ロボット少女がいる非日常(7)
日曜日の昼。まさしく外に遊びに出るには最適な時間帯であって、ショッピングセンター内は結構な混雑を見せていた。
飛鳥は人ごみが苦手だった。人ごみが好きだなんて奇特な人はいないだろうが、輪をかけて飛鳥は苦手だった。それはやはり、休日には基本外に出ない引き籠り体質も起因している。
センター内の某大手コーヒーショップのチェーン店の空席を辛うじて見つけて、ネネと向かい合って座った飛鳥は、深く深くため息をついた。
「あー、畜生。久々に来ると疲れる……」
購入したコンピュータ技術書二冊が入った書店の手提げ袋と、若者向けな店で買った男物の服が入った、店のロゴが入ったビニール製のナップザックを投げだし、ハンカチで浮かんだ汗を拭った。
「ほんとすごい人だよね。ネネ、こんなの見たことない」
「世の中にはもっと凄い人ごみなんていくらでもあるけどね。東京の方の通勤電車とか、某漫画市場とか」
言いながら、買ったアイスコーヒーをストローでズルズル啜る。ネットで東京の画像を見て、絶対に行かないと心に誓っている飛鳥である。
しかし、飛鳥の体面に座って、フラペチーノのクリームをスプーンで美味しそうに食べているネネは、至って涼しい顔である。ロボットが疲れるのかどうかは飛鳥には判断しかねるが。
「それにしても……よかったのか? 服とか買わなくても」
先ほど、ついでにネネの服も買おう、と提案したのだが、ネネは普通にそれを拒否した。
ネネは自分のために動かない。少し前に和飛が言った言葉が、ふと過った。
「うん。別にいいよ。月代さんのお下がりでも、結構気に入ってるし」
命令すればネネは許諾するのかもしれない。いや、おそらくは従う。ロボット工学三原則で縛られている。しかし、そこまで干渉するのは違うと思った飛鳥は、おとなしく引き下がったわけだ。
「ネネ」
「んー?」
口に入れたスプーンをくわえたまま、ネネは可愛らしく首を傾げた。
飛鳥も、一度アイスコーヒーを啜って、テーブルに置き、組んでいた脚を逆に組み直した。
「我がまま、とかさ。別に言ってもいいんだぞ? お金だって、父さんから研究補助金で沢山もらってるしさ。ネネが来てくれたから貰えるんだ。ネネの、お金みたいなもんなんだから」
おそらく、あの和飛の言葉を否定したかったのかもしれない。こんなにも人間なのに、断片的に見え隠れするロボットらしさが、気持ち悪かった。従順なロボットで、いて欲しくなかった。
「でも、ネネ別に満足してるし……」
それはきっと、ロボットとしての言葉だ。勿論、ネネはネネという一人の存在として喋っているのかもしれないが、飛鳥には、それが酷く悲しいものに感じられる。
「……そう、か」
飛鳥は、据わっている椅子の背もたれに体重をかけ、深く腰掛け直した。
飛鳥の悲哀に、ネネは全く気付かない。また一口クリームを口に運んだスプーンを咥えたまま、不思議そうに飛鳥を見つめて、可愛らしく首を傾げた。