第四話
あの調査から一ヶ月ほど経った。
「今から、持ち帰ったAIをどうするか検討する」
「研究材料にするのでは?」
「確かにそうだ。だが、思いの外AIが余ってね。何かに活用したいんだ」
ふむ、そう言うことか。というか、なんで当たり前のように俺が会議に参加しているんだ。別に良いけど。信頼の証だし。
「だったら、武器や防具、乗り物などに活用してみては」
「それも考えたんだが、なかなかそっち方面の知識に明るい人材がいなくてね」
俺も特に機械に詳しいわけではない。役に立てるなら喜んで馬車馬のように働くのだが。
「⋯⋯それって、戦闘員だけでですか?」
「ああ」
「なら、民間人の方にも当たってみては良いんじゃないですか。民間人の方が人数が多いわけだし、機械に詳しい人もいると思いますよ」
「⋯⋯⋯⋯そうだな。レオ、機械に詳しいやつを集めてきてくれないか」
「はい、わかりやした」
「私はあまり機械に詳しくないから、そっちで上手くやっておいてくれ」
◇◇◇◇◇◇
「全員集めてきたぞ」
全員顔を知らないな。
「えと⋯⋯とりあえずお名前を」
「オレの名前はガルってんだ。後ろにいる奴らはオレの部下だな」
「お仕事は何をされてたんですか」
「主に、バイクや車の修理だな」
よし、使えそうだ。
「そっちの方は」
「アツシです。主にプログラミングをやってました。特にお役に立ちそうにありませんが」
アツシは脇にノートパソコンを抱えている。あれが商売道具なのだろうか。
「ガルさんたちにはAIの装甲を使って、乗り物を作って欲しいんです」
「おう、任されたぜ」
「アツシさんは⋯⋯⋯⋯」
どうしよう。何をさせれば良いのか分からん。
「別に、無理しなくて良いですよ。必要な時に呼んでくれれば」
「わかった。ありがとう」
武器とかは軍に務めていた人たちに作って貰えばいいだろう。とりあえず、今はこんな感じで良いな。俺は乗り物にはあまり詳しくないが、武器の方には少しだけ知識がある。厨二病を拗らせた時に仕入れた知識である程度はできるはず。
「レオさん、武器の方も作っては」
「そうだな。だが二人ではどうにもならんぞ」
「そこは軍服していた人に頼んで知恵を貸して貰えば良いでしょう」
「わかった。集めてくる。お前はそこにいろ」
数分後、レオが二人を連れて戻ってきた。
「軍の中でも武器、防具系統に詳しいやつだ」
名をリュカとケンというらしい。格ゲーにいそうな名前だ。
「何か欲しい武器ってあるのか」
「そうですね。AIは変なレーザーを撃ってくるので、それに対抗できる遠距離武器が欲しいですね。普通の銃だと、効きが悪いので」
「だったら、AIのレーザーを出す機構を流用して、レールガンみたいなのを作ってみては」
「おいケン、生産コストはどうなる」
「どれくらいのAIの数があるんだ」
「ざっと二百は」
「だったら、拳銃にするのもありだな」
「後防具も作りたいのですが」
「防具はどんなのにするつもりだい」
「イメージとしてはスーツみたいな感じに」
もっと言えばパシフィック・リムの搭乗スーツみたいなヤツだ。普通のAIだとしても、アスファルトを貫通するぐらいの威力を持っているから、武器よりも先に防具を作る必要があるな。あれさえあれば、完全に防げるまでいかなくとも、軽減はできるはず。
「なら、拳銃型だな。弾はAIが出すエネルギー弾みたいなやつだ。だから普通の銃より弾数も多いし、反動も激減するはずだ。こんな感じで良いか」
「それでオッケーです」
良い感じに案がまとまった。後は乗り物の方だが⋯⋯⋯⋯。
「こっちも終わったぞい」
「どんな感じに出来ましたか?」
「バイクのようにして、タイヤはつけない。地面が悪くなる想定だからな。代わりにAIについている反重力機構を採用した。これで地上五十センチの高さで飛べる。んで、一応二人乗りできるような感じだな」
面白くなってきたな。後は足りなかったら逐次補充するって感じで良いな。
「じゃあ、今日はこれで。制作の方、頑張ってくださいね」
「「うす」」
◇◇◇◇◇◇
今、作っている最中ということなので、見学させてもらうことにした。
