プロローグ2
今回は歴史の流れです。設定の歴史編を詳しくしたものなので、面倒な方はそちらを見ればOKです(笑)
西暦2045年。世界はついに限界を迎えた。
アジア・アフリカ地域の貧困問題や人口の増加、各国の財政状況、国家利権。どこを見ても問題しかなく、それを解決する手段を人間は持っていなかった。各国首脳人は必死に自国だけは富ませようと躍起になり、国民の不満は政府から自然と他国へと向けられるようになった。
そのような情勢下でことは起きた。2045年、以前から周辺地域に圧力をかけていた中国軍が、ついに日本に対して宣戦布告を行った。その主張は尖閣諸島や沖ノ鳥島を含む、沖縄県の割譲であった。これに対し日本政府は即時応戦を決定。日本軍(旧自衛隊)を出動させる。それに呼応する形で各国が一斉に動きを見せた。
アメリカは同盟に基づき日本側として参戦。韓国は急きょ北朝鮮と和睦を結び、中国と同盟を結ぶことで一方的に日本に宣戦布告する。これに対しEUは非難決議を採択、中国陣営に対し軍事行動を取り日本陣営に武器を大量に輸出する一方、ヨーロッパの裏庭ともいうべきアフリカから中国勢力を一掃し始める。その後領土問題を抱えるインドは日本に、パキスタン、イランは中国につき、東アジアは一気に戦争一色に染まった。
しかし事態はそれだけでは収まらなかった。EUのイギリスとフォークランドを巡り対立していたアルゼンチンが急きょ中国側に参戦。ブラジル以外の南米諸国もその動きに追随する。ブラジルは日本、アメリカの要請に応え南米中国陣営と交戦することになる。
北方ではロシアが動いた。当初形成が固まるまで様子見を決め込むと思われていたロシアが、突然西進を始めたのだ。これにより欧州にも戦線が発生。財政危機で軍縮を続けていたアメリカにこの動きを止めることはできず欧州だけで対応することになる。このタイミングでオーストラリアなどがイギリス連邦からの脱退を表明し中立を宣言しつつ、軍を集結し北進の動きを見せる。
第三次世界大戦がはじまった。
開戦から5年がたった。劣勢に追い込まれた中国、ロシアが核を使う一歩手前まで状況は悪化したが、かろうじて外交で講和が成立。日本やアメリカなど西側陣営の勝利で大戦は終わった。
しかしその時の地球はあまりにもひどかった。世界中が工場をフル稼働で動かし続けた結果、深刻な環境汚染が発生し、屋内から出ることができなくなってしまった。人口も戦争で一時減少したものの、いずれ爆発的に増加するのは目に見えていた。
もはや選択肢はなかった。戦争を止められなかった国連は解体され、地球連邦が発足。地球を一国家として機能させる行政機関とするために、戦勝国であり連邦の常任理事国となったアメリカ、日本、EU、インド、ブラジルが共同で運営することが決定された。それに伴い西暦を廃止、外宇宙に人類の拠点を築くべく戦時中からひそかに進行していた宇宙進出計画を本格的に始動させ、2050年を『宇宙歴1年』とした。
最初は困難の連続だった。宇宙空間に拠点を築く計画は戦前から存在していたが、物資の輸送や宇宙空間でのテラ・フォーミングなどさまざまな問題があり、実現には至っていなかった。
だが皮肉にも第三次世界大戦がその問題を克服するきっかけとなる。戦争によって限界まで加速した科学技術の研究が、従来の問題を解決する手立てとなった。汚染された地球で暮らせるようにする、環境を整える技術はテラ・フォーミングに応用され、物資輸送は大国が持つミサイル技術が使われた。
そうこうするうちに宇宙暦12年。日本の地中深くに未知の鉱物資源が確認された。名前は発見場所が富士山に近いこともあり『フジニウム』に決定。これは加工することで超高硬・強度かつ軽量な金属になることが判明する。産出国は日本、アメリカ、スペイン、カナダ、中国、オーストラリア、トルコ、ロシア。その後フジニウムが非常に重要な戦略資源となることがわかり、トルコ、中国、オーストラリア、カナダ、ロシアが地球連邦の常任理事国入りすることが決定された。
