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闘神の一族

「つまり、子どもと遊んでたらバラバラにされたと」


 何やってんだこいつ。……と言うか、一応曲がりなりにもサイボーグのZZをバラバラに出来るのか、ここの子供。

 と、八歳位の子がZZへと駆け寄り、その体を砂場のようにして遊び始めた。楽しそうだ。


「ZZお前もう少し遊んでやれよ。気に入られてるぞ」

「おれも結構面白い!」

「お、おう」


 力強く言われたが、俺には分からん。相変わらずこいつはどこか大物な雰囲気がある。

 さて、この様子を見るにZZは多分大丈夫だろう。しかし、もう一つ懸念がある。

 アダムだ。

 あの性格ひん曲がったプライド激高マシーンがトラブルを起こさないとは思えない。何かやらかす前に見つけなくては。


 この時点まで、俺はめんどくさいくらいに考えていたが、少しして、厄介な事に考えを改める事となった。


「アダム―、どこ行ったー?」


 見当たらない。苺さんの家は全部探したし、捜索範囲は既に村の中にまで広げている。しかし、アダムの姿が無い。

 もしや既にトラブルを……と鳥肌が立つが、アイツがやらかすと確実にとんでもない音が鳴る。それが無い以上、まだ何も無いと思いたいが……


「あっ」

「あっとと、すみません」


 考えながら歩いていたせいか、前から来た人にぶつかりそうになってしまった。もう少し端の方を歩こう……

 そこで顔を上げた俺の視界に入った物は、苺さんと瓜二つの顔をした、赤髪の女性であった。


「……石榴さん?」

「へ? はい、そうですけど……初対面です……よね?」


 思わず声が出てしまった。俺が一方的に写真で知っているだけだ。向こうは間違いなく知らない。


「あ、いや、苺さんが、その……あなたの事をよく言っていたので……」

「お姉ちゃん帰ってきてるんですか!?」


 すごい勢いで胸倉を掴まれ詰め寄られる。力が強い! 体浮き上がってるんだけど!?


「あ、すみません……それで、お姉ちゃん……苺は、帰ってきてるんですか?」

「はい……いまは多分家に──」


 そう言った瞬間、爆ぜるような音と倒れかける程の振動を立てて石榴さんが消える。足元の亀裂を見る限り、すごい速度で走っていったようだ。

 ……めっちゃ人出てきたな。流石にさっきのは迷惑だったらしい。


「ご迷惑おかけしました」


 頭を下げてその場を離れる。まさか石榴さんと会うとは。あんまり話さなかったが、悪い人では無さそうだ。後で会いに行こう。

 しかし、今はアダムを探すことが優先だ。俺の好奇心よりもアイツの掛ける迷惑の方が優先度が高い。




「お姉ちゃん、いつ帰って来てたの?」

「え、えっと……今さっき……」


 詰め寄る石榴に、苺が怯む。体格に顔立ち、髪の色を除いてことごとくが生き写しの二人だったが、巨大な差異があった。

 気の強さだ。


「私の成人式、見に来てくれたのは嬉しいけど、来るなら何か連絡してほしかったな。……と言うか、忍者の里って勝手に抜けるの禁止じゃ無かった?」

「き、禁止だけど……石榴の、成人式見たかったから……」


 石榴が大きく溜息を吐き、苺が体をビクッと震わせる。


「お姉ちゃんさあ……いくら何でも迷惑かけすぎじゃ無い? どうせ道中で追手わんさか仕留めて来たんでしょ? 向こうは決まりに従ってるだけだろうし……」

「うぅ……」


 半泣きで石榴の言葉を聞き続ける苺。既に落ち込むどころか底をぶち抜いて自己嫌悪の段階へと入っている。しかし、石榴はその逃避も許さない。


「お姉ちゃん、自分の世界に逃げ込んでないで、ちゃんとこっち見て?」

「ヒッ」


 苺の喉が奇妙な音を立てて息を吸う。蒼白の表情と頬を伝う脂汗。半ば以上過呼吸を引き起こしかけている状態だが、石榴の追及は止まない。


「それに、私らみたいなのだけならまだしも、完全に一般の人まで巻き込んでるじゃん。どうするの?」

「ど……どう…‥って……」


 混乱した頭はまともな答えを返さない。苺の脳裏にただ自分を追い詰めるだけの言葉が無数に去来し、増々自分を苛んでいく。

 その間、答えを出せないまま混乱する苺を、石榴はただ見つめていた。

 目は話さず、かと言って助け舟を出すことも無く、ただ待ち続ける。その行為が、苺の罪悪感を刺激し、精神を増々すり減らしていくのだ。


「……えっと、えっと……」


 苺は考える。巻き込んだ民間人を助ける方法を。自分達の様な外れた場所から押し戻す手段を。

 そして、一つの結論を出した。


「……護衛、する?」


 しかし、石榴はその答えに大きく息を吐いた。再び苺が体を震わせる。


「護衛って、いつまでするの? 忍者の掟破って、その支援させて……お姉ちゃんはこの村にいるから大丈夫だけど、あの人達は違うでしょ。それとも、ずっと護衛でもするの?」


