第10章 『〔聖徳太子〕と〔卑弥呼〕の警告 ~連綿と続かざるを得ないものを切断する恐怖~』編
取り急ぎ、第10章を投稿いたします。
「時代の危難を修羅と激情を以って 命を捨てて鎮めた所で
それは所詮 連綿と続く時代の 一時だけの事に過ぎない」
by 『比古清十郎』 マンガ『るろうに剣心 ~明治剣客浪漫譚~』より
そんなセリフが流れる夢を、奇遇にも、紀子と紋子が同時に見た。
その次の日、
紀子「おはよー」
紋子「おはよー」
メッセージアプリで連絡を取り、一緒に出勤することにした二人。
紀子「何か今日、物凄くしぶい夢見た。」
紋子「…私も…。」
紀子「マジで?」
紋子「うん。」
その日は、絢子、八十子、そして花依子の三人で半休を取り、ショッピングに行くことになった。
紋子「…初めて…だよね?こんなの…。」
八十子「何がですか?」
紋子「派遣の娘とかと、こうやっていくの。」
八十子「そうですねー。」
花依子が申し訳なさそうにしていると。
紋子「ああ、大丈夫大丈夫。八十子がいっつも助けられてるのを見せられてるからさ。」
八十子「そんなぁ…。」
花依子「いや、そんなことは…。」
三人は、カフェでお茶をすることにした。
紋子「花依子ちゃんはさぁ、いつから派遣とかしているの?」
花依子「もう始めて3年くらいにはなります。」
紋子「3年かぁ。長いねー。何社くらい行ったの?」
花依子「5社くらいだと思います。」
紋子「5社かー、言っても難しいんだろうねー、色んな会社に行くの。」
花依子「ええ、まぁ。時々難しい会社とかあります。」
紋子「だよねー。」
八十子「給料とかはどれくらいなんですか?」
花依子「交通費除いて、12万とかです。」
紋子「きっついねー…。」
花依子は黙ってうなずく。
しかし、よく見ると、値段が違うのか違わないのか分からないが、服もそんなに悪くない。
一人暮らししているというが、自分たちとそんなに服のよさとかが変わっている気がしない。
カフェでも、自分たちと同じものを何食わぬ顔で注文してくれた。
派遣社員だったら、ちょっと厳しい表情になってもおかしくない、そんな気が、紋子にはしていた。
隣を見ると、八十子が目を点にしてコーヒーを飲んでいる。
紋子(こいつ…。)
紋子はふと思った。
〔女が腐りそうな会社生活の中で、男社会が変わる気配なんてない…。〕
〔やるだけやって、考えるだけ考えて、プライドとかそういうのは、捨てた方がいいのかもしれない。〕
〔時代は『令和』になったのだ。〔女が腐りそうな会社生活〕が変わらないなんておかしい。〕
帰り道、三人で街を歩いていると、
前方に見えた大きな電光掲示板の画面で、
マスコミのインタビューに対して、眉を細めて答えに窮しているかのような、安倍晋三内閣総理大臣(当時)の姿があった。
紋子(あの人、総理大臣するの、二回目だよね?楽しいの?総理大臣って…。)
そう思いながら帰路についた。
続きます。
引き続き、ご愛読の程、よろしくお願いいたします。




