竜神殿
護衛クエストから帰り、コツコツ造っていた転移門が完成した。
素材にルイさんの鱗とかを使ったから見事な白磁器の様な扉だ。
それでは、地下に設置しよう。……スペースがないな。
急遽、地下を改築する事にした。下に、1階増やした。
完成した地下2階に転移門を設置。……1つだけじゃ、寂しいな。
上の転移門も地下2階に移動させた。今後、ここを転移門エリアにでもするとしよう。
それでは、ルイさんに報告。今、マリーの部屋で子供服の作り方を教えている筈だ。
「ルイさん。転移門完成しましたよ。後は、設置するだけです」
「まぁ、ホント?」
「ええ、ホントです。いつ行きます?」
「そうね。明日にでもお願いしようかしら?私の転移で案内するわ」
「おお、それは助かります」
確か、竜神殿は魔王国より更に先の浮遊大陸に存在する。
行くなら竜の様に飛行能力を持つ者か、飛行魔法でないと行けない場所だ。
そして、翌日。
「では、詠唱を始めるわ。レワ リナノモルセハヲイモオニチノカ」
ルイさんの詠唱が始まると彼女を中心に幾何学模様の描かれた魔法円が展開された。円の中に居れば行けるそうなので入る。
「タナカノリンバノリンセカルハ ヨチトノカヌカドトニテノコ」
詠唱に合わせて魔法円が徐々に上がっていき、頭部を超えた辺りで停止。しかし、詠唱はまだ続いている。
「ニウヨグ厶ツヲイモオガイモオ ゲムツヲイカセトイカセテッモヲイモオガワ!」
詠唱が終了すると何時もの転移宜しく視界が切り替わった。気温が低いらしく風が少し寒い。
転移した場所は、浮遊大陸にある街の外れの様だ。
外敵がいないので塀はなく、普通の町並みが見える。
「ようこそ。幻想の地。浮遊大陸へ」
ルイさんの歓迎の言葉が響き渡った。
ワクワクしながら、目的地である竜神殿へ向けて2人で歩き出した。
竜神殿は、誰が見ても直ぐに分かる。だって、街の中に白い宮殿が建っているんだもん。
ただ、入口は神殿らしく白い柱が複数並んでいるのが見える。
イメージとしては、ギリシャのパルテノン神殿に近いな。
「ルイさん。この大陸は、どうやって浮いてるんですか?」
ずっと気になっていた事を聞いてみた。
「それはね。この大陸の7割が浮遊石で出来ているからよ」
「浮遊石?」
「浮遊石というのは、天然に存在する。魔力結晶の1つよ。まだ、詳しく原理は分かっていないけど、地面から一定の高度に停滞する性質が学会で報告されているわ」
「へぇ〜、そんな不思議な石なんですね。では、緑は風で?」
石の大地なのに苔ではなく、普通に木やら雑草やらが生えている。
「噴火による火山灰と土が積もった所に風で飛ばされた植物が根付いたようよ」
「やはり、そうですか」
さすが、異世界。面白い場所が多いな!
「着いたわね」
喋っている内に目的地へと辿り着いた。
『お帰りなさいませ、ルイーズ様』
「ただいま」
複数の天使族が並んで出迎えてくれた。どの娘もとびっきりの美人だ。
ただ、大勢の美人に待ち構えられると……身構えるな。
「この子は、ユーリ・シズ。娘の婿様です。粗相の無い様に」
『はい』
この娘たちは、ルイさんのメイド的立ち位置の様だ。
「それでは、場所に案内するわ」
「了解です」
ルイさんに連れられて案内された場所は、竜神殿の最奥にある玉座の間だった。
壇上の上に立派な椅子が1つ置かれている。
「私が他者と会う時に使う場所よ。ここなら、人目が多いけど秘匿もされるから管理しやすいと思うの」
「確かに。では、そこの壁でいいですか?」
「ええ、お願い」
ルイさんの許可も貰ったので取り付ける。
「よし、それじゃあ、起動してみますね」
新しく造った竜神殿専用の鍵を差し込み、魔力を流して術式を起動する。
そして、扉を開けると……。
「あら?ユーリさん、お帰りなさい」
マリーが椅子に座って本を読んでいた。俺がこっちに行ってから待機していたらしい。
「ただいま、マリー。転移門は問題なさそうだな」
門をくぐって、マリーのいる屋敷に移動出来た。
「それでは、これが鍵です。そして、頼まれた予備の鍵。後、ついでにこっちが竜王国行きの鍵ですね」
「あら、ありがとう」
ルイさんに鍵を3つ渡した。竜神殿を繋ぐ鍵を何故か予備まで頼まれた。
「そういえば、こっちの転移門の管理はルイさんがするんですか?」
「いいえ、違うわ。今、呼ぶわ。誰か、トリシャを呼んで頂戴!」
ルイさんが、近くにいた天使族に声をかける事、10分。
一人の天使族がやって来た。
「お呼びでしょうか?ルイーズ様」
「来てくれてありがとう、トリシャ。ユーリ君。彼女は、うちの娘たちを仕切っている娘で、転移門の管理もするわ」
「トリシャです。よろしくお願いします」
「ユーリ・シズです。こちらこそ、よろしくお願いします」
天使族の知り合いが出来た。
「しかし、遅かったわね。何かあったの?」
「……拘束していました」
「「………」」
何やら、拘束っていう物騒な言葉が聞こえた気がするのだが?
「……彼女、また、何かやったの?」
トリシャさんは、誰とは言っていないが分かったらしい。
「新入りの娘に抱き着いて、ハレンチな事を行っていました」
「……つまり、いつも通りだったのね」
「……ええ、いつも通りでした」
何故か、トリシャさんは遠い目をしている。
「彼女の病気は、どうにかならないかしら?普段は、優秀な娘なのに」
「……おそらく無理でしょう。被害が多いので追い出しては?」
「そうね。でも、街だと問題でしょうし……」
「可愛い女の子が多い上に、合法的にハレンチな事が出来る機会のある場所でもあると良いのですがね」
「………」
俺は、話について行けず聞き流していた。そしたら、何故か、ルイさんと目が合った。
「あったわ。1箇所だけ」
「はい?」
俺は、意味が分からず困惑するだけだった。