バイクの方はパーツの形を3Dで模型を作り出し、それを参考に作っていく方法をとっている。流石にガルのところの人だけでは労働力が足りないので追加で人を補充してもらう。
AIの装甲は加工しやすく硬いという、夢のような素材でできているらしい。しかし、これは『マスターサーバー』が作り出した素材らしいので、詳細はわからないらしい。が、着々と形作られている。
俺的には金田バイクのようなフォルムが良い。あれは全男子の琴線に触れる代物だと思っているからな。
しかし、この世界にはAKIRAは存在しているのか? スター・ウォーズがあるならばAKIRAもあって良いはず。もしなかったら日本のアニメ映画のクオリティは著しく低いだろう。これは人類にとっての損失だ。それに作者も存在しないことになるのなら、「もう終わりだよこの国」と言っても過言では無い。
って、何を考えているんだ。今は集中しないと。この技術元の世界に持って帰れないのだろうか。後で教えてもらおうと決心していると、後ろから肩を叩かれた。
武器を製作しているグループの1人だった。手には拳銃が握られている。
「これ、試作品ができたので使ってみてください」
「いやいや、俺、銃の撃ち方なんて知らないですよ」
「リネさんがアサルトライフルを使ってたと言ってましたが⋯⋯?」
「それは適当に撃ってただけで⋯⋯。なら、正しい打つ方教えてくださいよ」
「ええ、もちろん」
銃を渡してもらい、別の場所に移動した。
もらった銃を両手にもつ。
「まず、両目を開けて、照星を覗いてもらって⋯⋯⋯⋯そうそう。利き手が右手なら、右手の指でトリガーに指をかけて、左手で右手を下から包み込む様に持つ。それから横のセーフティーを外して、トリガーを引く。これで撃てるはずですよ」
その言葉を受けて、トリガーを引いた。一度抵抗があったものの、少し力を加えると、すんなりと球が発射された。AIと同じく、黄色い光を撒き散らしながら飛んでいくエネルギー弾だ。狙ったところに着弾し、その部分が大きく抉れ、黒く焦げた。
「反動が少ないですね」
「そりゃもちろん。ただのエネルギー弾ですからね。火薬を使っている普通の銃と違って反動も少なくて初心者にも使いやすいはずです。それにこの銃はSPF9をモデルとしていて、自衛隊御用達ですから、取り回しもしやすく、安価で生産も容易なのです。また、SPF9の欠点でもある装弾数の低さですが、弾をエネルギー弾にしたことにより従来のタイプより大幅に装弾数もアップし、なんと十七発だったのが三十発。三十発ですよ! すごいと思いませんか!?」
次々と流れ出してくる知識の洪水に引き攣った笑みを浮かべる。まさかこんなに熱弁されるとは思わなかった。自衛隊御用達なら大丈夫だろう。そう思い、未だ熱弁を振るう男にこれを生産しておいてくださいとお願いしておいた。
銃も奥が深いのだなぁ。
感じながら手元にあるSPF9の改造版を見る。よく見ると、トリガーに小さいトリガーのようなものがついている。確か、トリガーセーフティーがなんちゃらと言っていたような⋯⋯。多分トリガーを引いた時に手に伝わった抵抗はこれのせいだろう。弾は三十発と言っていたな。⋯⋯⋯⋯もう少し練習するか。
再びトリガーに指をかける。先ほどの傷に狙いを定めて引く。発射されたエネルギー弾は過たず着弾した。今度は少し位置をずらしてから構えた。三度撃つ。今度も正確に着弾した。今度は連射する。一気にエネルギー弾が飛翔し、壁にぶつかって弾け飛ぶ。
「おもしろ⋯⋯」
調子に乗って、走りながら発砲する。少し狙いがずれてしまったが、許容範囲内だ。今度は前転し、立ち上がってから狙撃。しゃがみながら、寝そべりながら、ジャンプの途中に撃ったりしていると、弾が切れていた。
マガジンを替えようと、グリップの下部に手を掛けて引き抜く。が、ビクともしない。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯そういえば、マガジンってどうやって交換すれば良いんだ?
普通に引き抜こうとしても動かない。なんだ、横にスライドさせれば良いのか?
