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進化する翼レグナ  作者: 影絵企鵝
十六章 覚醒
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後編

 一方、大通りでは裁きの天使と堕した天使が睨み合いを繰り広げていた。冴子はビルの側に逃げ、柱の隙から二人の様子をじっと窺う。

「……失策だったか。我が妹の力を目覚めさせると同時に、お前の中の力までも目覚めさせてしまうとは……」

「ああ。一つお前に感謝しといてやるよ。お前のお陰で冴子は生き残って、お前を倒す力も手に入ったんだからな!」

 典史は右手を天に突き上げると、黒い刃を取り出す。そして、十二枚の翼を全て広げた。その姿を見つめ、天使はいきなり歯を剥き出しにした。

「しかし。やはりお前はルシファーに過ぎない。今もなお神に逆らわんとするお前にふさわしい、醜い姿だ!」

「俺が今どんな格好かは知らねえけど……全身目玉でぎょろぎょろしてるよりは遥かにマシだ! それに……聞いたことあるかよ。ルシファーが神に逆らったのはな……」

 剣を振り上げて肩に担ぎ、一気に天使の懐へと飛び込んだ。一閃をセラフィムは左手で受け止める。視線が再び交錯した。

「人間に力を貸すためなんだとよ!」

 二人の蹴りがお互いの腹に当たる。互いに吹き飛び、どうにか姿勢を整える。典史は大量に身の丈ほどの巨大な斧を作り出すと、次々にセラフィムへと向かって投げつけた。それを両手両足から放つ光線で撃ち落としながら、セラフィムは叫ぶ。

「哀れな堕天使よ! 神に逆らい世界を虐げる人間など、生きるに値せぬ! 滅びて然るべきだ!」

「認めるかよ! 俺は戦う! それがお前にとっての正義だってなら……そんなものは全力で否定してやる!」

 セラフィムは飛んできた斧を掴み取ると、それを肩に担いで典史に襲いかかった。典史は身の丈二倍の剣を取り出し、構える。

「死ね! 神に変わり、貴様を地獄に突き落とす!」

「堕ちるかよ!」

 典史は手を伸ばしてセラフィムの手にある斧を消す。空振りしたところに翼目掛けて一撃を仕掛けた。翼に刃が食い込み、血が噴き出す。

「堕ちろよお!」

 一気に重みを掛け、セラフィムの翼を一枚切り落とす。掴みかかってきたその手をかわし、典史はセラフィムを蹴り飛ばす。セラフィムは地面に落ち、叫びながら立ち上がる。

「この堕天使風情がぁっ!」

 叫んだ途端、セラフィムの翼が蘇る。そして飛び上がると、一気に全身の目玉から光線を撃ち出した。その光は周囲の建物を貫き、爆発して建物を吹き飛ばす。その一撃が冴子へと向かった。典史は目を見開くと、彼女の前に鏡の盾を呼び出す。盾は光線を跳ね返し、セラフィムの脇腹を焼く。

「ぬぐぅッ! 貴様! 貴様ァ!」

「また冴子を狙ったな! この野郎が!」

「黙れえっ!」

 セラフィムは典史の懐に突っ込み、燃え上がるその拳で典史の鎧を殴る。一撃で鎧にヒビが入り、典史はビルに叩きつけられる。再び翼を広げると、典史は雄叫びと共に光の尾を曳き再び飛び出す。

「負けるかぁっ!」

「何故だ! 何故貴様の目は輝く!」

 典史の一撃を受け止め、セラフィムは叫ぶ。典史は全力でセラフィムを押し込み、その赤く光る目を睨んで叫ぶ。

「決まってんだろ! お前に無い物全部持ってるからだ!」

 一旦離れると、宙返りから急降下で典史は槍を取ってセラフィムへ突っ込む。セラフィムは右手を突き出し光線を放つ。典史は旋回してかわし、その胸に槍を突き出した。セラフィムが槍を左手で受け止め、いきなり光で包まれ槍が吹き飛ぶ。

「ぐあっ」

 典史の両腕が燃え上がる。回転して消すと、典史は一気に飛び上がってセラフィムの光線を避ける。セラフィムは怒りに叫び、放った光線を振り回し周囲のビルを全て吹き飛ばす。

「やめろぉっ!」

 典史は一気に飛び込んでセラフィムの懐に飛び込み蹴りつける。光線が途切れ、典史とセラフィムはもつれ合って廃墟になった広場に墜落する。

「うぐっ」

「がっ」

 二人は気力を振り絞って立ち上がる。セラフィムは吼えると、翼を限界まで開いて飛び上がる。そして両手を広げ、全身を光に包み込んだ。

「堕天使よ! 神より与えられし聖痕を抱いて死ぬがよい!」

「俺は死なない! 俺は一度独りになった。でも今は大切な人達が、いるんだあぁっ!」

 典史は全身を光で包むと、そのまま拳を固めて飛び上がる。セラフィムは両手、両足、そして脇腹から白熱した光線を放つ。典史は右に飛び、左に飛び、回転し、下に落ち、上昇して光線を次々かわしていく。そして、その拳をセラフィムの胸に叩き込んだ。

「うわああっ!」

「ぬううっ!」

 黒い鎧が一際白い輝きを放ち、セラフィムをそのまま天空へと舞い上げた。その真紅の体は瞬く間に白く輝いていき、セラフィムはもがき苦しむ。

「これは……? 何故だ! 何故我が堕天使などに!」

「さあな!」

 典史はセラフィムを一瞥して地に降り立つと、変身を解いて一気に崩れ落ちた。その時、地下鉄駅の鉄扉が開き、冴子が真っ先に駆け寄ってくる。

「典史!」

「冴子……俺、やったみたいだぜ」

「うん。……これできっと、終わるのね」

 二人は頷き合うと、曇り空を突き破り、青空の彼方へと消えていく赤い閃光を晴れやかな顔で見つめる。


セラフィムは小さくなっていく世界を見つめ、低く笑い始めた。光が強まっていく全身を見渡し、その声は次第に昂っていく。

「フフ……ハハハッ! これで終わりではない! 神よ……いつか、いつか必ず、あなたの計画を……!」

 セラフィムは吹き飛んだ。無数の光となり、世界中へと飛び散っていく。そしてそれは全てが終わった日ノ出市にも降り注ぐ。


「……綺麗」

 冴子は空から降り注ぐ光を見つめて呟いた。膝枕の上で頷くと、典史は雲に空いた穴から覗く太陽に手をかざして見上げる。その空の透き通る青に、煌めく光が良く映えていた。


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