 苺は俯く。そんなことは現実的に考えて不可能だからだ。

 忍者は掟を破った者を逃さないだろうし、それに加担した者も許されない。XXX達は延々と襲撃に怯える事になる。例え護衛を続けたとしてもまともな生活は続けられないだろう。


「お姉ちゃんのことだから、手伝うって強く言われたら断り切れなかったんだろうけど、今回は明らかに良くないよ。……成人式、来てくれたのは本当に嬉しいし、久々に顔が見れて喜んだけど……やらかしの方が大きいから素直に喜べないよ」


 その言葉に、遂に限界が来た苺の目から涙がこぼれだす。それは後悔の涙だ。

 自分の判断で、親切な人たちを血生臭い世界に巻き込んでしまった事、そしてそこまで考えが追い付いていなかった事、その上で甘い判断をしてしまった事……ありとあらゆる後悔が詰まった涙があふれ、苺の視界を歪ませる。

 それでも、今しなければならない事を間違える程彼女は鈍くない。


「謝りにいかないと……」


 フラフラと幽鬼の様に、しかし、どこかに覚悟を決めたような雰囲気を伴って苺が立ち上がる。それを見て、石榴が小さく溜息を吐いた。


「私も付いて行く。まずはお礼言わないと。……その後は、お姉ちゃんが決めてね。私も、手伝うから」


 こくり、と苺がうなずいた。命を、人生を掛ける覚悟はできている。そこに妹を巻き込んでしまう覚悟は、これからしなければならないが。





「え? いや、いいですよ、そこまでしていただかなくても……」


 アダムを探して村を回っていた所、石榴さんからお礼を言われ、涙の跡を付けた苺さんに謝られた。何でも、忍者側は俺たちの事を諦めるつもりは毛頭無く、一生追い続ける。だから、苺さんが一生をかけて護衛する。その上で暮らしに不自由はさせない程の支援はするし、石榴さんもそれを手伝うとの事だが……


「いくら何でも過剰ですよ。人一人送っただけで……それに、今回の件は……その、半分位……好奇心も混じってましたから……ですので、そこまでしていただかなくて結構です」


 しかしそう言っても苺さんは地面に頭を擦りつけて謝ってくるし護ると言って聞かない。おまけに石榴さんもそれに協力すると言っている。

 百、いや、千歩譲って苺さんならともかく石榴さんはこの件に関して全く責任を取る必要が無いのだが、それでも尚譲らない。うーん、どうしよう……


「ごめんなさい、私の判断が甘いばかりに……何でも言ってください、絶対に、絶対に不自由はさせません。許さなくて構いません、どれだけ恨まれてもいいです、それでも、あなたを守ってみせますから……」

「何かもう僕が脅迫しているみたいに聞こえるので止めて欲しいです! 本当に、大丈夫ですから……」


 正直身の危険なんて割と今まで結構あったし、最悪政府に幾つか言えば普通の護衛も付くだろう。言っては何だが、苺さんに人生を捧げてもらう必要は無いのだ。


「XXXさん、お姉……姉は取返しの付かない事をしました。この一件、そこまでしないと到底収まりはしません。あなたの身の危険もあります。私たちは護衛を何としてでもしないといけないのです」

「本当にそこまで言われても困るんです……」


 ……何かもう腹立ってきたな。あれだ、忍者だ。忍者が俺らを追って来るから悪いんだ。先に喧嘩売ったのはこっちだが、もう知った事か。殺しに来たのは忍者の方だ。


「……もう先に忍者滅ぼしません? それなら護衛も──」


 いらない。そう続けようとした所で、途轍も無い爆発音が響いた。音源へ目をやれば、天へと昇る爆炎が。どうも相当離れた距離で爆発したようだが……

 と、上から何か振って来た。……アダムだ。


「おう、どうせ困ると思ってな、先に忍者には停戦させて来た。おらXXX、俺に礼を言え、頭を下げて」

「ありがとよ!!」


 取りあえず色々込めて奴の顔に拳を叩き込んだ。凄いいい笑顔で。もうどうにでもなーれ。

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