すき焼きと関所を越えて
久しぶりの我が家で飯を食う!
「砂クジラの肉ですき焼きを行います!」
『おぉ〜!』
皆から歓声が上がった。
「?」
ルイさんは、知らないから無理もない。
うちの娘たちは、以前食べて味をしめてるからな。
「フィーネ、卵は?」
「十分です」
「リリス、米は?」
「20kg有ります」
「ミズキ、鉄鍋は使えるか?」
「問題有りません」
「よし決定!各自準備を開始!!」
『了解』
すき焼きが始まる。
まず、鍋をよく熱し、クジラ脂を入れ全体に引く。
肉と一緒に貰って来た。
次に、クジラ肉を焼く。
表面を一気に焼くことによって旨みを閉じ込めるだったか?
肉に焼き色がつけば、砂糖・醤油を大量投入。
2つが混ざれば、火の通りが遅い白菜や白ネギなんかを入れる。
芯から入れるといいぞ。
ここまでくるとつゆが減るのでまた、砂糖と醤油、更に日本酒も入れて味を整える。
ある程度、野菜に火が回れば残りの具も入れる。
糸こんにゃくが無いのは辛いが気にしない。
肉があれば、大丈夫だ!俺は!!
野菜がしんなりとしてもう食べれるくらいになったら菊菜を入れる。
関西風のすき焼きが完成だ。
……我流だから正式なのは、知らん。うちではこうだ。
関東のやり方も知らん。
正直、美味ければ良しだと思う。
それでは、卵に漬けて肉を食う。
「美味いわ〜!」
すき焼きでご飯が進む。
「お替り!!」
アイリス、早っ!?
「だって、美味しいんだもん!」
『お替り!』
続々とお替りが聞こえる。
俺も負けてられないな!
そして、ルイさんが意外に食う。
既に4人前に入ってる。
すき焼きは、相変わらず皆に好評だった。
「ここの料理は、どれも素晴らしかったですが、今日のは一味違いますね」
ルイさんにも好評だった。
食後、俺たちは、転移で宿街サイカに戻る。
宿へ戻ると……何故か、宴会になってた。
「おかしいでしょ!1時間ですよ!1時間!!」
「分かります!1人で狩るってバカじゃないですか!!」
カリスさんとゴーヴァンさんがやけ酒してたけど気のせいだろう。
バカって、俺の事じゃないだろうな?
翌日。
「腰が痛い……」
昨日の夜、イナホとリリアのお願いを聞いた。
「「子供を下さい!」」
「………」
「「(2人の熱い視線)」」
「それは…運だから………頑張ります」
そこから頑張った。
ルーン無しで頑張った。
防音結界、張らないとマズいくらい頑張った。
結果、腰が痛い。
その日は、腰が痛いのを我慢して馬車へ刻印して回った。
更に翌日、開放されたので関所を越えて砂漠に入る。
刻印のおかげで移動時間が大幅に減少中らしい。
「新しい予定では、商業都市ウェンまで12日でしたが、9日で行けそうです」
揺れ軽減で2日短縮。
砂避け対策で3日短縮した。
砂に車輪が取られないのがデカいらしい。
また、砂クジラの影響で周囲に魔物は、あまりいない。
殆どの魔物が、砂クジラに食べられたり逃げたりしたからだ。
それでも居るのは、飛行系の魔物。
例えば、これだ。
名称:エリッジバード
危険度:C+
説明:魔物の死体や小動物を喰らう。知性が低いので強かろうが弱かろうが襲う。食用不可。肉は、雑味が有りパサパサしてる。超パサパサしてる。
と、書いてあるように空から襲ってくる。
「食えないのなら、ただ死ね!」
ロングバレルを装備して3人で射撃。
射程が馬車後方まで届く為、他のチームをフォローする。
特に、Bランクチームの冒険者たちが不味い。
弓矢が基本当たらない。
なのに、無駄に射る。
だから、尽きるのは時間の問題だ。
そりゃあ、回収出来ないから減る一方だな。
そんな弓の扱いを見て、リリアが静かにキレている。
「扱いがなってません!」
仕方ないだろ。Bランクだし。
ちなみに、俺はちゃんと出来る。
リリアたちからもお墨付きをもらった。
……お世辞でないと思いたい。
一応、部活で弓道をした事がある。
異世界の弓は、和弓に近いから問題ないし。
リリアは、後で冒険者たちに指導するそうだ。
お手柔らかにお願いします。
そんなこんなで砂漠を行くとたまにオアシスがある。
そこをキャンプ地点にしている。
砂漠でキャンプをすると昼と夜の温度差により疲労がたまる。
だから、旅をする者は極力避ける様にしている。
オアシスは、砂漠の中の小さな森。
不思議だ。
現実でもあるが、この光景は異世界だなと思う。
「ユーリの兄さん。交代しますよ」
確か、レントだったか?
