3 主人公スライムに負ける
「やめーーーーーっ!・・・・ふぇ?」
気が付くと、そこは草原だった。さっきまでのは夢だったのか?なんかすっごく頭の悪い会話をしていた気がするぜ・・・。俺は起き上がりあたりを見渡す。うん、知らない場所だわ、うん。
辺りは何もない緑一面の草原。先ほどまで自宅にいたはずなのに、知らないうちにもしかして夢遊病にでもなったのかなぁっとか考えてみる。・・・病院行ったほうがいいかな。
さらにあたりをふるふると見まわすとある一点に目が行った。
日本ではありえない立派なお城のある町が遠目に見えた。 マジカー。
「・・・きっと知らない間に映画のための町でも作ったのかな。」
今度日本でオリ〇ピックもあるし、きっと集客目的のアレとかだよねっ!
その時空が急に暗くなる。
雨でも降るのかと軽く頭を上げると、そこには大きく翼を広げた真っ赤なドラゴンが猛スピードで横切ったのだった。
「うん、今の飛行機って生物的なんだなーすごいすごい。」
うん、現実逃避失敗。
「ここどこーーーーっ!?」
どうみても異世界でした、本当にありがとうございます。
どうしよう、俺RPGは好きだけど・・・いざ自分がそんな場所にいるとどうしてもパニックになってしまう。
「え、えっと普通RPGだと最初の町からスタートだよね?まさか道にほっぽりだされるなんて!」
なんて不親切な設計なのだろう。
「と、とにかくあっちのお城が最初の目的地でいいのかなっ!?」
くそ・・・帰りてぇ・・・。
こんなことなら、あの女神にいろいろと聞いておくんだった。
足取り重く俺は異世界で最初の一歩を踏みだす。
てくてく。
『スライムが現れた!』
「え~・・・。」
俺が最初の一歩を踏み出すと、突然さっきまでいなかった青い大きなゼリーと頭に響く機械的な音声が空気を壊す。なにこれ緊張感ないんですけど。もしかしてこの世界これが仕様なのか・・・ちょっとやだな。さすがにモンスターのいる場所で寝てたらそりゃヘイトというかエンカウント率あがるよね、うん
でも最初の一歩って。
「それにしてもスライムなんて、さすが異世界。」
まぁ、ちゃちゃっとやつけてしまおう。俺は背中にあるであろう剣を取る。
ースカッ
「え・・・。」
そこにあるであろう剣が存在しなかった。
そもそも背中になんの重さも感じない。え・・・剣は?勇者の剣はー!? ひのきのぼうはー!?
ガサッー。
「ーひっ!?」
その時スライムが動き出した。
先程までなんとなく可愛いと思っていたスライムに恐怖心が湧き出てくる。だって無機物みたいなウネウネしたものが襲ってくるんだぞ、ありえないだろう。 頭がこの生き物は危険だと訴えかけてくる。俺の背筋を冷たいモノが流れ、顔が青くなるのを感じる。手と足が震え足が一歩下がる。
ガサッー。
俺が一歩下がるとうぞうぞ・・・と近づいてくる。もしかして、これ負けイベント!?でもスライムに負けるイベントなんて聞いたことがないぞ!俺は震える足に鞭を打って一歩一歩後ろに下がる。
なんとか動ける!俺はスライムに背を向けて懸命に走った!
『※※※は逃げ出した!』
機械的な音声が自尊心を傷つけた。もう嫌だお家帰りたい。でもそんなこと言ってられない。俺は必死ににげるのだった。
「ぴ、ぴゃあぁぁぁーーーー助けて―ーーっ!!」
俺は甲高い声を上げ、必死に高原を走る。後ろを見ると同じスピードかもしくは少し早いのかすこしづつ距離を詰められてるのが分かった。
「ひ、ひいいーーー!!」
しかし、もともと運動しないインドアなオタクだ。すぐにバテてしまう。後ろを振り向く、やっぱりついてきてる!? でも、運動してないにしてもなにか体に違和感があった。 体力がないというよりは体のバランスが違うような? そんなことを考えてもう一度振り返った時だった。
「きゃっ・・・!」
足元にスライムが絡みついてきたのだ!俺は変な声を上げて転ばされてしまった。
ヌルヌルと体を這うスライムを見るとともに別の意味で驚いてしまった。
ーなんで俺スカート履いてるんだ!!
スカートだけではないフリフリとしたフリルのついた服。すこし盛り上がった胸。なにこれナニコレ!?
もう情報量が多すぎて頭の思考能力が完全にパニック。
ジュワァー・・・。
その時、スライムの触っている服が溶け始めるではないか!
「きゃ、きゃあぁぁぁァーーーー!!!」
服が溶け・・・!?やだやだ!なにこの展開!!女装させられてる上に、いい子のみんなに見せられないような展開!? 俺の人生は今までもこれからもーーーー!!!
「コンシューマーでおねがいしますーーーー!!!!」
彼女いない歴年齢の童貞の心の叫びだった。
もうだめだ、そう思ったその時、シュッと何かが風を切るような音とともに俺に絡みついていたスライムが離れていく。
一体なにが起こったんだ・・・? その疑問を機械的な声が教えてくれる。
『トウコの攻撃 Critical スライムは倒れた!』
飛び散る水滴のようなスライムの欠片。その中心に黒い髪をサラサラとなびかせる少女がいた。
その少女の手には日本刀のようなスラっとした美しい剣が握られている。
ー綺麗だ。
俺はその姿に目を奪われた。やがて、少女がこちらに振り返ると少しほほ笑んでこちらに手を差し出す。
「大丈夫ですか?ーーーお嬢さん」
「あ、はい・・・」
俺はその手を取る。しばらく触ることのなかった女の子の手にドキドキが高まる。目が合うと、時間が止まり周りが透明になった気がした。顔に熱がこもる。
「危ないところでしたね・・・あなたのようなか弱そうな女性の一人旅は危険ですよ、私はトウコ・アイハラです、よければあなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい・・・お、おれはーーーー」
ーか弱そうな女性? その言葉に疑問を覚えた。 さっきから何かがおかしい。
その時チラッと見えた彼女の真剣に自分の姿が映る。
背中まである茶色の髪にやさしそうなつくりをした目元が驚いたように開かれていた、少し膨らんだ胸に華奢な体つき。
えっ・・・とドキリとする。この姿はー・・・
俺がずっと延期でも待ち続けた彼女ー・・・
「ゆ・・・ゆいな・・・ちゃん?」
俺は異世界で『僕だけのアイドル』のヒロイン、ゆいなちゃんの姿になっていたーーー。
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