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声を失くした令嬢が、宮廷楽士様と一緒に、聖なる竪琴を奏で奇跡を掴む  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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8/10

第7話 贖罪への道のり

 どうやって広場を抜け、自邸まで辿り着いたのか、アニーカは覚えていない。

 気が付けば自室の床上で、蹲って震えていた。


 なんで

 なんで

 なんで

 なんで!!


 すべて上手くいくことを、微塵も疑っていなかった。

 だって今までが、上手くいっていたから。


 運よく、子爵家に入りこめた。

 邸も重厚な家具も、ドレスや装飾品も、アニーカのものになった。

 シフォンヌの部屋を奪って、彼女は屋根裏へ押し込んだ。


 音楽の才能だって、シフォンヌに負けていなかった。

 だってシフォンヌの声は、美声じゃなかったもの。


 シフォンヌの婚約相手だったサイネスも、アニーカの手を取った。

 アニーカの美貌と歌声に、引き寄せられたのだ。

 でもアニーカの視線は、伯爵家よりも、もっと上の爵位を見ていた。



 アニーカは、星しらべの夜に賭けた。

 王族や高位貴族も出席するし、優れた歌い手は爵位に関わらず、宮廷楽団に所属出来る。


 だから――

 頑張ったのに。


 練習なんて嫌いだけど、今回は一生懸命やり遂げた。

 親戚なんだから、シフォンヌの楽譜を借りても良いだろうに。

 誰もがシフォンヌよりも、美しいと言ってくれるのに!!


 なんで

 なんで

 なんで!!


 ――ずっと憧れの存在だったあのロアード様は、シフォンヌの手を取ったのよ!!



 アニーカが引きこもって、ぶつぶつ独り言を言っている間に、王宮はオルランス子爵家の正統な後継者がシフォンヌと周知した。

 それに伴い、アニーカの両親は領地に隔離され、子爵を名乗ることは禁じられた。

 長らくシフォンヌを虐げていた証言が多数あり、向こう十年、シフォンヌへの賠償金支払いも命じられたのだ。


 婚約者だったサイネスと彼の家は、アニーカを助けなかった。

 むしろ騙されていたと被害者ぶって、慰謝料を求めてきたほどだ。


「俺は、アニーカに騙されていた!」


 とはいえ、アニーカと一緒になって、シフォンヌを貶めていたサイネスの姿は、多くの人に目撃されており、伯爵家が新たに婚約者を迎えようとしても、それを受け入れる家はない。


 アニーカは両親と一緒に、領地に行くつもりでいた。

 王都の社交界では、アニーカの悪評が広まって、消える気配がない。

 しばらくは田舎で過ごすしかないだろうと。


 だが、王宮のアニーカへの命令は、王国の北の山地に建つ、修道院へ入れというものだ。


 なんで!

 どうして!

 わたくしは、そんなに悪いことをしたというの!?


 何週間もかけて、アニーカが辿り着いた北の山には、深い霧がかかっていた。

さっくりとした「ざまあ」でゴメン。


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