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二十章 頭を巡る過去 其二

十五歳になった私は黄金王ヴェルノーレの配下である黄金騎士になった。

だが、私は不死者(ふししゃ)という怪物に襲われ行方不明となったクラウスが見つかるまでの繋ぎとして叙任(じょにん)されただけだった。

領地も重要な任も与えられずクラウスを探すことだけを命じられた。

大きな地位を持つ黄金騎士のまま生きていたかった私はクラウスが行きそうな場所を避けて街を歩いた。

悪口を言われても何とも思わなかった。クズと言われようがカスと言われようが黄金騎士でいられ続けるならそれだけでよかった。

だが、他国との戦争が敗戦濃厚になると私に悪口を言う者すらいなくなった。

「敗戦濃厚とは・・・あぁ、クラウスがいてくれれば・・・」

「クラウスがいてくれればあんな小さな国相手に追い込まれることなどなかった・・・」

「クラウスが居ればこんなことにはならなかった・・・」

祖国ヴェルノーレを支えてきたの賢者たちの声を聴いた時、身を焼き焦がすような嫉妬心が私を再び襲った。

私は強烈なストレスから解放されるため酒に走った。

酒を飲んで酩酊した私はあろうことか逃げたり捨てられたりした奴隷たちが集まる無法地帯に入ってしまった。

そして、私はそこでクラウスに出会ってしまった。

「だ、大丈夫ですか?」

テルメスは崩れるように倒れたモニークを見て困ったように言った。

「うるせぇ!!奴隷の分際で・・・」

モニークはテルメスを見て怒鳴りながら立ち上がると剣に手をかけた。

「困りますよ、金色の騎士さん」

椅子に座ったクラウスは焼けたポテトを潰しながらそう言った。

「ク・・・ラウス」

モニークはクラウスを見て驚きながらそう言った。

「大人は起きていても、子供は寝ているんです」

クラウスは窯に生のポテトを入れながらそう言った。

「ク、クラウス・・・黄金王と賢者たちはお前を探している。私は騎士として、お前を王宮に連れていかねばならない」

「行きませんよ。ここでの生活があるので」

火箸を握ったクラウスはポテトの位置を調節しながらそう言った。

「王と賢者の命令だぞ?」

「知りませんよ。それに、もう黄金騎士の枠は埋まっているでしょう?」

クラウスは薪を追加しながらそう言った。

「・・・私の枠は本来お前のために用意されたものだ。私のことを思っての判断だというなら、私のことは気にしなくて良い」

「俺は今のままで幸せですから、姉上も幸せでいてください」

クラウスは焼けたポテトを取り出した。

クラウスは潰して練った芋を焼いて作るマルポネート・ポテトという食べ物を売って無法地帯の住民たちに愛されながら生活していた。

私は幸せに暮らすクラウスが許せなかった。

誰にでも愛されるクラウスが許せなかった。

だから、私はクラウスに向かって黄金騎士になれと言い続けた。

だが、クラウスは頑なに首を縦に振らなかった。

クラウスを誘い続ける私を見てテルメスが私に事情を話してくれた。

どうやら、クラウスは脚を壊してしまったらしい。

私は事情を聴いて安心した。

私はこれからも黄金騎士でいられる。そう思うだけで心が躍った。

私の話を聞いた王と賢者たちは酷く落胆していた。

救国の英雄は現れないのだと長々と語っていた。

脚を壊してしまうような奴が救国の英雄になるなどあり得るはずもないのに。

クラウスを発見した一週間後、祖国ヴェルノーレは敵国であるリウケール森林国(しんりんこく)に敗北した。

リウケール森林国は賠償や支配よりも無法地帯を重要視していた。

無法地帯の独立を認めるように迫られた王政は頑なに首を縦に振ろうとしなかった。

しかし、結局は権利の半分を失って祖国ヴェルノーレと無法地帯の関係は薄くなった。

私が十六歳になった頃・・・

次回

二十一章 頭を巡る過去 其三

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