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1 天坂 進くんの充実した人生最後の一日

「よっしゃ、今日もランキングトップだぜ!」


俺はパソコンのモニターに映る【WIN Congratulation!】の文字と1の文字の横にある自分のハンドルネームを見て高らかに拳を天に突き上げた。

俺は天坂 進。

ごくごく普通の学生だ。

ただし、オタク趣味全開で、今も休日を利用して対人対戦型RPG【ドラゴンハンターオンライン2】略して【DHO2】を楽しんでいた。

昔ながらのRPGをテーマにしていて、ドラゴンを討伐、ある時はPvPでお互いの剣をぶつけ合う。

俺はこんな世界観が好きでどっぷりとはまっていた。


「俺TUEEEってな!」


誰もいない部屋でちょっと決めポーズを取ってみる。

この虚しさ、ぞくぞくするぜ・・・。


「っとと、今日はこれだけじゃないんだよなぁ~♪」



俺は思い出したかのようにDHO2のウインドウを落とすとさっと席を立つ、ゲーミンチェアのギィと軋む音を聞きながら俺は鼻歌交じりであるものを取りに行った。

それは茶色いざらざらとした紙袋、大手電気屋「サムアップ」の紙袋だった。



「じゃーん!! 本日発売のちょっとむふふっなパソコンゲーム『僕だけのアイドル』!!」



ちょっとエッチなギャルゲーだった。

そこには茶色い髪ににこにこと花の咲いたような笑顔、それにグッと両手を前に頑張るぞっと健気にポーズを取る可愛い女の子 "ゆいなちゃん"が描かれていた。

この子をホームページの公式サイトで目にしたときは心臓が飛び出るかと思ったほどだ。

アニメや漫画の女の子は可愛いと思ってたが、この子をみた感情は一目ぼれに近かった。

そこからSNSのツブヤイターでゆいなちゃんの絵師さんをフォローしたら返してくれて舞い上がったり、2か月発売延期でちょっと鬱になったりいろいろなことがあったがやっとついに俺の家にお迎えすることができた。


「会いたかったよ~ ゆいなちゃん!!」


俺は紙袋から特典のタペストリーとCDを()()()()大事に取り出し保管スペースにしまった。いよいよご対面だ!!

パッケージから大事に説明書、DVDを取り出しパソコンに挿入する。

すると、自動再生機能でポップアップにゆいなちゃんが映し出される。


「うぉぉー!!」


ゆいなちゃんの初めて見るイラストに心が躍る。 俺は震える指でインストールの文字をクリックする。

インストールが始まり少しずつ完了にシークバーが進む。


「このインストール待ちのドキドキ感もたまらないんだよなぁ・・・」


期待感に胸を高鳴らせているとそれは突然起こった。


ーーーうぃーーーー・・・・・ブツッ。


・・・・・・・・・


・・・・シーン・・・。


ディスクの耳障りな音が突然止まったのだ。インストールが完了したのかと思って画面を見たが、いまだにバーは途中だった。


「んーなんだ・・・?」


試しに動かそうとマウスを動かすと気が付いた。

ーポインタ(矢印)が動かない!!


「嘘だろ!! 壊れた!!??」


やっと気が付いたのかとあざ笑うかのように画面が真っ暗になった。


「うそだろ・・・うそだろおおおおお!!!」


電源ボタンを何度も押すが反応がない。


ー嘘だ嘘だ嘘だ!!!


俺は必死に懇願しながらボタンを押すがやがやはり反応がない。

ついに絶望から涙が出てきた。紙袋から2つのパッケージが落ちる。2人のゆいなちゃんが俺を見つめてくる。

このゲームを買うのとDHO2の課金でもうパソコンを買う余裕なんてただの貧乏学生にはない。


「嘘だといってハニー―――!!!!」


ほんと悲劇っていうのは重なるものなんだとその時俺はかすかに思った、

渾身の電源ボタンクリックはボタンを破壊して基盤をむき出しにし、俺の血のような涙は電源の通電したパソコンの基盤に落ちる。


バチバチバチーーーーーー!!!!


「!!!!?????」


俺は焦げ臭いと感じるぐらいが精いっぱいだったが頭の片隅で気が付いた。


ー俺・・・感電してるじゃん・・・・。


パソコンの画面だけでなく俺の視界も真っ暗になった。

そして、俺の休日と人生はそこでゲームオーバーになったのだった。

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