第7話 贖罪への道のり
どうやって広場を抜け、自邸まで辿り着いたのか、アニーカは覚えていない。
気が付けば自室の床上で、蹲って震えていた。
なんで
なんで
なんで
なんで!!
すべて上手くいくことを、微塵も疑っていなかった。
だって今までが、上手くいっていたから。
運よく、子爵家に入りこめた。
邸も重厚な家具も、ドレスや装飾品も、アニーカのものになった。
シフォンヌの部屋を奪って、彼女は屋根裏へ押し込んだ。
音楽の才能だって、シフォンヌに負けていなかった。
だってシフォンヌの声は、美声じゃなかったもの。
シフォンヌの婚約相手だったサイネスも、アニーカの手を取った。
アニーカの美貌と歌声に、引き寄せられたのだ。
でもアニーカの視線は、伯爵家よりも、もっと上の爵位を見ていた。
アニーカは、星しらべの夜に賭けた。
王族や高位貴族も出席するし、優れた歌い手は爵位に関わらず、宮廷楽団に所属出来る。
だから――
頑張ったのに。
練習なんて嫌いだけど、今回は一生懸命やり遂げた。
親戚なんだから、シフォンヌの楽譜を借りても良いだろうに。
誰もがシフォンヌよりも、美しいと言ってくれるのに!!
なんで
なんで
なんで!!
――ずっと憧れの存在だったあのロアード様は、シフォンヌの手を取ったのよ!!
アニーカが引きこもって、ぶつぶつ独り言を言っている間に、王宮はオルランス子爵家の正統な後継者がシフォンヌと周知した。
それに伴い、アニーカの両親は領地に隔離され、子爵を名乗ることは禁じられた。
長らくシフォンヌを虐げていた証言が多数あり、向こう十年、シフォンヌへの賠償金支払いも命じられたのだ。
婚約者だったサイネスと彼の家は、アニーカを助けなかった。
むしろ騙されていたと被害者ぶって、慰謝料を求めてきたほどだ。
「俺は、アニーカに騙されていた!」
とはいえ、アニーカと一緒になって、シフォンヌを貶めていたサイネスの姿は、多くの人に目撃されており、伯爵家が新たに婚約者を迎えようとしても、それを受け入れる家はない。
アニーカは両親と一緒に、領地に行くつもりでいた。
王都の社交界では、アニーカの悪評が広まって、消える気配がない。
しばらくは田舎で過ごすしかないだろうと。
だが、王宮のアニーカへの命令は、王国の北の山地に建つ、修道院へ入れというものだ。
なんで!
どうして!
わたくしは、そんなに悪いことをしたというの!?
何週間もかけて、アニーカが辿り着いた北の山には、深い霧がかかっていた。
さっくりとした「ざまあ」でゴメン。




