第8話 久遠のきらめき
星しらべの夜から三日たった。
王宮の中庭で、ロアードは彼女を待っている。
黒衣の上に白銀のマントを羽織り、夜風に髪をなびかせている。
星空の守護者。
そんな姿であった。
「遅くなりました。ごめんなさい」
シフォンヌが駆け寄ると、ロアードは微笑みながら首を振る。
「待つ時間も好きです。あなたが来るまで」
トクンと鳴る胸に、シフォンヌはまだ慣れない。
彼女は竪琴を差し出した。
「お母さまの、最後の旋律を見つけました」
ロアードは目を細める。
「聴かせてくれる?」
シフォンヌは頷き、そっと弦を弾く。
音が夜空に溶けて、空気はどんどん澄んでいく。
旋律は、これまでよりも柔らかく、温かい。
やがて、ロアードが笛を添える。
二人の音が絡み合い、天空へ飛翔する。
風が吹く。
星が瞬き花びらが舞う。
それは母の魂が、音に導かれて舞い降りたかのようだ。
最後の音が消えた瞬間、シフォンヌの頬に、一筋の涙が伝わった。
それは悲しみではなく、祝福の涙。
「これが……真実の、星しらべ」
ロアードは両手で、シフォンヌの手を包む。
「あなたの声が、母上の祈りを完成させたのだね」
二人は見つめあう。
星々は静寂の光を落とす。
「ロアード様……」
「もう『様』は、いりません」
彼はシフォンヌの髪を撫でる。
「シフォンヌ。僕は王族というものに、長い間捕らわれてきた。でも、あなたと出会って初めて、自分の音を奏でられた。もしも、許されるならこれからは、あなたと同じ旋律の中で生きていきたい」
ロアードの言葉は、誓いのようであった。
シフォンヌは頷く。
「私も、私もあなたの音とともに、生きていきたい。たとえどんな運命が待っていても、もう恐れません」
三年後。
星しらべの夜。
王都の舞台に立っていたのは、竪琴を抱いた王妃と、笛を奏でる国王。
二人の姿を見た人々はこう呼んだ。
「二つの星の結婚式」と。
シフォンヌの唇から紡がれていく音は、母が残した祈りの続き。
星々は祝福の輝きを与える。
ロアードはシフォンヌの手を取り、聴衆に宣言する。
「わたしたち二人の音が、王国のしらべとなる!」
シフォンヌも続く。
「二人の旋律は、この王国中に愛を届けます」
祈りは母から娘へ、そして未来へと受け継がれた。
その後。
王国では語り継がれている。
夜空には、竪琴の形をした星たちが並んでいると。
それは幸せのしらべを奏でる、母と娘の星――
本編完結です。
あとちょっと、番外編があります。
ここまでお読みくださいました、本当にありがとうございます!
下にある☆を★に変えて下さいますと、星しらべの音が聞こえてくる!
ような気がしますm(__)m




