ロボット少女がいる非日常(6)
「買い物行かない?」
日曜日の昼下がり。トイレから居間に戻った飛鳥が、そうネネに提案する。
「ふぇ?」
掃除洗濯を終わらせて、何もすることが無くなったネネは、姿勢悪く卓袱台に顎をつけて、テレビでバラエティ番組をつまらなそうに見ていた。
そんな中、飛鳥からの提案に、ネネはキョトンとした顔で飛鳥を見た。
「お夕食の準備には早いんじゃない?」
「いや、ちょっと遠出してショッピングセンターの方にさ。本とか、服とかちょっと欲しいなーって思って」
飛鳥の言葉に、ネネはちょっとだけ思案した後、目を輝かせて、ピョンっと勢いよく立ち上がった。
「うん! 行く!」
「よしゃ」
言って、飛鳥は箪笥から外出用の服を取りだした。さすがにジャージのズボンとTシャツ姿で買い物に出るのは気が引けるというものだ。
「歯、磨いてくる!」
飛鳥が着替える間、ネネが歯を磨く。平日の朝の風景である。
サッサと着替えて、メッセンジャーバッグを背負い、玄関の所で待っていると、洗面所からネネが出てきた。ホットパンツとTシャツ。何も履いていない脚は元気に白い肌を晒している。
「行こう!」
無駄にテンションが高いネネである。飛鳥がドアを開けて玄関から出ると、置いてあったサンダルに足を突っ込んで、ネネも外に出てくる。
鍵をかけながら、そういえば食材の買い物以外で買い物なんて行ったことないな、と今更ながらに思った。ネネの服装も、月代が小学校のころに着ていたものを頂いてきたものである。
ネネの服も買うか、と思案しながら歩き出すと、ネネが後ろから追いついてきて横に並んだ。
「えへへ、デートだね、デート」
ギュッと。飛鳥の右腕の肘のあたりに、ネネが嬉しそうに手をからませてきた。
しかし、これがデートだというなら、飛鳥は確実に犯罪者である。ネネは小学生に中学年程度にしか見えないのだ。妹にじゃれつかれる兄という絵面の方が数倍しっくりくるというものであるし、実際そういう設定であろう。
だから飛鳥は、別に振り解くことなどはしなかった。
エレベーターに乗って、一気に一階まで下りて、マンションを出た。
目的の場所は、最寄りの駅から一駅街の方に出た場所にあるのだ。
いつも学校に行く時とは反対の方向へと。
「それでね、それでね……どうしたの?」
いつものようにマシンガントークを繰り広げていたネネが、不思議そうな表情で飛鳥を見た。飛鳥が、歩きながらであるが後ろを振り返ったのだ。
「んにゃ。いつものやつだよ」
平日しか感じていなかった(というより休日はほとんど外に出ていないせいもあるが)見られている感覚が、今日に限って感じてしまった。
少し気持ち悪かったが、気にしてもしょうがない。バカバカしい、と飛鳥は肩をすくめた。