初めての狩りと解体
それはそれは大きなニワトリ?に遭遇した。自分の3倍程あるわ。
「クウェ!クウェーー!!」
あっ、鳴き声、コケコッコーじゃ無いんだ。
よし、鑑定しよう。
種族:ロックバード
危険度:B−
説明:山岳エリアに生息し、岩塩を好む。羽根は、保温効果が高く、装備の装飾や布団に使われる事がしばしば。身は、あっさりしていて食用可能。内臓の多くの部位も同じく食用可能。大変美味である。先程の岩塩と相性よし。
なんかスキルに意思がある気がしてきた。『先程の』って言ってるし。とりあえず、コイツを狩れば欲しいモノがほぼ揃う事が分かった。
よし、狩ろう!こちとら今、負ける気がしねぇんだよ!
寝床の布団。肉。販売用の素材の為だ。大人しく死んでくれ!
「狩る!」
武器をイメージしたら白銀の剣が出た。
内臓もイケるらしいからあまり傷付けずに倒したい。首だけをはねれれば楽なんだが。
「こんな風に」
まだ、ロックバードとの距離があったからイメージトレーニングも兼ねて剣を首の辺で無造作に振ってみたのだがーー。
スパッと、刀身がムチの様に伸びて、ロックバードの首をはね飛ばした。
「はい?」
ガシャガシャガシャンと、役目を終えた刀身は、元の剣の状態に戻っていく。どうやら白銀の剣は、俗にいう蛇腹剣だったらしい。妙に刀身にラインが有るから疑問に思ってた。
ってか、そうじゃねぇ!今のは、何だ!?
「俺、こんな武器イメージしてないんですけど!?とりあえず武器!の、軽い気持ちだったのですが!?確かに首をはねたら楽だなと思ったけど!!」
元々、武器みたいな事を言っていたから本来の形になれと考えたくらい。なら、これが本来の形なのか?
武器を鑑定した。
名称:フラガラッハ
レア度:EX
性能:形状変化。概念切断。基本モード、ブレイド。遠距離モード、ワイヤードランス。ワイヤーの射程(魔力影響)。
超優秀な武器だった。そして、ムチでは無くワイヤードランスだった。普通に便利な包丁かと思ったわ。
ただのイメージトレーニングが、普通の狩りになっちまったぜ……結果オーライ!
それより、ロックバード本体を回収せねば。ロックバードは、首をはねられた状態で立っていた。やられた事にも気付いていなかった様だ。
解体の為に持ち帰ろう。アイテムボックスをぶつけて回収。鳥型のアイコンが加わった。
「空間転移」
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「ユーリのクッキングタイム!」
パチパチパチッ。と、誰もいないのに1人で手を叩く。こういうのは、ノリが重要なのだ。
現在、戻ってきてテーブルの上に血抜きされたロックバードが置かれている。
帰ってきてそうそうに血抜きをどうしようかと思った。血抜きを行わないと肉は不味くなる。
普通は吊るしてやるのだが、紐がない。蔓では、重さの問題で代用出来ない。
さて、どうしたものか? と、考えた所で知識の中に楽な手段がある事に気付いた。
空間制御。
要は、魔法で作った領域内の現象を自由に弄れるというもの。それには、重力の向きも含まれた。
俺は、その魔法でロックバードを包む。通常ならレジストされる可能性があるが、死んでいるのでその心配はない。
重力の向きと圧力を変えた事で、机に置かれたロックバードから血が噴き出す。今、ロックバードだけは重力を横から受けている。その為、重力に従い血が横に落ちる事で噴き出した訳だ。
はやく終わらせたいので、重力を増したら直ぐに血抜きが終わった。本当なら、直ぐに冷やすなりしなければいけないだろうが、解体後直ぐに焼くから大丈夫だろ。冷やすのは、血によって焼ける事と雑菌の繁殖を抑える為らしいし。
アイテムボックスは、時間停止空間らしいから問題なく保存出来る筈だ。
では、解体を開始します。白銀の包丁用意。今度は、剣では無く予定通りに包丁へ変化した。
「さて、始めますか」
解体は、身体がスキルに従い刃を入れていく。
何処に刃を入れれば良いのか?何処を抑えつつやるのか?
それらを全部スキルがフォローする。
まず、肉と皮の間に刃を入れて2つを剥離して行く。皮は、食用ではなく、布団に使いたいからだ。
包丁は、何者にも阻まれること無くスルスルと切り裂いていく。
あっという間に、皮だけ取り除かれた。そこから更に刃を進める。
セセリ、ムネ肉、ササミ、手羽各種、もも、ボンジリ。内蔵系のサエズリ、ハツ、ヤゲン、レバー、砂肝、ゲンコツ、セギモ、キンカン。
各種部位が皿に並べられていった。後に残るのは、骨とビー玉サイズの魔石。
魔石は、解体途中で見つけた。最初見つけた時は、尿結石かと思ってしまった。
スキルのおかげもあって、初日の狩りと解体はすんなりと終わりを告げた。
余談だが、皮をなめす作業はいらなかった。なんか、適当に叩いて伸ばして気付いたら出来ていた。
関連スキルとして、職業スキル創る人が挙げられる。ゲームの鍛冶にあるように、皮の加工も含まれるのだろう。