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柊兄妹の異世界四重奏  作者: ライトニング
Guild Tournament
31/61

Kiri , Interrogate

 ◆◆◆


 俺達は呆けて動かないルナを引っ張りながら再び学園長室に戻ってきた。

 一応、契約書らしきものに記入しなくてはならないらしい。


「ところでキリ君。武術の講師もやらないか?」


「……何故です」


「そりゃあもちろん君が素晴らしい実力の持ち主だからだよ」


「でも俺は体術と剣術以外はきっと一般兵並みですよ」


「出来ないとは言わないのね。てか、一般兵並みなら充分だと思うけど」


 復活したルナが何か言っているが、それが俺なのだから仕方ない。


「教えるのはいいですけど、柊流は教えませんからね」


「あぁ、もちろんだとも。基礎程度でいいんだ。よろしく頼むよ」


 書類に一通り目を通して、契約書にサインする。


「では、キリ君。君は二週間後の朝にまたここに来てくれ。その日は入学式で君の紹介もあるから、挨拶を考えておくれ」


「はい。失礼します!」


「失礼します」


 学園長室から出て帰るために校門を目指して、また二十分の歩け歩け大会が始まる。

 はぁ、やっと終わった。これでなんとか無職と名乗らずに済むな。

 と言っても、二週間後まで無職なのは変わりないか。

 いや待てよ。ギルドメンバーをあと一人勧誘すればギルドが機能するじゃないか。

 あとはどういう人を勧誘すればいいかだよな……。

 ……あっ。


「ルナがいるじゃないか!」


「……何よ急に」


「あっ、ごめん。……実はさ、昨日ルナと別れた後ギルドに入ったんだけど、あと一人メンバーが足りなくてさ。ルナもまだ決めてないって言ってたしどうかな?」


「ふぅーん。ギルド名は?」


「…………知らない」


 あれ?よくよく考えてみればあそこのギルド名なんて聞いた覚えがないぞ。


「……大丈夫なのそれ?じゃあ、どんなメンバーがいる?」


「妹達含め俺以外は全員女性」


「ワァ、スゴイハーレムダネ。ワタシモソコニクワエルキ?」


「ちょっ、この世界に知り合いがいないの知ってるだろ!」


「冗談よ冗談」


 ルナってこんなキャラだったっけ?

 そういえばルナとマスターの姉妹説を確認するいい機会だな。


「それとギルドに会ってほしい人がいるんだ。俺達の勘違いかも知れないけど、確認を含めて会ってほしいんだ」


「私に会ってほしい人?まぁ、別にいいわよ」


「本当か!?なら早速行こう」


「ちょ、ちょっと待ってよ」


 おっと、その前に楓を回収していかなきゃな。


 校門を抜けた後暫く歩いていると、横道にこちらに向かって歩いてくるある人物を見付けた。

 黒い長袖に黒いズボン。顔は覆っていないが、身体つきからしもこいつは今朝椿に追いかけられていた黒ずくめの男だ。

 周囲を仕切りにキョロキョロしていて、明らかに不審者だ。


「ルナ。ちょっと用事を思い出したから、先に図書館に行って楓と待っていてくれ」


「え?えぇ、分かったわ」


 ルナは素直に俺の言うことを聞いてくれ、図書館に向かっていった。

 俺は横道に入ると、黒ずくめの男とすれ違い様に蹴りを入れる勢いで足を引っ掻ける。

 うつ伏せで倒れる黒ずくめの男の上に乗り、首筋に人差し指の爪を少し強めに当てる。

 少し伸びた俺の爪だ。チクッとする痛みがあるだろう。


「ひっ、こ、殺さないでくれ!」


 首筋に当てられたものを刃物と勘違いしたようで、必死に命乞いをしてくる。

 やはり、人間は視覚に頼っているため、見えないものへの恐怖は大きい。


「アンタ、今朝黒髪の女の子に追い掛けられてただろ?」


「お、お前も黒髪一族の仲間か!?」


「あん?なんだそりゃ。兎に角、アンタは一体何したんだ?」


「……言えない」


「暗殺でもしたか?それとも何処かの間者だったり?はたまたただの泥棒だったり?」


「………………」


「なるほど、間者か」


「な、何故それを!?」


「おいおい、そんなに狼狽えていいのか?ただのハッタリかもしれないのに」


「ぐっ……」


 だが、俺はハッタリで言ったつもりはない。

 この男は命乞いをするくらいの精神の弱さだ。こんな状況で沈黙をしていても嘘が吐けない。

 俺は首筋に当てていた人差し指で脈を図っていたのだ。

 俺が間者と言った瞬間に分かりやすいくらい脈に変化があった。


「さて、アンタは何処の間者で何処を調べていた?言わなければ分かっているよな?」


「くっ、……新しく出来たギルドと出来そうなギルドの勢力調査だ」


「ふむ。……で?今日は何処を調査してたんだ?」


「セレーネ・ルミナスが率いるギルドだ」


 コイツ、ペラペラと喋りやがって、尋問のしがいがないな。


「……調査出来た?」

 

「人数、ランク、属性、職業は調査出来た」


「で、結局雇い主は誰?」


「……それは言えない」


 ここでやっと反抗するか。

 まぁ、調査された内容は大した事ないな。

 ランクなんてSやAになれば有名になるだろうし、俺等のランクは宛にならないだろう。

 属性も高ランクの人は知られているだろうし、俺等はまだ魔法が使えない。

 職業は……まさか俺はまだ無職ってことになってる?


 ……まぁ、うん。報告されても問題ないな。


「なるほど、……じゃあちゃんと雇い主に報告しろよ」


 俺はそう言って黒ずくめの男に軽く手刀をいれ、気絶させる。

 この程度ならあと五分もしない内に目は覚めるだろう。

 黒ずくめの男を放置して、もと来た道を戻って図書館に向かう。




 図書館に着くと、ルナもちゃんと着いていて楓と話をして盛り上がっていた。

 楓が積極的に話をするなんて珍しい。余程興味がある内容なのだろう。


「……にぃ」


「ん?あら、遅かったわね」


「まぁな」


 いち早く俺に気付いた楓がトテトテと俺の元にやって来る。

 もう帰りの準備も出来ているようだ。


「……にぃ、変な、黒い人、いた」


「お?ここにも来てたか。大丈夫、解決してきたよ」


「……ちょっと、仕止めて来ちゃったりしてないでしょうね」


「……お前は俺をどういう風に見てるんだ?……はぁ、帰るか」


 俺は楓を背負って図書館を後にする。もちろんルナを連れて……。


 ◆◆◆



 とある一室。


 カーテンを閉め切り、明かりも着けない真っ暗な部屋で二人の男が対面していた。


「さて、調査内容を聞こうかな。君は何処だったかな?」


「はっ。私はセレーネ・ルミナスが率いるギルドです」


「チッ、あの忌々しい小娘か。……続けろ」


「はっ。ギルドメンバーは現在九名。例のモノには間に合うかと」


「そうか」


「メンバーは彼女を筆頭に同期四名」


「奴等か」


「はい。それと新人四名です。新人は男女二人がGランク、女二人が新規登録者です」


「そうか。恐るるに足らんな」


 その後も残りの情報伝えるべく話は進んでいく。

 そして、報告者黒ずくめの男は思った。


(これが終わったらこの国を出よう。この情報はほとんど役に立たないだろう。かといって余計な事を話せばヤツに殺されそうだ)


 と……。

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