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異世界冒険奇譚〜異世界行ったけどイージーじゃなかった〜  作者: ああるぐれい


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第五話

ますます寝れなくなってきた。そういえば、銃の残弾数をわかりやすくして欲しかったから、今から行こう。



◇◇◇◇◇◇



「すみませーん」

「おや、どうしましたか?」

「えと、残弾数をわかりやすくするのってできますかね?」

「お安いご用です。少々お待ちを」


そういって俺の手から、SPF9をもぎ取る様にして部屋の奥へと消えていった。

しばらくすると、照星の下に小さなモニターがついたSPF9が出てきた。


「こんな感じでよろしいですか?」

「はい、ありがとうございます」


部屋には戻らず、そのまま外に出る。試し撃ちがしたかったからだ。替えのマガジンも持ってきていることだし、存分に試そう。と言っても、モニターが残弾数と連動するかどうかの確認だから、そこまで時間もかからない。それに普通に連動しそうだ。だが、一応だ。


的になるものがないので、空に向けて撃つ。モニターに写っているのは30。一発撃ってみる。29になった。今度は連射してみる。一気に四回トリガーを引く。しっかり25になった。これでモニターが正しく作動していることになる。ところで、エネルギー弾って射程はどれほどだろうか。光にようにどこまでも飛んでいくのか?

それだったら、危なすぎる。まぁ、射程は有限だと思っておこう。



◇◇◇◇◇◇



「レイさんいますか?」

「どうしたんだい」

「武器作りのために材料集めに行こうかなって」

「危ないからやめておきなさい」

「いや、マキナを連れていくし、新しい武器も試したいなー、と思って」

「⋯⋯⋯⋯わかった。ただ、危ないことはしない様にするんだよ」

「当然ですよ」


レイは仕方なくといった表情で許可をくれた。しかし、マキナは今、どれくらい強いのだろうか。俺よりも強いのは当然だ。もしかしたら、リネよりも強くなっているのかもしれない。しかし、リネもクレルと戦ってから、狂ったように訓練を続けている。見てるこっちが心配になるぐらいだ。


やはりあの一件のせいだろう。


「マキナ、外行こう」

「はい」


およそ一ヶ月ぶりの外だ。相変わらず、街にはAIが闊歩していて、空には車のような飛行物体が飛んでいる。


「外は変わりがないですね」

「そうだな」


マキナは『レジスタンス』に逃げ込んで以来、外には出ていなかったため、懐かしいようだ。俺の武器はSPF9と短剣。マキナは丸腰だ。普通のAIよりかはだいぶ強いので、素手でも大丈夫だ。俺としては何か武器を持ってもらった方が気持ち的に楽だが。


「いた。あそこで1人で歩いてるヤツ。ああいうのを狙うぞ」

「私が倒してきて良いですか」

「もちろん」


俺の返事を聞くや否や、反重力機構を起動させてぶっ飛んでいった。そのまま、撫でるような手つきで頭をもぎ取る。まさに早業、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。


頭はマキナの化け物のような握力により圧壊され、粉々になった。そして、体は回収。完全犯罪だ。


しばらく待っていると、再びAIが現れた。


「今度は俺の番だぞ」

「わかってますよ」


ホルスターから、SPF9を取り出し構える。トリガーを引いた。瞬間、AIの頭が弾かれたようにブレる。やっぱりこちの方が安全だし、楽だ。動かぬ物体となった残骸に駆け寄り、傷を観察してみる。俺の放ったエネルギー弾はAIの装甲を完璧に撃ち抜いていた。思った以上の威力に頷いていると。


「私の武器が⋯⋯⋯⋯」


なぜかシュンとするマキナの姿。


「大丈夫。マキナはカッコいいし、可愛いし、オマケにエネルギー弾も撃てる。最強じゃん」

「いえ、そこまで言わなくても。言ってみただけですし⋯⋯」


俺の必死にフォローした努力を返してくれ。


「とりあえず、あと十体ぐらい持って帰って⋯⋯⋯⋯」

「人類ヲ排除シマス」


マキナとどうでも良いことを喋っているうちにAIが寄ってきたようだ。撃ち抜くために銃を構えようとすると、マキナがすでに攻撃を加えようとしている。その攻撃は、殴るでもエネルギー弾でもなく。ただ腕を天に向かって振り上げただけだった。


しかし、突如としてマキナの腕が変形した。前腕部分の上下左右から、鋭く太い漆黒の針が出てきた。それらが手の方向へスライドしていき、徐々に窄まっていく。スライド仕切った針は回転を始めた。簡単に言えばマキナの右手がドリルのようになった。


もしかして、これがマキナの新しい武器なのか!?


「あれ、なんですかね。これ」


あれぇ??

マキナも知らなかったらしい。一体、何年付き添ってきた体なんだ?


