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ロボット少女は恋をする(5)

 家に帰って、ネネは全てを打ち明けた。

 飛鳥に、兄妹以上の感情を抱いてしまっていること。

 瑠璃に嫉妬し、恨んでしまったこと。

 今日、瑠璃を言葉で傷付けつけてしまったこと。

 そこにロボット少女はいなかった。飛鳥という一人の人間に恋する、ただ一人の少女として、ネネは存在していた。

 飛鳥はそれを聞いて、両手を額に当ててその場に俯いてしまった。

 正直なところ、相当混乱していた。色恋沙汰など経験したことの無い飛鳥にとっては、同時に二人から想いを向けられるのは、重すぎる。

「悩まなくていいよ。おにいちゃんは、瑠璃先輩と付き合ってあげて。あの人は、凄くいい人。あんまりお話したことないけど、分かる。ネネなんて比べ物にならないくらい、優しい人だよ」

 お茶でも入れるね、と小声でそう続け、台所へと向かおうとするネネを、飛鳥は呼び止めた。

 ネネに背を向けたまま俯く飛鳥の背中は、ひどく狼狽しているのが感じ取れるほど、小さく見えた。

「それで、いいのかよ。ネネは、それで納得できるのかよ……」

「兄妹っていうのは、設定。本当はネネとおにいちゃんは赤の他人。だからそんな設定いくらでも解消できる。でも、ロボットと人間、っていう溝は、ちょっと絶望的なんじゃないんかな」

 そう。人間性云々、という話をする前に。飛鳥という人間と、ネネというロボット、という、絶望的なまでに深すぎる溝が存在していた。

「きっと、ネネという存在は、いちゃいけないんだよ。いくら高性能な演算が出来たとしても、おにいちゃんを守ることも出来ないし、人に嫉妬して傷付ける。役立たずなんだよ」

「そ、それは違う!」

 反論しようと飛鳥が振り返ると同時に。ネネが、両手を背中の方で組んで、クルッと、軽やかに振り返った。ロボットとは思えない滑らかさで。

 そして、笑う。自分を馬鹿にしきった、自嘲の笑みを浮かべて。

「じゃあ、おにいちゃんはネネと恋人同士になってくれる? こんな、嫉妬深くて、自分勝手で、全身機械の体の、ロボットを。……開いてるところは開いてるよ? きっと人間の女の人とするよりも数倍気持ちよくしてあげることもできる。一応、愛玩人形としての役割もあるからね」

 言って。ネネはその小さな手を、下腹部に当てた。その意図を悟り、飛鳥は真っ赤になった。しかし、それだけだった。反論、出来なかった。恋人になれるか、という質問に対して、答えられなかった。

「……でもね。ネネは、おにいちゃんの、傍にいちゃ、ダメ。おにいちゃんが大好きになって、おにいちゃんをネネのものにしたくなっちゃう。きっと、その気持ちがどんどん大きくなっちゃう。ネネ、断言できる。そのうち、おにいちゃんを自分の物にするために、瑠璃先輩を殺しちゃうよ」

 ぞ、っとした。氷柱で刺されたかのような寒気が走る。ネネは、そんな台詞を、平然と言ってのけた。

 ネネの中には、ロボット工学三原則など、既に存在していなかった。

 得てしまった、人間らしい理性。和飛が言うところの、自分の欲望のために行動できる思考。人間ならば誰しもが持つ、我儘で自分勝手な部分に、ネネは振り回されていた。初めて得たものを使いこなせず、暴走していた。

「だからね。おにいちゃん。ネネ、帰るね。おにいちゃんの傍には、もういちゃいけないんだ。こんなロボットに、愛されるなんて……おにいちゃんのためにもならないし」

 言って。寂しげに、目を伏せ、続けた。

「ネネの、ためにも、ならないし」

 飛鳥は、何も言えなかった。反論することも。受け入れることも。ただ、沈黙するしかなかった。

 折角人間の思考が出来るようになったのに。人間と自分が、致命的に違うことを、完璧に理解してしまった、哀れなロボット少女として、そこにいた。

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