第3章 『祭田 八十子』編
取り急ぎ、第3章を投稿いたします。
会社に着くと、「せんぱーい!」と響き渡るような声がした。
祭田 八十子だ。
紀子「あ、おはよう。」
紋子「おはよう、どうした?」
八十子「大丈夫でしたか?あれ。」
紋子「何が?」
八十子「SNSでー、こんなの見つけて。」
それは、まぎれもなく、紀子が『切り裂いた』木の画像だった。
八十子「これ、先輩たちの通勤ルートの道じゃないですか?」
紀子「そうだね…。」
八十子「大丈夫でしたか?」
八十子が心配そうな顔をして紀子の方を見る。
紀子「大丈夫…だったんじゃ…ないかな?」
八十子「よかったー。」
そう言いながら、三人は席に着いた。
その日は、テレビがつけられていた。
紀子たちの会社は、もはや士気が落ちすぎていて、テレビをつけていることもたまにあったのだ。
テレビは、申し訳なさそうに課長席の斜め後ろに天井から下げられている。
一つの事務室だが、計4つ導入しようという計画があり、あと一つ、既に向かい側の島々のエリアに配置されていた。
課長がいない中、八十子がせっせと忙しそうに、パソコンに向かって作業をしている。
それを見ると、紀子と紋子は不安になるものがあった。
紀子「何か今日…やな予感…。」
紋子「私も…全力で…。」
すると、その期待を裏切らないかのように、他の部署の男が、八十子のところに行った。
男「八十子さん、ここなんだけどさ、ここ、誤字ってる。」
八十子の書類にイチャモンを付けに来たのだ。
紀子(あーやっぱりまた始まった…。)
紋子(くっそめんどくせ…。)
テレビで、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が国会答弁をしていた。
安倍晋三「その点に関しましては、大変、申し訳なく考えておる次第であります。」
八十子が何も言わず、机を『バン!』とたたいた。
八十子たちの課では時々見る光景だったので、もはや過剰反応する者もいない。
八十子が「ああ、もう!」と言いながら、タイピングの音をうならせるかのように仕事を再開した。
しばらくすると、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が再び答弁をしている。
安倍晋三「だからー、先ほどから申し訳ないとお伝えしているじゃありませんかー。」
八十子が再び机を『バン!』とたたく。
紀子「…。」
紋子「八十子、『こういうとこ』、『シビア』だよねー…。」
紀子「分かるけど…。」
見ると、さっき八十子にいちゃもんつけていた男が他の男と話していた。
紀子「あー…ていうか、辞めようかなー、私。」
すると、八十子が紀子の方を見た。
テレビの音が聞こえる。
委員長「麻生(太郎)財務大臣ー(当時)」
八十子がテレビをにらみつけ、机を再び『バン!』とたたいた。
紋子「八十子…。」
紀子「こええよ。ホラーかよ…。」
八十子は再び黙々と、タイピングの音だけ鳴らしながら、仕事を再開していた。
その日は無事、定時に仕事を終わらせることができた。
テレビを切る直前には、『小泉進次郎環境大臣(当時)』が映っていた。
紀子「…。」
紋子「…『滝クリ』の旦那の顔なんて見せられても…ねぇ…。」
紀子「うん、疲れ、全然取れない…。」
そう言いながら、紀子と紋子は帰路についた。
八十子は、早めにあがったようだった。
まだまだ続きます。
完結は可能な限り速やかにするよう予定しております。