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怖いもの知らず

前回のあらすじ

ゴリン「ノイファン様の依頼で大工のあっしらが古城トーワの修繕を行ってやす。そうそう、錬金術師のフィナさんがケント様の依頼で銃弾ってのを造るらしいぜ。一部はワントワーフに依頼するそうだけどよ。そういや、ギウさんにいきなりナイフを投げたという話は本当かね?」


 フィナを案内するために執務室から出る。

 扉を開けたところで、ちょうどエクアと鉢合わせをした。



「おっと」

「あ、すみません」

「いや、こっちこそすまない。エクアが来たということは?」

「はい、お部屋の準備が整いました」

「そうか。フィナ、まずは部屋に案内しよう」

「うん? いえ、それよりも地下が見たいかな。あんまり狭かったらさすがに嫌だし」

 

 そう、フィナが言葉を返すと、エクアは疑問の声を漏らす。



「地下?」

「フィナはしばらくトーワに滞在することになった。錬金術師として色々協力してくれるそうだ。それで、研究しやすい地下の部屋を貸すことにしたんだ。しばらくはエクアの用意してくれた部屋で寝泊まりするが、地下には片付けが済み次第にね」


「そうなんですか。えっと、私はエクア=ノバルティと言います。ケント様の下でお手伝いをしています。これからはよろしくお願いします」

「うん、よろしく。私はフィナって呼んでね。エクア」


「はい、フィナさんですね」

「さんはいらないんだけど。ま、いっか。あ、そうそう、初めて会った時に名字を言ったけど、それは忘れて」

「え?」


「色々と問題があってね。だから、私はフィナ。わかった?」

「はぁ、よくわかりませんけどわかりました」


「やだ、素直。この子可愛いねぇ、ケント」

「それはそうだ。君と比べれば、誰もが素直だろう」

「ふふ~ん、皮肉屋ねぇ。喧嘩なら買うよ」

「申し訳ない、売り切れ中でね」

「この、ヘタレ」



 私とフィナは互いに笑顔のまま奥歯を噛み締める。

 そんな私たちを見たエクアは……。



「お二人は……似た感じが、というよりも仲良しさん?」

「「それはない! あっ」」


 互いの声がピタリと重なり合う。

 私とフィナはばつの悪そうな顔を向け合い、エクアはくすくすと笑っている。

 微妙な空気を一新すべく、私はわざとらしく咳払いをして話題を地下へ戻す。



「ゴホンッ。とにかく、地下へ案内しよう。まずはゴリンに頼んで階段を整備してもらわないといけないな」

「あっちこっち傷んでるみたいねぇ。そういえばさ、依頼が二つあるって言ってなかった? 銃弾製造しか依頼されてないんだけど?」


「ああ、忘れていた。実はポンプと風呂釜の調子を見て欲しくてね」

「なにそれ?」

「どうやらこの城にはかなり古い風呂の設備があるらしい。それを修理してもらいたい」

「なんで町の修理屋みたいな依頼をこの私に。ま、お風呂があるならあるに越したことはないから見てあげるけど……」

「悪いな、頼んだ」


 

 私とエクアとフィナは三人そろって地下へ向かう。

 一階に来ると、柱の修繕の様子を見ていたゴリンの姿が目に入った。


「ゴリン、ちょうどよかった。悪いが、急ぎ地下室へ続く瓦礫を撤去してくれないか?」

「ああ、それでしたらもう終わってやすぜ。そのことを報告しようとしたら、ちょうどお客人がいらしたようなんで、あとで報告しようと思っていたんでさぁ」

「そうだったのか。なら、すぐにでも地下の様子が見れるな」

「それが、ケント様……」



 ゴリンの歯切れが悪い。どうしたんだろうか?


「何か、問題でもあったか?」

「はぁ、まぁ……地下の壁にはなんだか奇妙なものが書かれてまして。模様のような、魔法陣のような。若い大工連中の中には、呪いのまじないじゃないかという者もいて、とにかく不気味なんですわ」

「はは、そんなもの――」


「何それ? めっちゃ興味あるんですけど!」

「フィナ?」

「模様って絵ですか? うわ~、昔の人の絵かなぁ」

「エクアまで……」


 

 二人は私の言葉を遮って飛び出してきた。

 ゴリンは二人の勢いに気圧されて、言葉を詰まらせながら声を返す。


「さ、さぁ、そこまでは。ですが、お嬢さんらが興味を惹くようなものじゃないと思いやすよ」

「興味が惹くかどうかは見て判断する。行くよ、エクア!」

「はい、フィナさん! ほら、ケント様もっ」


 二人は勇んで地下室に続く階段へ向かっていく。

 取り残された私はゴリンへ声を掛けた。



「怖いもの知らずだな、二人とも」

「ええ、そうでやすな……」

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現在連載中の作品。 コミカルでありながらダークさを交える物語

牛と旅する魔王と少女~魔王は少女を王にするために楽しく旅をします~

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