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「夏輝!理由を言えよ!何でわかった?」
バイクを先ほどよりも速いスピードで走らせている豪が、後ろの夏輝に話しかけた。マフラーからの音に負けないため大声である。
「あの人、英語をしゃべってた。だから、英語圏の妖怪だと思った。そして、相手の男の妖怪が言っていた」
『お前はホームジアンなんだから、枢要院の推理の裏をかいてうまく隠しておけよ』
「日本やアメリカでは、ホームズファンをシャーロキアンと言う。けど、彼はホームジアンと言った。ホームジアンというのは、イギリスの呼び方だ。だから彼女はイギリスの妖怪だと思った。それと、本棚にあったアガサ・クリスティの本。アガサは、イギリス人女性と言うのは、靴下に金を隠すと言った。今回は金じゃないが、大事なものを隠すと思ったんだ。それが当たった。書類と言うから紙束を予想していたが、それもフェイク。念には念を、書類と言うことで紙束を想像させ、メモ用紙は見つからないようにした」
「成程ね!ところで、数珠公園は広いけどよ、どこ行くんだよ?」
「今日この時間、ハルは数珠公園のフットサルコートで友達とフットサルをしている!だから、いるとしたらその周辺だ!」
「了解!もっと飛ばすから、しっかり掴まっとけよ!」
豪が右手を捻ると、Z1はそれに呼応して嘶き、更にスピードを上げた。
数珠公園 フットサルコート付近
「全く、あいつは何をしてるんだ…。もうすぐ八時だっていうのに」
「あの女性なら来ませんよ。今頃枢要院に捕えられているでしょう」
「ん?…ガッ!」
独り言に振り返ったら、目の前に拳が迫っていた。勿論避けられることもなく、それは彼の鼻を潰すこととなった。
「な、何…だ…」
「あなた達がハルを襲撃しようとしていたことは、もうわかっています」
夏輝が淡々と告げる。豪に殴り倒された男は、状況がつかめずに混乱状態だ。
「お前…確か、万屋の…」
「助手の夏輝と申します」
「何故…わかった…?」
呻く男に、夏輝は小さく笑って言った。
「ハルの助手ですから」
「あれ?夏、何してんの?」
その後、枢要院がやってきて男を連れ去った後、春一が夏輝を見つけた。
「お前、コンビニ行くのにどんだけ時間かかってんだよ」
不機嫌そうに言う春一だったが、それは夏輝の後ろに控える男を見て吹き飛んだ。
「豪さん!」
「よう、ハル。久しぶりだな。でかくなったなー、お前」
「お久しぶりっす!今でもZ1バリバリっすか!?」
「あったりめーだろ」
「おう、夏、豪さんは丈の兄貴でよー」
「知ってますよ」
「あ、そうなの?ところで、何でここにいるんだよ?」
汗をぬぐう春一に、夏輝は小さく笑った。まるで、世話の焼ける弟の面倒を見ている兄のようだ。
「いえ…散歩です」
「散歩ぉ?」
「ええ…。いい夜ですね」




