商業都市ウェン
9日目にしてやっと商業都市ウェンに到着した。
都市のゲートにて、ひと騒動あった。
「彼女は、俺の従魔です。まだ、登録されていませんが通行許可お願いします」
ギンカの登録はされてないから事前に言った。
「………」
警備兵たちを呼ばれた。
「なんで!?」
「お兄さん、奴隷は違反ですよ」
「コイツが犯罪者か?では、おとなしく来て貰おう」
どうやら、奴隷の買い主だと思われたらしい。
「ご主人様。蹂躙しますか?」
「余計悪化するわ!!」
「そうですか。攻撃する時は、言って下さいね」
そんな予定は、有りません!
さて、どうしよう? 正体見せた方が、早いかな?
「ギンカ。魔物体に戻って」
「はい」
『!?』
ギンカの変化に驚き、槍や剣を向けられる。
風呂に入ったから見事な毛並みだな。
……というか。
「前よりデカくないか?」
前は、両手で抱えれなくはないゴールデンサイズだった。
今は、ワゴン車程のサイズになっている。
「あの時は、魔力消費節約の為、小型化していたのです」
「なるほど」
小型化すると魔力消費抑えられるのな。
「で、通行してはいけませんか?」
流石に姿を見せたから大丈夫だろ。
「あっ、はい。これに記入して規定額納めて頂ければ」
従魔に対する簡易情報の記載と金貨5枚払って中に入った。
高額だが、記録にない魔物を入れるのだ仕方ない。
「おお、この街良いな!」
街は、面白い構造をしていた。
大きな水路を境界にして、区画を分けていた。
「エリアによって役割が違うんですよ」
カリスさんが説明してくれる。
商業都市ウェンは、5つの区画に分けられている。
まず、俺達のいる西エリア。ここは、商業エリアになる。
ゲート側で有ることと水路から大河に接続出来る為、河運で栄えている。商業ギルドやホテルなどは、このエリアに含まれていた。
北エリア。住居区画。
原則、ほとんどの人間が北エリアに住んでいるようだ。
東エリア。職人エリア。
加工や解体など。様々な職人が集うエリアとなっていた。
冒険者ギルドは、このエリアにあるので後で行かねば。
南エリア。いわゆる夜の区画。
居酒屋が多く、夜の店はこのエリアにしか無いそうだ。
こういうのは、1ヶ所に集める事で被害の拡大を抑える役割があるそうだ。
騎士詰め所もこの場所に有り、問題が起こっても対処しやすくなっている。
そして、中央。都市の管理運営エリア。
都市の重要な施設は、このエリアに置かれている。
「それでは、私たちは商売に行ってきます」
カリスさんたちは、この街で馬車7台分の荷物を取引するそうだ。
その手続きや交渉もあって、ギルドの方へ出かけて行った。
その間、暇なので買い物に出かける。
事前に調べた購入リストの準備よし。
まずは、東。職人エリアへ行こう。ナイツを買う為だ。
東エリアは、レンガ造りの建物が多くヨーロッパの街に来た気分になる。まぁ、行ったことないけど。
カリスさんにオススメされた店『プレイヤー』にやって来た。この店は、ボードゲームなどの遊び道具を専門にした店なのだそうだ。
木の扉を開けて中に入った。前が店になっており、奥が工房の様だ。
「いらっしゃい。何をお求めで?」
カウンターに座り、パイプを吹かし新聞を読む爺さんがいた。
「ナイツの一式セットを3つ下さい」
「ほぉ〜」
真面目に対応する気になったのか?読んでいた新聞を横に置いて正面を向いた。
「材質はどうする?木、石、ガラスと三種類あるよ。それによって値段が変わる」
「駒を見せて貰えますか?」
「良いよ。見本を出そう」
カウンターの引き出しを弄ると薄い木箱を3つ取り出した。
「これが儂の造った駒さ」
「すげぇ……」
箱の中に納められた駒はどれも見事なものだ。
例えば、木。チンケな削りでは無く、細部まで彫り込まれている。これだけで工芸品と呼べる程だ。
「触っても?」
「あぁ、構わんよ」
木は、温かみを感じる。石は、手触りが良く指にしっくりくる。ガラスは、冷たいと思ったが感じない。これからは、魔力を感じる。
「乾燥の魔法刻印ですか?」
「おっ、気付いたか?ガラスは、湿気で変色したり結露が出たりするからな」
当たっていた様だ。なら、刻印師でもあるのか。
「リリアたちはどれがいい?」
「私は、木ですね。いい匂いがします。桃でしょうか?」
「さすが、エルフじゃ。木には詳しいのう」
「ハイエルフです。ハイ。間違えない様に」
「イナホとギンカは?」
「私も木ですね」
「私は、ガラスが良いです。この氷細工の様な美しさが素晴らしいです」
石は、いないか。俺も木がいいが、石も捨てがたい。
「基本、一から製作すると聞きました。製作には、どのくらいかかりますか?」
「既に、木なら2つ、それ以外なら1つはあるよ。新しく作るなら木は1週間、石なら2週間、ガラスなら1ヶ月だな。気付いた通り刻印する必要があるからな」
ストックがあるのか。なら、直ぐに手に入りそうだ。
「では、今出来ている4つを全て下さい」
3つ買うつもりだったが、全員出来る様に4つ買おう。全員でトーナメント戦するのも面白そうだ。
「太っ腹じゃの。良いのかい?ガラスとかは値段が張るぞ」
「金には、余裕があるので大丈夫です。言い値で買います」
「ふふ、まいど」
値段は、木が大銀貨1枚、石が大銀貨3枚、ガラスが金貨10枚だった。ガラスだけは、刻印があるので値段が飛び抜けていた。
「兄さん、金持ちだな。貴族か何かかい?」
「ただ、Sランク冒険者なだけさ」
「ほう、それは大したものだ。他にも色々取り扱ってるから欲しい物があったら気が向いたら来てくれよ」
「子供用とかも?」
「当然あるよ」
赤ちゃんが、産まれたら買いに来よう。
「なら、何を買うか考えて来ます。では、また」
なかなかに良い買い物が出来た。