俺の疑問をよそに、マキナは気持ちを切り替え、攻撃を加えた。ドリルはAIの装甲を最も容易く貫いた。その勢いのまま、後ろにあったビルを削り取っていく。どうやら、掘削機能も搭載しているようだ。便利だな⋯⋯⋯⋯。


感心していると、根本を削られすぎたビルが立っていられる限界を迎え、倒壊し始めた。

慌ててビルに背を向け、一目散に走り出す。



「何してんだマキナ! とっとと逃げるぞ。くそ、隠密なはずなのに、どうしてこんなに目立っちゃうんだよぉ!」

「私のせいじゃなくて、このドリルのせいですよ」

「いや、明らかお前のせいだろ。つーかドリル仕舞え! 寄るな、削られそうで怖いから!」

「そんな酷いことこと言わなくても」


俺らはAIの回収も忘れて『レジスタンス』のアジトに逃げ帰った。


「酷い目に遭いましたね⋯⋯」

「一体誰のせいだろうな」

「それにしてもトウマさんって、あんなに慌てることってあるんですね」

「当たり前だろ。つーか、忘れろ」


今はとぼとぼと廊下を歩いている。せっかく外に出たというのに、なんの収穫も得ず、ビルを倒壊させたことのお叱りを2人揃って受けた後だった。


「汗かいたな。俺が先に風呂に入るから」

「背中、流しましょうか」

「良い。そんなこと軽々しくいうもんじゃないぞ」


洗面所とリビングルームの間にあるドアを挟んで会話する。


汗でへばりついた下着を脱ぎ去り、洗濯機に投げ入れる。この時の俺はさながらマイケル・ジョーダンだ。シャンプーとリンス、ボディーソープを手に取り、浴室に入る。


シャワーの蛇口をひねり、お湯を浴びる。体と髪を隅々まで洗う。最近、季節の変わり目になっているのか肌寒くなっている。なので、事前に沸かしておいた風呂に全身を沈める。吐息を一つして、目を瞑って体の力を抜いた。考え事をするにはうってつけのひとときだ。


⋯⋯⋯⋯一体、俺はいつになったら元の世界に帰れるのだろう。

よく異世界転生・転移もののライトノベルを読んでいたが、大体の主人公は元の世界に未練はないように思えた。どうしてだろう。あんな世界にはもううんざりしていたのか。

割り切っていたのか。はたまた、ホームシックに駆られないように思い出さないようにしていたのか。


元の世界に辟易していたとしても、残してしまった両親や、兄弟のことはどう思っていたのだろう。俺には兄弟がいないため、そこら辺はわからないが、親のことを思う気持ちはわかっているつもりだ。


大半は物語に関係がないため、描写を省いたって感じか。だとしても一ミリも考えないというのはおかしい気もする。


風呂でこんなことを考えても、意味がないからやめよう。


⋯⋯⋯⋯よし、決めた。


俺はこの世界で生きよう。元の世界のことは忘れて、ここで全力を尽くそう。母親が心残りだが、もう忘れよう。俺はこの世界に骨を埋める。そうじゃないと、この世界で全力で生きている人たちに失礼だ。


そう決心し、浴室から洗面所へと続くドアを開けた。浴室との温度差に体を縮こませながら、タオルを手に取る。服を着て、リビングに出る。


「何かあったんですか、トウマさん」

「何?」

「少し顔が明るいな、と」

「そりゃ⋯⋯⋯⋯もう吹っ切れたからな」

「お話を聞かせてもらっても」

「いや、これだけは秘密だな」

「そう言われると気になりますよ」

「いやいや、ほんとにしょーもないから。ほら、風呂入ってこいよ」


マキナは頬を膨らませながら、納得いかないといった表情で洗面所へと入っていった。

少し気分が軽くなった気がする。しかし、俺って顔に出やすいタイプなのか?

それにしても、マキナは最近風呂に入るようになった。体には自動で洗浄してくれる機能が付いているはずだが。やはり、風呂に目覚めたか。日本人の俺としては大変嬉しいことだ。


そんなことを考えているとマキナが風呂から上がったようだ。一つ、前から聞こうと思っていた質問をマキナにぶつけた。髪を乾かす手を止める。


「マキナ。前に俺とリネさんたちをボコボコにしたAIが言ってたんだけどさ。『探し物』って言ってたんだ。なんか心当たりとかある?」

「⋯⋯⋯⋯いえ、思い当たりませんね」

「そっか。ありがと」


再びドライヤーで髪を乾かす作業に戻る。マキナも知らないか。同じAIだから何か手がかりが得られると思ったんだが。もう一回クレルに会って話を聞かないとダメか?