それから約20年後の宇宙暦38年。数々の困難を乗り越え、人類は月面基地『第1連邦宇宙基地』の完成にこぎつけた。これによりすでに100億人に上ろうとしていた人口の一割、10億人が通称ムーンベースへと移住を開始した。それに並行し、太陽系外へ進出、拠点を築くための外洋宇宙船の研究も加速する。何が存在するかほとんど解明されていない宇宙空間で安心して航行できるように、地球連邦は人類初の純粋な宇宙軍を創設した。
時は流れ宇宙歴51年。人類の歴史に大きな影響を与えた一大発明が発表された。日、米、EU、インド、ロシア、イスラエルの合同研究チームが、空間に一定出力の特殊な力場を発生させることによって空間にゆがみを発生させ、その結果光速の数十倍から数百倍の速さで移動する、通称『亜空間式超光速ワープ』に成功したのだ。これを機に、人類は火星や金星といった太陽系惑星だけでなく、その他の星系へと足を踏み入れることになる。
宇宙歴71年。地球連邦政府は太陽系に第4連邦宇宙基地を建設するに至った。同時に地球連邦当初から常任理事国入りをしていた五大国は、独自の調査艦隊を外宇宙へ派遣し入植可能な惑星をそれぞれ発見する。地球連邦政府の許可を得た形で五か国の入植準備が始まったが、当時の連邦首脳部は五大国に占有されていたため出来レースに近く、のちに常任理事国入りした国家や新興国などから非難されることとなった。
宇宙歴83年。先進五か国がついに入植を開始した。入念に調査された報告通り、それぞれの惑星には豊富な資源が手つかずの状態で残されていた。先進五か国が国民移住や資源調達、居住環境の開発に奔走する中、環境保護団体など複数の市民団体は「知的生命体が確認されなかったからと言って、独自の進化を続けている一生態系を崩すことは許されない」と強硬にこの動きを批判した。
だがそれに耳を貸す人々は少なかった。反物質エネルギー技術が確立され、エネルギー問題は地球からほぼ一掃されたといっていい状況だったが、依然として過剰な人口増加は続いており開拓惑星から送られてくるさまざまな物資なくして地球や宇宙基地の暮らしは成り立たなかったのである。
結果、ほぼすべての国家が先進五か国の行動を容認、日本やアメリカなどはさらに連邦内での発言力を強めることとなった。
それから46年の月日が経過した宇宙歴119年。先進国の入植は完全に成功したといってよかった。これに伴い先進五か国は新たな開拓惑星への入植を検討し、中国、オーストラリア、トルコ、ロシア、イスラエル、台湾、インドネシアといった準先進国、新興国も惑星開拓に乗り出した。
121年には先進五か国が第一次開拓惑星に首都機能を完全に移行。ついに地球外に本国を持つ国家が誕生した。
だがその3年後の124年、今後の地球連邦の存続を危うくするきっかけが起きた。第二次惑星開拓に乗り出した国家のうち、入念に調査したにもかかわらずアメリカ、ブラジル、中国、イスラエルの惑星には資源がごく少数しかないことが入植後に判明したのだ。特にアメリカは連邦初期から飛び抜けた国力を保持していたが、今回の件で大きく国力の低下を招いた。オーストラリアとカナダも入植が難航し、連邦内のパワーバランスが大きく揺らぎだした。
124年に起きた入植事件は後々まで尾を引いた。アメリカやブラジルの国力低下が影響し常任理事国内で不和が発生しだした。アメリカという軸が揺れ、地球連邦政府も理事国の不和から機能不全に陥りだした。
そして141年。ついに事態が動いた。第三次世界大戦から150年近く保たれてきた平和が崩れ、地球連邦憲章の改編や他国の資源、開拓惑星を巡り第一次宇宙戦争が勃発した。
