Kiri , Destruction of Guild
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俺は図書館を出た後も走り続け、ひたすらギルドを目指す。
後ろから椿達が追いかけてくるのが分かるが、止まるつもりはさらさらない。
俺は一秒でも早くギルドに行って仕事をしなければならないという使命があるのだ。
長男だけニートとか有り得ないでしょ。兄の威厳がなくなってしまう。
もう既に日は傾き始め、辺りは薄暗く分かりづらい。
でも確かあそこの角を右に曲がれば、ギルドがあるはずだ。
「……あれ?ギルドは?」
記憶が正しければそこに在るはずのギルドはなく、代わりに異様に多い人の数。
いや、よく見れば元々あった建物の骨組みの様な黒く焼けたものが、僅かにだが残っている。
元々ここに建物があったのは確かだろう。
「……あれ?もしかして俺、ニート続行?」
「何馬鹿なこと言ってるんですか兄さん。そんなこと言ってる場合ですか」
そんなこととは心外だ。俺にとってはかなり重要な事だ。
でも、確かに昨日以上の爆発があったかのような惨状だ。
冒険者が暴れたのか?いや、暴れてこうなるのは恐いが……。
「野次馬になってくるか。お前らは危ないからそこで待ってろ」
椿達を分かりやすい所で待たせ、俺は野次馬に突っ込んでいく。
野次馬達の隙間から見えるギルドは本当に残骸、瓦礫の山だった。
「うひゃー、ひでぇなこりゃ」
そこで俺は野次馬の先頭の方にいる、見慣れたプラチナブロンドの少女を見つけた。
俺が声を出して呼び掛けると、直ぐに気付いたルナは野次馬を掻き分けこちらに来てくれる。
ここではまともに話せないのでルナを連れて椿達の所に戻る。
「ルナ、何でこんな所にいるんだ?」
「ギルドの訓練所に用があったのよ」
なるほど。訓練所はギルドの中にあったのか。
「キリ達は?」
「俺は……その、金が無いから仕事をしようと……。それより、ギルドで一体何があったんだ?」
「さぁ、私にも分からないわ。私がギルドに来るちょっと前にこうなったらしいのよ。キリが引き留めてなかったら私はギルドの中だったわ」
確かにそうなっていた可能性は大いに有り得るな。
考えただけでゾッとするな。
「それは良かった。無駄話に付き合ってくれた甲斐があったな」
「そんなことないわ。面白い話だったわ」
「それからずっとここにいたのか?」
「えぇ、何か情報が手に入らないかとね」
この様子じゃ、本当にルナも情報を全く持っていないようだな。
と、ここで、俺が知っている中でも一番の凸凹コンビを見つけた。
まぁ、こんなに大きな事件だ。そりゃぁこの人達も出てくるよな。
でも、これはいい情報源だな。
「おーい。ティリカ!ウォルフ!」
「あら?こんにちは、お兄さん。椿さん達も」
「おぅ、おめぇらか。昨日に引き続き爆発現場にいるなんて、おめぇらがやってるんじゃねぇだろうな」
「昨日は犯人捕まえたろ」
「ハハッ、冗談だ。ってそこにいるのはルーナお嬢様じゃねぇか」
「止めて下さい。ルナでいいですよ」
「ん?そうか。堅苦しいのは苦手だから助かるぜ」
流石お嬢様。顔が広いねぇ。
というか、騎士団の隊長がこんなんでいいのだろうか?
一応相手は王族だぞ。俺も人の事は言えないけどな。
「ティリカ、一体何があったんですか」
無駄話をしている俺の代わりに話を進めてくれる椿。
「犯人は未だに不明ですが、これはギルド上層部の内部分裂による内乱とみています」
内部分裂による内乱だと!?
なんて傍迷惑な。人が折角仕事をしようと思っているときに……。
「これによって王立ギルドは壊滅。そして、一定の条件を満たしていれば新たにギルドを設立出来る法が出来たようです」
「随分と早い法改正だな」
「えぇ、綿密な手回しをしていたようです」
「犯人の目星は?」
「恐らく既にギルドを設立しているいずれかのマスター。或いは全員共犯か……。どちらにしても直接手は出していないようですし、証拠がありませんからね」
「なるほどね。……そもそも何でこんな事を?」
「高額依頼の占有かと」
なるほど。確かに報酬の良い依頼だけを集めれば、ギルドに入る仲介料等も多くなるからな。
そんで、自分がトップになればガッポリお金が手に入るってワケか。
「もう設立したっていうギルドは?」
「現在四つのギルドが設立されています」
「早いな」
「一つ目はランディ・バイソン率いる“黒龍の息吹”です。ここは超実力主義でBランク以上は入れないそうです」
うわぁ、中二臭っ。
でも、異世界だからありなのか?
「……うわぁ、中二、臭っ」
「声に出さんでいい、声に」
「私は別にカッコいいなんて思ってないんだからね!」
「お前は一体何を目指してるんだ?」
後で聞いた話だが、ランディ・バイソンという男はSランクの保持者で、今現在最もZランクに近いと言われている男だ。
ZランクというのはSランクの上の未だ到達者の少ない幻のランクだ。
現在は世界でも十人はいないと言われているようだ。
「二つ目はレイシー・フォトン率いる魔法主義の“魔神の加護”です」
何か悪そうなギルドだな。魔神とか完全に敵役じゃん。
「3つ目はソレニ対抗して出来たグラン・ボルドー率いる武術主義の“武神の加護”です」
対抗意識燃やしすぎだろ。
これも後で聞いた話だが、レイシー・フォトンはまだ三十にもなっていない若い女性で、それでも魔法の腕は超一流らしい。
グラン・ボルドーは六十手前の爺さんだが、その身体は浅黒く筋骨隆々で、まだ衰えを知らないバリバリ現役の爺さんらしい。
できれば会いたくないような人物だ。
「四つ目は私達騎士団がそれらを抑制するために設立された“新王者の剣”です」
うわぁ、ないわー。名前がダセェ。
「……ダサい」
「だから声に出さんでいい」
「でも、これだとどこもギスギスしてて入りづらいな。というか、入りたくない」
「そうですね兄さん。どこか他のギルドが設立されるまで待ちますか?」
「そうだな。…………あれ?俺それまでニート?」
「大丈夫ですお兄ちゃん。桜が養ってあげます!」
「……ウチも」
そんな事を伸長が百四十も無いような末っ子に言われたら、俺は終わりな気がする。
椿はそんな俺を無視してティリカに騎士団に入れないか聞いてるし、ティリカも元々そのつもりだったようで即OKを出しちゃってるし。
そいつの性格をちゃんと把握していないと大変な事になるぞ。
俺知らないからな。
ルナはルナでどのギルドに入るか迷っているようだし。
「因みに聞くけど、ギルドを設立する条件って?」
と、ティリカに聞いたところ、条件を書かれた紙を渡してくれた。
一.ギルドマスター及びサブギルドマスターはSランク以上であること。
ニ.ギルドマスターとサブギルドマスターの他に十人以上の人数がいること。
三.ギルドマスターとサブギルドマスターの他に三名以上のAランク保持者がいること。
ということらしい。他にもあるが、そのほとんどが以前までとあまり変わらない内容だった。
どちらにしろこれでは自分でギルドを設立することも難しいようだ。
「はぁ、当分ニートかぁ。何か仕事さがさなきゃな」
◆◆◆
今回のタイトルは意味不明ですね。
直訳でキリ、ギルドの壊滅です。
ギルドの壊滅にキリは関係ないですね。




