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真相の片鱗

 こんな事でめげるわたくしはないわ!

 

 魔力がなくなって落ち込んだのは……レベンディス様にそれを告げなければいけなかったあの日だけ。

 わたくしが犠牲になることで、何かを得られるなら喜んで差し出すわ。例えレベンディス様を選ぶことが出来なくなったとしても。

 確かに()()()()()()お父様やお母様には申し訳ないと思うけど、前世庶民のわたくしには出来ないことなんて正直ないもの。体調が安定するまでに結構時間がかかってしまったけど、ようやく学園にも戻ってこれたし最高学年として卒業目指して頑張りましょう。


 

「おっ! やっと復帰したね」

「リオス先生! その節は大変お世話になりました」

「礼を言わなければいけないのは私の方だよ。放課後少し話をしても?」

「もちろんです、わたくしも丁度お伝えしたい事がありましたので職員室に伺います」

「その時、アヤネ・シエラ嬢も連れてきてほしい」

「わかりました」


 授業を滞りなく済ませ、アヤネ様と訪れた職員室。

「放課後に呼び出してすまなかったね。二人共そこに座って」

「話の内容は何となく想像つきますわ……。結局原因は、ピンクのクッキーではなくて?」

「えっ……ピンクのクッキーって……」

「ヴィオレティ様の洞察力には恐れ入るよ。ゲーム内ではヒロインのみが使える好感度上げに使うアイテムだ。アヤネ嬢には馴染みのものだろう?」

「……待って、ゲームって……リオス先生、はかラブ知ってるの? もしかして転生者!?」

「まぁ! リオス先生まだ話してなかったのね」

「アヤネ嬢と二人きりになる機会もないでしょう? それはあとで話すとして、問題は王城内でそのクッキーが出回ってた事だ。アヤネ嬢はフリオス殿下や数人の生徒に渡すために作ってたみたいだけど今は全く作ってないだろ?」

「……作ってないよ。レベンディス様は登場したし、それにフリオス様がヤンデレっぽくなっちゃったし」


 しばらく作ってないクッキーが出回るのはどういうことかしら。

「アヤネ様以外の誰かが作ってるの?」

「調べたら、違法薬物所持の貴族と商人に共通する人物がいた。……シエラ子爵だ。しかも、マクリス公爵と過去の事件を洗っていたらヴィオレティ様が幼い頃に倒れた毒物も今回の違法薬物と成分が一致した」


 ここからはリオス様の推測だそう。

 アヤネ様の作るクッキーに不思議な力があると知った子爵が利用しようと研究してたんじゃないか。自分たちの開発した違法薬物には魔力を吸収して弱らせる成分はあっても、陥れる程の威力はない。そこでアヤネ様の作った不思議なクッキーに混ぜ合わせる事で毒性が高まり、魔力切れを起こす程の代物を作り出してしまったのではないかと……。

「今、そこも含めて調べてる」

「あのクッキーの成分はお庭の葉っぱだから……確かに叔父様なら簡単に手に入るし、お庭の葉っぱ取る所で何度も話しかけられた……」

「でも子爵達がそんな事をして何のメリットがあるの?」

「俗に言う派閥問題だ。現王とカフェア殿下のやり方に反発してる逆賊が、フリオス殿下を利用して政権を交代させようとしてるんだ。金の回りや支配欲を高めたいんだろう」


 どこの世界にもいるのね。

 宗教戦争、領土拡大、独裁政権……。国が良くなるための戦いなんて、所詮自分勝手な言い訳だけ。それにしても、フリオス殿下を仮に王太子にした所で何か出来ると思ってるのかしら。あのポンコ……いえ、出来損な……いえ、人を導ける力量のない人を持ち上げて何をしたいのだろう。

 

「どうやら、王太子になったら結婚は自由にして良いと吹き込まれてるようだぞ?」

 …………思わずアヤネ様を見てしまったわ! しかもリオス様も!


「いやいやいやいやいや、私フリオス様と結婚とか絶対しませんから!」

「……と言うことは、どうなるの? 好きな人と結婚出来ると思って悪事に手を染めて王太子になったのに、好きな人と結婚出来ないなら……やる気でるのかしら?」

「さぁ〜……でも、あの様子だと諦めそうにないけど」


 それに、わたくしの魔力がなくなったなら、さっさと婚約破棄すればいいのに……一向に気配もない。婚約破棄したところで違う令嬢を当てがわれるくらいなら、都合の良い切り捨て役のわたくしが婚約者になってた方が良いってところかしら。


「とりあえず、シエラ子爵は監視対象として見張りが付けられた。それに、レベンディス殿下のゲートのおかげでクッキーの持ち込みも違法薬物もなくなって患者も減った。同じ状況になることはもうないでしょう」


 ――――――――――


「リオス殿……私は無力だ……」

 ヴィオレティ様が倒れたあの日から、憔悴しきったレベンディス殿下と回復を見守った。

 目を覚まさない彼女を見つめ手を握り締める殿下は、項垂れながら何度も何度も名前を呼んだ。まさか目の前の点滴で魔力を奪われているとも知らず。


 目が覚め、ヴィオレティ様自身に起こった事実を受け入れたか否か……レベンディス殿下は留学を取りやめ自国へ帰られた。

「私は諦めたりしない。フリオスを許しはしないし、ヴィオレティの魔力も元に戻して見せる。今は自分の手で守れないヴィオレティを……どうか守ってやってほしい……頼む」


 帰り際、俺のそばで言った言葉が頭から離れない。

 殿下が戻られるまで何としてでも守る。魔法士団長を退任し、学園の講師として常勤する事も受理された。


 そして俺はいずれ土下座をしてレベンディス殿下に謝罪しなければならない。……今は伝えられない事柄も多いが、理解してくれるだろうか。いや、最悪切り殺される覚悟もしなければいけないかもな。


 みんながヴィオレティ様を救いたいと願った。

 ゲームと全く異なるストーリーになったが、決してバッドエンドなんかにさせるものか。まずは、今も逃げる子爵の行方とフリオスの証拠集めだ。

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