日本、インド、トルコ、そして当時連邦の首相をトルコ代表が務めていたこともあり地球連邦が憲章の維持を主張し、それに反対するブラジル、中国、ロシア、イスラエル、カナダ、オーストラリアが資源や開発惑星の共有を主張した。
また常任理事国内のかじ取り役の座を巡りアメリカとEUも短期間だが激しく衝突した。しかしこの戦いは長くは続かなかった。反憲章を主張する国家連合は、あくまで自分たちが持たざる資源を他国から得ようとし、いまだ単独で惑星を保有できていない発展途上国に対しては一切その恩恵を与えようとしなかった。また連合内でも各国の足並みが揃わず、そのような連合を地球連邦諸国は支持しようとはしなかった。
開戦から2年たった143年。反憲章連合は敗れた。敗戦国のブラジル、中国、ロシア、カナダ、オーストラリアはその行いの責任を取らされ常任理事国から除名。連邦内での発言力も著しく減退した。
しかしブラジルに限り、連邦設立からの功績を考慮しほとんどないに等しい制裁を科されるのみに収まった。この裁定が表面上分裂は回避されたかに見えたかに見えた地球連邦内に、火種を残す要因となる。
戦争の傷跡が消えつつあった宇宙歴150年。戦争により一時凍結されていた地球連邦統一言語『地球語』が正式に布告された。英語、スペイン語、日本語、ヒンディー語、アラビア語をモデルに組み合わせたこの言語が、従来の言語を残しつつ第二公用語として連邦各国に普及することになった。
それから長い年月が流れた231年。先進国の枠からブラジルが抜け、新たにトルコが入り連邦の宇宙進出も格段に進んでいた当時。ついに地球人は外宇宙人類と相対することとなった。
当時3つめの惑星に入植を始めていたインドが周辺宙域を探索していると、唐突に今まで確認されていない謎の言語による通信がインド軍宇宙艦隊に入った。その後憲章に従い地球連邦政府が交渉の場を設け、『ガリオス人』と名乗る新人類との初の交渉が行われた。
ガリオス人は母星から宇宙進出を果たし始めたばかりの単一惑星国家であり、その科学レベルは地球連邦の台湾、エジプトといった新興国に近い水準であった。
その後お互いの言語の解析がなされ本格的な交渉が開始。地球本星から約2万光年離れた位置にガリオス本星があることがわかり、その星域に近いインドが中心となって交流を開始した。見た目は地球人に近いが、耳がエルフのように尖っておりなおかつガリオス人が総じて美形ぞろいだったこともあり、地球連邦諸国では比較的容易に友好ムードが生まれた。
しかし悲劇は唐突に起きた。ガリオス人の宇宙進出を可能にした、連邦が発見したことのない新エネルギー物質『プラナ・ガルス』を求め、当時2つ目の有人惑星を手にし宇宙軍増強に力を入れていた中国が、宣戦布告もなく電撃的にガリオス星系への進軍を開始したのだ。
だが不幸中の幸いか。当時ガリオス本国の防衛任務に就いていたガリオス宇宙軍本国防衛艦隊がこの進軍を阻止、その後日本とインドの連合艦隊が中国軍艦隊、および中国本星を攻撃し、地球連邦政府は事態の鎮静化を急いだ。
結果として、地球連邦とガリオス人の友好関係は保たれた。この事態を生み出した中国は厳しく処罰され、宇宙艦隊の艦数制限、新規惑星開拓の無期限禁止、ガリオス政府に対し連邦通貨で1.5兆地球ドル(日本通貨、150兆円相当)の賠償金を命じられた。
予想外の事態に見舞われガリオスとの国交は絶望的かと思われた時期もあったが、事態の早期終結が功を奏し宇宙歴243年、地球連邦政府とガリオス政府はインド本国、ティムール星系『サマルカンド』にて友好条約を結ぶに至った。これは地球人類史上初の快挙であり、地球外人類の存在が民間レベルで身近な存在となるきっかけとなった。
そして現在、宇宙歴288年。2年前にアメリカ海軍の調査艦隊がセレノア人との接触を果たしたことによって、地球は新たな局面を迎える。
この手の歴史チャートは文章が単調になりがちで嫌いです。