今度あったらぶっ殺されそうだけどな。


しかし、探し物か。それが『マスターサーバー』にとって大事なものであるならこちらが先んじて確保しておきたいところだ。そうしたら、交渉を有利に進められるかもしれない。そもそも俺は戦争なんてしたくない。誰だって平和が一番なはずだ。


探し物のは三つの可能性がある。一つ目は、既に向こうが持っている可能性。多分ないけど。二つ目が、こっちが既に持っている可能性。確かめるには探し物がなんなのかを知る必要がある。三つ目が、既にこの世にない可能性。一番あって欲しくない可能性だ。


やはり、戦うしかないのか。戦いたくないけどなぁ。



◇◇◇◇◇◇



防具の試作品が出来上がったのことだったので、着てみることにした。スーツは流線型ではなく、しっかり凹凸があって、いかにもメカっぽい。主な色は白で塗装されていて、顔を覆うのは防弾ガラスより、強度が五倍ほどの特殊なガラスだという。元の世界にはそんなのはなかったと思う。 俺の知見が狭いだけかもしれないが。


装着の仕方は簡単。背中側がぱっくりとひらける仕様になっているので、そこから体を入れる。完全に装着すると、センサーが反応し、開いていた背中側のパーツが閉じていき、完全にロックされるようになっている。


ガラスは曇り防止、ヘルメットのようになっている部分は通信機が取り付けられている為、誰とでも連絡が取れることができるようだ。装甲の堅さはクレルにも負けず劣らず。


関節部分も滑らかに動く。それに、筋肉に伝わる電気信号を感知して、運動の補助もしてくれるハイテクっぷりだ。運動の補助があるので、生身で重いものを持つのと、このパワードスーツを装着して重いものを持つのも、力加減が段違い。聞いてみたところ、このパワードスーツは人間の運動の効率を30%もアップしてくれるという。


なぜか通信販売のような口ぶりになってしまったが、水素云々の滑稽な反応にならなかっただけでヨシとしよう。


俺的には、このスーツを着て、片手にSPF9を、もう片方に短剣を装備して戦うスタイルになる。まるで、どこかのゲームのキャラクターみたいだ。


注意点があるとすれば、これは充電式なので、いずれ動かなくなるという点だ。このスーツの重さは二十五キログラム。充電が切れると、蝶のように舞い、蜂のように刺す動きが、陸に打ち上げられたヒンバスになってしまう。


それだけに気をつければ、どこかへ飛び立ってしまう鳥のように動けるだろう。


歩く、走る、跳ぶ。どの動作一つとっても、重力が軽くなった気分だ。特にジャンプしてみると、一瞬ではあるが、無重力空間にいられるような浮遊感を味わえる。


「このスーツ、すごいですね!」

「そりゃ、俺らの知識、技術、趣味を総動員したからさ」


やはり趣味が入っていたか。⋯⋯⋯⋯あとは乗り物だけだが、流石に仕上がっていないか。いずれ俺たちの足となる存在だから、設計が練りに練られているのか?

まだ時間はある事だし,気長に待つのも良いけど、できるだけ早めに見て、修正できるところは修正しておきたい。その方が事故も起こりにくいはず。


しかし、どのような仕上がりになるだろう。やはり金田バイクのようになるのか。ただ、タイヤは無くすと言っていたから、どうなるのか読めない。


「トウマ、一応バイクはできたから見てくか」


そんなことを考えていると、ガルから声がかかった。

噂をすればと言うヤツか。「すぐに行きます」とだけ返事して、いそいそとパワードスーツを脱ぐ。脱ぐ時は、左の前腕部分にタッチパネルが付いている。それの『脱出』という少しニュアンスが違うようなボタンを押すと、スーツの背中の部分が開く仕組みになっているようだ。


スーツを返しておき、ガルの後ろをついて行く。


「そういやぁ、さっきのスーツは何なんだ?」

「自衛隊の人達が作ったパワードスーツです。あれ、めちゃくちゃすごくて、人間の運動効率を30%あげるんですって」

「そりゃすげえな。だが、オレんとこも負けてねえぞ」


そう言ってバイクを見せてくれた。確かにバイクにはタイヤが付いていなかった。その変わりに、スノーボードのようになっている。ただ、バイクは地面に着いたままだ。


「浮いてるんじゃないんですっけ」

「いや、一応これでも5ミリほど浮いてるぞ。ドラえもんのよーにな」


そう言って、ガルは親指と人差し指でほんのちょっとの隙間を作る。


「でも、これじゃ走れないんじゃ⋯⋯」

「まだ起動させてないからな。ほれ、跨がってみい」


言われるがままにバイクに跨る。バイクならある程度の知識はある。多分、従来のバイクと同じような操作方法だろう。


右ハンドルにあるボタンを押す。すると、バイクがにわかに浮き上がった。


「クラッチは⋯⋯」

「あるわけ無かろうが」

「ですよね」


右ハンドルを静かに回す。わずかだが、バイクが前進した。自分が巨大な機械を動かしていると思うと、ワクワクする。


「これで良いので生産しておいて下さい」


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