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ロボット少女がいる非日常(14)

「まあ、瑠璃の事なんだけどさ」

 そう言って、月代は目を床に落として少し泳がせた。言葉を選んでいるのだろうか。

 一つ一つ、口から言葉を絞り出していく。

「飛鳥。瑠璃のやつ、お前のこと、相当心配してたんだぞ。お前が刺されてから、あんまり、寝てないみたいだし。お前が救急車で運ばれた後に 死んだらどうしようって、みんなの前なのにワンワン泣いてた。……今日だって、ウチが誘う前に瑠璃の方から言ってきたんだぜ? 一緒に行く、って。あんな、自己主張がさっぱり出来ない根暗な子が……」

 飛鳥は、どう反応していいか分からなかった。自分が知らない所で、そんなに心配してくれている人がいる、ということ自体が、飛鳥にしては理解できなかった。

 何で自分なんかの心配をするのか、と本気で思う。自分には心配される価値もあるのか、とすら思う節があるのに。

「お前が起きた、っていう連絡があるまでもだ。大丈夫かな、大丈夫だよね、って、学校でも、家に帰って電話してても、お前のことばっかり。なあ。分かるよな? 瑠璃がお前をどんな目で見てるか?」

 そんなに心配されて。そんなに他人から思われて。いくら鈍感な飛鳥でも分かる。しかし、釈然とはしなかった。

 自分なんかに好意を持たれる理由が、理解できない。

「何で、僕なんかを」

「あの子、一年の頃からお前のこと見てた。女って、怖いんだぜー? あんな社会不適合者みたいに人見知りする子でも、男の本質は本能的に分かるんだ。お前、自分が根っこはすごくいいやつだって気付いてないだろ。きっかけは知らないけどさ。孔雀蓮君はいい人なんです、って、力説されちまった。で、あんな子の恋路、応援しないわけにはいかないだろ」

 顔に、血が上るのを感じた。多分鏡で見たら、これまでに無いくらい顔が赤くなっている自分を見ることが出来るだろう。

 情けない。友人とはいえ、他人の前で、こんな醜態を晒すなどと。両手で頭を抱えて、そのまま前屈するように倒れこんでしまった。

 自分のことを恋焦がれている子がいるという事実は、今まで色恋沙汰とは無縁だった飛鳥に対しては、破壊力が大きすぎる、オーバーキル甚だしいものだった。

 どうすればいいんだ、と悩みながら、反撃のつもりで、口を開いた。

「なんで……なんでそれをお前が言うんだよ。なんで、本人が直接言わないんだ。そういうのって変だろ。なんか、気持ち悪い、と思うぞ、それ」

 そう。そんなの、飛鳥でも分かる。仲介役としての役目の範疇を、超えてしまっている。代わりに、思いを告げるなどと。

「ああ、そうだな。多分、ありえない行動だと思う。だけど、あの子が、具体的な行動に起こせると思うか? 何度、ウチがあの子の尻引っ叩いて、お前に告白させようとさせたことか。だけど、あの子は致命的に自分に自信が無い。駄目だ、無理だ、って聞きやしないんだ。多分、あの子は想いを隠したまま過ごすつもりなんだと思う。思いを持ったまま卒業しちまうつもりなんだと思う。……ウチは、自信過剰かもしれないけど、あの子のことを、理解しているつもりだ。あの子は、どうしようもなく弱くて、どうしようもなく、いい子だ。だから、絶対、好きになった奴と、幸せになって欲しいんだ。だから、頼むよ、飛鳥。今すぐじゃなくていい。だけど、ちょっとだけ、でいい。お前も、あの子のことを、見てみて欲しいんだ」

 瑠璃に、興味を持ってやってくれ。好きになってあげてくれ。という、それは脅迫。いつぞやの昼食の時間の、あの月代の顔が、台詞が、フラッシュバックする。


――ま、瑠璃泣かしたら本気でウチが殺すけどな


 何だよそれ、と思う。誰かに強要された愛情など、本当の幸せに繋がるのか。

 否。それは飛鳥でも分かる。

 月代は歪んでいる。おそらく、月代は瑠璃に、歪んだ愛情を抱いている。だから、こんなことが平気で言えるのだ。

「……すまん。帰ってくれ。今は冷静に判断できない」

 搾り出すように言う。ともすれば月代が怒り出しそうな気がしたが、しかし、飛鳥には今はそう言うしか選択肢は無かった。

 今ここで、決断することなど、出来やしない。

「分かった」

 ちょっとだけ不満げに、しかしそれだけ言って、月代は立ち去った。病室のドアを閉める音が、ちょっとだけ乱暴だったのが分かった。

 月代は、飛鳥が諸手を挙げて瑠璃を受け入れる未来を想像していたのだろう。だけど、それは早計過ぎると、飛鳥は思った。

 確かに瑠璃はいい子だ。しかも地味だけど、多分、クラスの中ではトップクラスに顔が整っているのは明白。だけど、だからといって、すぐにはいそうですかと受け入れることは出来なかった。

 それは、経験が全くない飛鳥には、しょうがないとしか言いようがないことであった。いざこういう話が来ると、逃げてしまうタイプでもあった。

 そして、そんな飛鳥の後ろにいるネネ。その表情は、酷く動揺していた。

 だが、それ以上に動揺している飛鳥には、気付かれなかった。

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