Tsubaki , Security Knights
◆◇◇
朝、久方ぶりに兄さん達とクレアさんが作ってくれた朝食を採る。
昨日、丸一日食べていなかったのでとても美味しく感じる。
朝食を採った後は皆それぞれの仕事に戻る。私も今日が初出勤だ。
兄さんと離れるのは嫌だが、兄さんを養う為だ。
頑張らなければと喝を入れる。
「じゃあ、兄さん。私はフレイアさんとティリカの所に行ってきます」
「おぅ、気を付けてな」
兄さんに見送られてギルドを出る。
未だに分からない警備騎士団庁舎の場所へは、フレイアさんが送ってくれる事になっている。
「フレイアさん、庁舎ってここから近いですか?」
「そうだな、結構近いと思うぞ」
その言葉通り、ギルド前の路地を抜けてから二回角を曲がった程度で着いた。
時間にして約十分強。
徒歩でこの距離だ。一キロも無いのだろう。
庁舎の外観は二階建ての市役所だ。
中に入るとそこそこ広い吹き抜けのエントランスで、両端には二階に上がる階段。
正面には受付がある。
フレイアさんは迷いなく受付に行く。
「おはよう。今、ウォルフかティリカはいるか?」
「フレイア様!?少々お待ち下さい」
受付の女性は慌てて奥へと消えていく。
それにしても様付けとは、やはり偉い立場の人なのだろうか?
特殊騎士団は選ばれし者しか入れないと言うし……。
受付嬢は五分もしない内にウォルフとティリカを連れてやって来た。
「おぅ、特殊騎士団のフレイア様がこんな朝からどんな御用で?」
「あぁ、新人を案内しにな」
「あら?ツバキさん、おはようございます」
「おはようございます」
フレイアさんが私の肩をポンと押しを前に出す。
それに気付いたティリカがマイペースに挨拶するので、私も会釈しながら返す。
今日からは上司だからね。
「なんだ、嬢ちゃんを連れてきてくれたのか。それにしても、何でお前さんが?」
「ちょっとした縁があってね……。じゃあ、私はもう行くよ」
「あっ、フレイアさんありがとうございました!」
「あぁ、頑張れよ」
背を向けながら軽く右手を挙げ、そう言って庁舎を出ていく。
「さて、嬢ちゃん。本来なら試験を受けなきゃ騎士団には入れないんだが、魔眼持ちつー事で試験は免除だ。その代わり、当分の間は俺とティリカのコンビに交ざって騎士団や魔眼の勉強をしてくれ」
「はい」
「早速巡回に行きたいところだが……」
「まずは着替えましょうか。此方に女子更衣室があるので着いて来て下さい」
私とティリカはウォルフをその場に残し女子更衣室へ向かう。
更衣室の中には、更衣室によくありそうなロッカーの木で出来た物がいくつか並んでいる。
指定されたロッカーを開けてみると、ハンガーが入ってるだけだった。
この世界、ハンガーあったのね。
「ツバキさん、これを着て下さい」
ティリカに渡された物は、ティリカと同じ白い修道服の様な物と鎖帷子と短剣。
渡されたので一応着てみた。鎖帷子を着て、腰に短剣を差し、修道服を着る。
似合わないし、動きづらい。
「あの、他にない、ですか?」
「他だと普通の警備騎士装備になりますけど……」
渡されたのはプレートメイル。胸当てと籠手と脛当て。
これでフルプレートアーマーを渡されても困ったが、これなら少し重いが先程より動きやすい。
「これなら短剣じゃなくてショートソードの方がいいですね」
貰ったショートソードを左腰に差し、一応短剣をサブウェポンとして左手で抜けるように柄が左になるように後ろ腰に差す。
「うん、いいじゃないですか。似合ってますよ」
「ありがとうございます」
私は今、超ハイテンションだ。
鎧に武器とか、どんなファンタジーですか?今ならどんな敵にも勝てそうだわ。
その後なんとかテンションを落としつつ、ウォルフと合流する。
「おぅ、なかなか様になったじゃねぇか。じゃあ、巡回に行くぞ」
「はい」
巡回を始めたはいいがこれといって事件もなく、観光客の道案内をしたり、お婆さんの荷物を持ってあげたり、後ろに変な奴が着いてきている位で、ほぼただの散歩になっている。
大通りを歩いては誰も入らなそうな路地に入り、また大通りに戻る。
そんな事を繰り返す。
何も無いということは平和なことで良いことだが、如何せん暇過ぎるわ。
いや、でも昨日、一昨日と連続で爆破事件があったわね。
「そういえば、昨日のギルドの件ってどうなりました?」
「あぁ、それか……。結局、犯人は判らずじまいだ。それどころか、爆発の原因も分からねぇ」
「魔法は?」
「ティリカに見てもらったが火属性の反応は無し。火薬の類いも使われてないときた。分かってるのは、使われたのは風属性の魔法ということと負傷者数名と死者一名って事だけだ。そいつも運が悪いよな」
「……それって、自爆テロなんじゃ……」
「何だそりゃ?」
「死んだその人が犯人って事よ」
「はぁ!?だが、爆発はどうやって?」
「爆発させる方法なんていくらでもあるわよ。小麦粉と蝋燭の火でも出来るわ」
「はぁ!?」
例えば風魔法で大漁の小麦粉をばらまき、火を着ければドカンだ。
所謂奮迅爆発と言うヤツね。
確か、あの時はやけに冒険者が多かったから紛れて風魔法を使うくらい出来るはずだ。
人が多いから埃が舞ってきたから皆一旦外に出よう、とでも言えば無人にする事も出来たかもしれない。
もしかしたら、あの場にいた冒険者のほとんどが共犯者という可能性も無くはない。
「なるほど……」
「確かに受付さんの話を聞く限りでは、埃が舞ってきたから全員外に出ていたと言っていましたね。」
「ありえるな。死亡者の身元は黒焦げでまだ分かっていないし、三級奴隷でも使ったんだろう。元々、ギルドを爆破させる為だけだっただろうし」
この世界は奴隷もいるのね。
「それにしても、キリといい嬢ちゃんといい、何でそんな事をしてるんだ?本当はやっぱり爆弾魔とか……ごめんなさい。何でもないです。ただの冗談です」
「まぁ、何の証拠もありませんけど。……それよりいい加減しつこいわっ!」
私は後ろ腰の短剣を左手で抜き、振り向き様に投げ付ける。
「ちょっ、嬢ちゃん!?何やってんだ!俺が悪かったならもっと謝るから!」
◆◇◇




