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Tsubaki , in the Castle Town

 ◆◇◇


 目が覚めた。

 外を見てもまだ薄暗く、日が漸く昇り始めた頃かしら。

 私がこんなに早く目が覚めることはそうそうない。

 いつ以来だろうか?いつも桜に起こしてもらっているのに、いくら早く寝たからといっても自分で起きれるなんて本当に珍しい。

 自分でもそう思うくらい珍しい。今日は隕石でも降るんじゃないかしら。


 完全に目が覚めてしまったため、二度寝をする気にもなれず、何気無く外を見てみる。

 何ということだろう。まだ日が完全に昇りきっていないというのに、外にはちらほらと人が活動を開始しているのだ。


 この世界は私には厳しい世界のようね。


 朝からテンションが高かった私のテンションが少し落ちた。


 ここで完全にやることの無くなった私は外に出ることにした。

 昨日買った洋服や生活用品を少し大きめの鞄に詰めて部屋を出る。


 鍵を返すときに「朝食は?」と聞かれたが、元々私は朝食は採らない派なので遠慮して宿を出る。

 桜に起こされてた時は「朝食は食べなさい」と毎日のように言われていた。

 本当に桜は皆のお母さん。……小さいけど。


 宿を後にした私は、昨日果たせなかったギルド登録をするためにギルドに向かう。

 ギルドに向かう途中の路地に、昨日見た赤髪の少年が鼾をかいて寝ていたのが目に入った。

 ハッキリ言って絶対に関わりたくないので、無視して通り抜ける。


 ギルドに入ると昨日のオッサンがまだパン一で泣いていたが、気づかれないように後ろをそっと通り、ここも無視する。


 ちゃっちゃと登録を済ませてここを出ていこうと思い受付のお姉さんの所に行く。

 注意事項を受けたり、記入用紙に記入したりしたが、他にお客がいないためかスムーズに登録を終えた。

 最後に兄さんの事を聞いてみたが、彼女は昨日が非番だったらしく昨日の事は判らないとのことだ。


 因みに冒険者の朝は遅いのかギルドはガラガラ、受付も彼女しかいない。


 依頼を受ける気もなれず、そのままギルドを後にする。

 ギルドを出る頃には太陽も顔出しきりで街もだいぶ賑やかになってきていた。


 特に宛もないので適当に街をブラブラする。

 街を歩き回り気になったことが一つ。というか、昨日から気にはなっていた。

 朝靄の様な小さな色付きの靄。

 今まで見た色は赤と青と緑と黄色の四色のみ。

 人のすぐ近くにある時もあれば、人がいない時にも発生している。


 これな何なのだろうか?これが所謂魔法というやつなのか。

 これがそうだとしたら何ともしょっぱい魔法である。


 その後も適当にあっちにフラフラこっちにフラフラ。

 その度珍しいものがあったら何でも買っていく。


 果物屋に行けば見たこともない果物を買い、魔法書店に行けば値段を見て驚き、魔法具店というところに行ったら何の道具なのか、どうやって使うのか判らないのでただ冷やかして帰ったり、と結構楽しめた。


 そろそろお腹も減ってきたので昨日のレストランに行って、またあのパフェを食べようかなと思ったとき、また色付きの靄が目に入る。

 しかし、いつもと違う。

 靄の大きさもいつもより大きいし、色も始めて見る水色。


 何となくだが足を止めてソレを見る。


「貴女もあれが見えるのですか?」


 突然掛けられた女性の声にドキリとしてしまう。

 昨日は散々絡まれたから、今日は一日絡まれないようにと注意して行動したのに、と思ったが聞こえてきたのは女性というか少女のような透き通る声だった。

 靄に気を取られていて彼女の接近に気付けなかった。


 声の持ち主を確認すると、水色の髪に翠の瞳。大きめの白い修道服の様なものを来ている。

 身長は桜よりは高いがそれでもかなり低い、13歳くらいかしらね。

 いえ、でも桜の例があるし……。


「貴女もということは貴女も?」


「はい。見えてますよ」


「あれは残留魔力。誰かが使った魔法の形跡。魔法の属性や大きさを視ることが出来ます。あれは……氷属性の初級といったところかしら。……貴女は今まで見たこと無かったんですか?」


「……えぇ、今まですごい田舎にいたもので……。昨日こっちに来たばかりなんですよ。いつも他の色の小さい靄が見えてのだけなもので……」


「そうですか。小さいものは恐らく生活級の魔法でしょう。言葉通り生活レベルで使うような魔法なのであちらこちらで視れたでしょう?この靄、正確には残留魔力と言いますが、この残留魔力を見ることが出来るのは魔眼の持ち主のみ。つまり、貴女も魔眼の持ち主ということですね」


 私が魔眼の持ち主!?

 今まで魔法とは無縁の生活をしていたのに!?

 まずい!二年前に発病し、もう疾うの昔に完治したはずなのに、また再発してしまう。


「魔眼を持ってると待遇が悪かったりします?」


「そんなことありませんよ。寧ろ特別な職に就けたりと待遇はかなり良いですよ。魔眼持ちは稀少ですから……。あ、私ティリカ・ハートフィリアといいます」


「そういえば、自己紹介がまだでしたわね。ツバキ・ヒイラギです」


「ツバキさん、何かお困りのことがありましたら警備騎士団庁舎に来てみて下さい。必ず力になれると思いますよ。では」


 彼女の雰囲気に流されてしまった。あんなに小さな少女でも騎士団に入れるのね。

 そういえば、警備騎士団ってことは他にも騎士団の種類があるのかしら。

 というか、彼女に兄さんのこと聞けばよかった……。


 はぁ、パフェ食べに行こ。


 お店に向かう途中の路地で先程別れたばかりのティリカがいた。

 隣には三十代の男性がいる。

 人気の少ない路地に三十代の男と十代前半の少女がこそこそしていると、パッと見、犯罪の臭いがするが彼女はあれでも騎士団の一員だ。

 きっと隣に男性も騎士団の人で、コンビとかそんな感じだろう。


 それに、壁が崩れていたり地面が凹んでいたりと、何か事件でもあったのでしょう。


 それにここには赤、青、緑、黄色と四色のティリカが言っていた初級魔法程度の靄があちこちにある。

 少し綺麗にも思ったが、案外鬱陶しい。


 この魔眼はオンオフが出来ないのかしら?

 常にあの靄、残留魔力だっけ?まぁ、取り敢えずソレが視界映って本当に鬱陶しく感じる。


 やっぱり魔眼のこと聞きに、また今度ティリカの所に行きましょう。

 魔眼の詳しいこと聞きたいし、操作方法も知りたい。

 これじゃ、本当に鬱陶しくてやってられない。

 確か警備騎士団庁舎だっけ?何処にあるのかしら?

 まぁ、誰かに聞けばいいか。店員さんにでも聞こうかしら。


 私は仕事の邪魔にならないように声を掛けずに通りすぎると、昨日と同じレストラン“クルーミル”に着く。

 昨日と同じように四、五人の行列が出来ているのでならんで待つ。


「いらっしゃいませ!…あっ」


「ん?」


「さ、」


「桜ちゃーん!」


「えっ?な、何?」


 バタバタと走り去っていく店員さんも見て驚くが、店員さん一言にも少ししてから気付く。


「……桜ちゃんって……」


 ◆◇◇

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