛れてしまったようだ。


「そっちに何かあるんですか?」


「……別に」


「……そうですか。じゃあ、今度は離れないで下さいよ。迷子になったら大変ですから」


「……ん」




 また暫く歩くと、噂の“クルーミル”というお店が見えてきた。

 有名なお店というのは本当のようで行列が出来ている。


「……並ぶの?」


「折角だから並びましょう」


 ということで、ウチは嫌いなモノベスト十に入る行列に並ぶことになった。

 そして待つこと二十分弱。漸く店員さんのおばちゃんに案内されて席に着く。


「カエデさんは何にします?」


 メニューを見ているクリムが聞いてくる。

 ウチ的には文字ばっかり見ていて疲れているから甘いものがいいな。


「私はこれにします。このDXパフェ」


「……ウチも、それで」


「店員さーん!DXパフェ二つお願いします!」


 注文をしてから五分。

 特にクリムとどんな本がお薦めかを聞いていた。

 喋るのが苦手なウチでもクリムが勝手に一人で喋ってくれるので退屈はしない。


「ツバ姉!お仕事はどうしたんですか!」


「へ?」


 パフェを二つ乗せたお盆を持った子供がいきなり怒鳴り混んできた。

 まぁ、さぁなんだけどね。


「あっ、ごめんなさい!知り合いかと思って」


「いえいえ。お気になさらず」


「って、カエ姉じゃないですか!?」


「……よっ」


「よっ、じゃありませんよ。いるならいるって言って下さいよ」


 最近この挨拶じゃ同じ返ししかされなくなったなぁ。

 でも、さぁが此処で働いてるなんて知らなかったな。

 ……え?昨日言ってた?ウチは聞いた覚えがないよ。


「カエデさんの妹さんですか?」


「はい。妹の桜です。あの、貴女は?」


「私はカエデさんの上司で図書館の司書のクリムファン・ドーラです。クリムで良いですよ。よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


『サクラちゃーん!注文頼むよ!』


「あっ、はーい。ただいま!……では、クリムさん失礼します」


 と、慌ただしく去っていく。


「可愛い妹さんですね。おいくつですか?」


「……同い年」


「……はい?」


「……ウチと、同い年」


「それは……なんと言いますか……」


「……さぁには、言わない方が、いい」


「え?」


「……さぁは、怒ると、怖いから」


「……分かりました」


 何となくクリムの顔が青ざめていくのが分かる。

 その後は普通にパフェを頂いた。

 ウチにはちょっと量が多かったけど頑張って食べた。

 クリムはペロッと食べて、もう一つ頼もうか迷っていたくらいだ。


「ご馳走さまでした」


「……ごち」


 お会計は太っ腹にもクリムが全て払ってくれた。

 初の部下で嬉しいらしい。何という立派なクリームパンだこと。

 まぁ、ウチは部下になった覚えはさらさらないけど。


 ということで、お会計をしてもらい、さぁに挨拶してお店を出る。


 ◇◆◇

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