冒険者チーム『ガドナー』の1人。
「もう、そんな時間?じゃあ、頼みます」
オアシスは、希少な水源の為、魔物がやってくる。
だから、警戒を緩めれない。
「ところで、アレ止めなくて良いんですか?」
彼が指す先では、リリア主催でBランク冒険者のシゴキが行われていた。
「良いよ。使い物にならないし。代わりに俺が見張りをしてるからな」
正直、仕事を増やされイラってくる。
リリアがそっちに着こうとしたが、野郎の所にやりたくなくて俺が着いた。
「これで少しは、弓が上手くなるだろう」
「確かに、矢の無駄が多かったですからね……」
彼もそう思った様だ。
「嫌なら止めていいと言ったから大丈夫だろ?」
教えを乞うのは、自分の意思。
彼らも自身で不味いと思ったのだろう。
「それじゃあ、散歩してくるよ」
50mプール程の泉を中心とした森だが探索しがいがある。
というか、既に見付けてる。
名称:ムーサスップ
状態:新鮮。毒性なし。
説明:熟すまでは毒を持つ。黄色に熟したら食用可能。弱毒性だから食べても死にはしないが腹を降します。下剤として利用される事もある。その為、普食される事が少ない。
オススメ:バナナシェイクなどはいかがです?この暑さにうってつけですよ。
異世界バナナ見付けた。
ただし、毒あり。
「主様。それ、毒ありますよ」
木に登って刈り取っていたらイナホに言われた。
「色が変色して熟したら毒は消えるよ」
もう、一思いに木ごと持って帰るか?
「そうなんですか?」
「これなんかは大丈夫そうだな。イナホ!パス!」
鑑定で確認して、食べれる物をイナホに渡す。
「皮を剥いて中身を食べるんだ。こんな風に」
知らない様なので食べ方を教える。
「はぁ……うん!?おっ、美味しいです!」
見様見真似で食べたバナナの美味しさに、びっくりするイナホ。
この状況で、俺は違う事を考えていた。
イナホの小さな口に咥えられるバナナ。
「……イナホ。ちょっとこれをかけるね。更に美味しくなるから」
バナナにチョコレートソースをかける。
チョコレートは、リヒト共和国の名産らしく売っていた。
「そうなんですか?では、……うん!美味しいです!!」
無邪気に喜ぶイナホ。
「あっ!チョコレートが!?」
垂れるチョコレートを桜色の舌で舐め取る。
……めっちゃエロいな!
そして、この背徳感にゾクゾクする。
「お2人は、何をしているのですか?」
カリスさんがやってきた。
「これ、美味しいんですよ。どうです?」
カリスさんにもススメる。
「良いんですか?では、頂きます」
カリスさんに食べられるチョコレートバナナ。
普通にエロいだけだった。
そして、後ろで見ている男性諸君。
これが、合法的なエロだ。
彼女たちは、ただ食べてるだけたからな!
遊んだ遊んだ。超遊んだ。
2人を見ながら前屈みになってる奴もいたな。
あ〜っ、面白かった。
その後、探索を続けたものの、他に良いものは無かった。
無かったのだが……うん?
あれは、何だ?
オアシスから見た砂漠の中に白い塊があった。
気になったので近付いてみる。
「こっ、これは!?」
また、面白いものを見付けたのだった。