しかし、スライドさせるスペースなんてどこにもない。くそ、ちゃんと説明を聞いておけば良かった。専門用語ばっかりだったから、全ての情報を右耳から左耳へとスルーパスしてしまっていたことに後悔する。
しばらくあれこれ探していると、グリップの下部に一つのボタンを見つけた。それを押してみる。すると、あれだけ動かなかったマガジンが自重でポトリと落ちた。
「はぁ!?」
◇◇◇◇◇◇
替えのマガジンを二個ほどもらい、いつもの部屋へと戻る。
「マキナー、帰ったぞー」
「お帰りなさい、トウマさん。⋯⋯⋯⋯その銃どうしたんですか」
「これ?⋯⋯俺たちの新しい武器だよ。AIのエネルギー弾を撃つ機構を流用したんだってさ。ほんと、器用なことするよなぁ」
そう言って、SPF9を弄ぶ。
「私の存在意義が⋯⋯⋯⋯」
「いやいやいや、マキナはいてくれるだけで十分だよ。そもそも、マキナがAIってバレたらダメだし!!」
「そうですか⋯⋯」
マキナって意外とメンタル弱いのか。そもそも、AIが存在意義を心配することってあるんだな。ま、それは感情を持つマキナだけだろうな。
こんな時に気が効く言葉が思いつかない自分が憎たらしい。
未だしょんぼりしているマキナに言葉をかけた。
「あーっと、マキナは俺より強いし、頭も良いじゃん?」
「それもそうですね!」
「そこはちょっとは否定してほしかったかな」
とりあえず、マキナが立ち直ったことだし、ヨシとしよう。
替えのマガジンを見ると、細かく線がついていて、その線の間に黄色い光が蓄えてられている。光の数は三十個、装弾数ちょうどだ。これが残弾を表しているのだろう。
試しに一発撃ってみる。暗がりの空に向けてトリガーを引く。すぐにマガジンを引っ張り出して確認、予想通り光が一つ減っていた。
しかし、マガジンを見ないと残弾数が確認できないのは少し不便だ。慣れている人は感覚や数えるからわかるのかもしれないが、素人には戦闘中に数える暇なんてない。
ましてや、感覚なんて短期間で養えるわけがない。
あとで銃のどこかに残弾数が表示してくれるように改良して貰うか。
「明日、一緒に外に出ような」
「なんでですか」
「いや、部品が足りなくなってもあれだから、補充しにAIを狩りに行こうかなって」
「私たちだけで出ても大丈夫ですかね」
「大丈夫、明日許可もらってくるから」
マキナはもう寝るそうなので、部屋の電気を消す。それに釣られて、俺もベッドに入る。目を瞑っておよそ十分、全く寝付けない。ウトウトすらしない。おかしい。なんでだ。
マキナはもう寝ている。ぴくりとも動いていない。そういえば、AIって寝るのだろうか。前にも疑問に思ったことだが、今が検証する時かもしれない。⋯⋯夜這いって勘違いされないかな。⋯⋯⋯⋯大丈夫か。
ベッドから慎重に抜け出し、抜き足差し足でマキナに近寄る。気分はコソ泥だ。マキナは俺に背中を向けている状態で寝ているため、周りこむ必要がある。床が軋んで音を立てないように細心の注意を払いながら歩いた。十分近づいて顔を覗き込む。マキナはあどけない寝顔をしていた。しかし、時たま「むぅ」とうなり、顔を顰めている。何か嫌なことを思い出しているのだろうか。
寝顔を見ていると、母親を思い出した。小さい頃の俺の寝顔を写真に収めていた母親はことあるごとに、その時の写真を見せてきて、「可愛いでしょ!」と自慢してきたものだ。
あぁ⋯⋯⋯⋯家に帰りてぇな。母親に会いたい。帰らなきゃ。俺をいじめてきたヤツはここには存在しないけど、俺の両親はいるのはあの世界だけだ。でも、どうやって帰れば良いのか。何か帰る条件があるのだろうか。それを模索しようしても、見当もつかない。
この世界で生きていくしかないのか?
それともこの世界を救えばいいのか?
そんなこと俺にできるのか?
誤字・脱字報告を受け入れているので送ってくれたら嬉しいです。




