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幕間(2)

『瑠璃ってさー。好きな男とか出来てねーの?』

 高校生活が始まってそろそろ半年ほどが経とうとしたある日のことだった。

 極度の人見知り故に友達が非常に少ない瑠璃にとって、唯一の親友と呼べる、中学からの付き合いの月代と電話していた時の事だ。

 他愛の無い内容の会話が、突然、瑠璃が最も苦手とする内容のものへと豹変し、襲いかかってくる。月代としては、ただ単に興味本位から聞いただけ。しかし、こういう話にまるで慣れていない瑠璃にとって、それは凶器だった。

 ボムッ、と音が立つような勢いで一気に顔を真っ赤にした瑠璃は、寝転がっていた自室のベッドから慌てて起き上がった。

「なっ……! い、いや、そ、の……!」

『おっ!? その反応は何か隠しているなっ! 教えろよー。なー』

 電話の向こうで、月代が目を輝かせている姿がありありと想像できる。瑠璃は、ベッドの上で挙動不審になりながらも、絞り出した。

「わっ、わっ、わらわ、ない?」

『笑わない笑わない。むしろ、逆に心配だったからさ。安心するよー。瑠璃でも好きな人が出来るんだな、って』

「っ――」

 親友相手なのに、緊張する。どうしようもないほど顔が熱くなるのを感じる。だが、一度興味を持たれたら逃げられない、というのは、もう分かり切ったことだ。

『な? 笑わないからさ』

「くっ……孔雀蓮、君、です!」

『……』

 月代にとって意外すぎる人物が挙げられ、向こうで笑うどころか絶句しているのを感じ取った瑠璃は、ベッドを平手でバンバン殴りながら、声を荒げる。

「ほ、ほらー! ばっ、馬鹿にしてるじゃない! だから言いたくなかったのーっ!」

『い、いやいやいや、馬鹿にはしてない。馬鹿にはしていないよ、うん。むしろ……何で?』

 そして、その月代の言葉は、一般的に言えば正しいと言えよう。

 孔雀蓮飛鳥。瑠璃と月代のクラスメイトであるが、クラスの中でも特に目立たない存在。休憩時間も何やら小難しそうなコンピュータ関連の本を読みあさって、他を拒絶しきっている、およそ高校生らしくない男子だ。彼が誰かと親しく話をしている姿を見たことが無いあたり、友人と言える存在は皆無なのだろう。

「つっ、月代、には、分からないよ、どうせ!」

 そうは言っているが、実は瑠璃もあんまり分かっていなかった。悪く言うと特徴があんまりない、よく言うとごく普通の顔立ち。個人的な話はしたことがない故にどんな性格なのかもよく分からない。

 しかし、入学直後から、なんとなく、彼の事が気になっていたのだ。

 幼いころから本が大好きで、空想の世界で恋愛をするのが大好きだった彼女にとって、現実世界の男に対してそんな感情を抱くということは、ある意味カルチャーショックだった。

 ひょっとしたら、ただの一時の気の迷いなのかもしれない。しかし、その不慣れな恋愛感情に、瑠璃は興味があった。大切にしたかった。

『分からんなー。あいつ、ただの根暗じゃん!?』

「わ、分からなくていいもん! 孔雀蓮君は、きっといい人だもん! 人の好みにケチつけるなんて酷い!」

『い、いやいやー、怒らないでくれよー。悪かったって。な?』

 大人しかった瑠璃に、そんな強い言葉を投げつけられ、月代が電話の向こうで狼狽しているのが分かった。

『意外すぎて驚いたー。……ごめん』

 どうやら相当凹んでいるらしい。呟くように言う月代に、瑠璃も一気に冷静になった。

「別に、いいよ。それにどうせ、私なんかに振り向いてくれるわけないもん」

 そう。瑠璃は自分に自信なんてなかった。分相応に、本の世界で恋愛してればそれでいい、と思っている。こんな感情、外に出す必要なんて何もないのだ。

『そんなことねーって! 分かった、手伝う!』

「い、いいよ、そんなの……」

『大丈夫だって! 確かあいつ、ウチと同じマンションに住んでるからさ! 詳しく調べてやるぜー』

 出た、月代のお節介体質、と、瑠璃は内心少しウンザリしつつも、強く拒絶することもできなかった。ひょっとしたら、という期待感も、ほんの少しだけあったのかもしれない。

 そして結局、月代をパイプとして瑠璃と飛鳥の距離が近づき、普通に話せるほど親しくなったのは、更に半年以上経ってからであった。

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