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禍話派生シリーズ

道を怒鳴りながら歩いてる人って、いますよね:トイレには行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話

作者: 吉野貴博

 トイレには行かない方がいいんじゃないかって話なんですけどね、夜中の公衆トイレでなんか怒鳴り声が聞こえてきたら、中を覗かず近づかず、早々に立ち去った方がいいんじゃないかって思うんですよ。


 話を持って来たのはA子さん、OLさんなんですけどね、その日、仕事が遅くまで終わらなくて、帰りのバスに乗ったのが結構遅くだったんだそうです。

 バス停からA子さんの住んでるマンションまでは十分もかからない距離なんで、変質者に襲われることもないだろうと安心して歩いているんですが、途中で公園のわきを通るんです。

 夜遅くて、誰もいません。A子さんも別に公園に用事がないのでそそくさと道を歩くんですけど、トイレに近づいたら声が聞こえてきたんだそうです。

 この公園のトイレは奥ではなく、道沿いにあって、そのわきを通らないといけないんですけど、トイレの中で大声をあげている人がいて、離れていてもなんだか声が聞こえてくる。

 怒鳴ってる人に相手がいるんだかいないんだかは解らないんですけど、怒ってガー!ガー!ガー!と言っていて、近づいて何を言ってるのかが聞き取れるようになると、A子さん、はっとして、公園の入口まで走って戻って、中に入ってトイレに駆け込んだんですね。

 走って、女子トイレの中を覗いてみますと、誰もいません。声もしなくなっています。

 A子さん、ぞっとして、また公園の入口まで走って、そこから自分の部屋まで走って帰ったんですけど、ドアを開けて中に入り、閉めて、施錠したらスマホに着信が入る。

 画面を見ると知らない人の名前で画像が送られていて、絵がダウンロードされるんですけど、それが亡くなったA子さんのお母さん、歳を取って威厳のある人だったんですけど、そお母さんが凄く怒った顔で、こちらを睨み付けている画像だったんですって。

 どうも気を失ったようで、次の瞬間帰宅したときの格好のまま玄関で倒れていることに気がついて、窓からは朝日が差し込んでいる。

 はっとスマホを見ると、画像はもうないし、着信履歴もないんだそうです。

 で身支度を調えて仕事にいって、休憩時間にお母さんの墓を管理している弟さんに、何かお墓に異変がないか行ってみてと頼み、何時間かして、何もないよーと返事が来る。

 お墓参りをサボっていたわけでもないし、いったいなんだったのか、さっぱり解らない。

 話はそれで終わり、それからは仕事で帰りが遅くなることもなく、どうしてもやむを得ない事情で遅くに公園のトイレのわきを通っても怒鳴り声は聞こえてこないし、変なメールが来ることもないんだそうです。

 私が

「夜中に外のトイレで怒鳴り声とか喧嘩の声が聞こえても、行かない方がいいっていうことですね。児童虐待とかの可能性もありますが、自分が危険になったら仕方がないですし」と言いますと、

 A子さん、

「いや、それがそのとき聞こえていた怒鳴り声って、私が幼いとき母から怒られていたときの声そのままだったんです。抑揚とかテンポとか間合いとか、忘れたくても忘れられない、あのまんまの声だったんです。それが逃げられなくて…声が聞こえても、行かない方がいいとは解っているんですけどね」


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