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護衛クエスト開始

 当日、イナホとリリアを連れて商隊に合流。


 冒険者チーム『ガドナー』のゴーヴァン・マクギリスとクエスト前に打ち合わせをした。


 彼が経験に基づく配置計画を挙げた。


 理由も合わせて教えてくれたので賛成した。


 冒険者各チームは、1台目、5台目、10台目、15台目に乗る。


 俺たちは、1台目。


 魔物対策。発見次第、対応出来る様にとの事だ。


 見張りは、チーム内で交代。


 夜は、まとまってキャンプ予定の為、合同で見張りにあたる。


 俺たちの場合、昼に2人、夜に1人で回す予定だ。


 俺は、魔力感知により視界不良でも大丈夫な為、常に夜を担当する事になった。


 ちなみに、これは建前。


 本音は、2人を少しでも疲れさせたくない。


 初めての護衛クエストな上に長旅だからだ。


 今回、冒険者ギルドから遠距離会話が出来るマジックアイテムを各リーダーに支給された。


 左耳に付けるソレは……インカムだな。


 ボタンを押すと大気中の魔力を吸収して発動。


 全員に声が伝わる様になる。


 俺も男の子だからどういう仕組みか気になって仕方がない。


 バラしてみたいが、壊したら賠償金を請求すると言われた。


 払えなくはないが、勿体ない。残念だ。


 違和感や危険を感じた場合は、これで情報を共有する事になった。


 そんなこんなで、1日目。


 馬車ってこんなに揺れるのな。


 舗装してない場所を行くから当然といえば当然だけど……。


 敷物しててもめっちゃ尻が痛い。


 これが1ヶ月続くのかと思うと絶望する。


 何とかならないか?


 ……何とかなった。


 衝撃吸収の刻印を馬車に施したら静かになった。


 移動中に寝れるくらい。


 商隊の休憩時にカリスさんから許可をとって全馬車に施した。


 しかし、これに伴い商隊の休憩回数が減少した。


 休憩回数が多いのは、馬車による疲労を抑える為だったからだそうだ。


 快適になった馬車のおかげもあってか、平和に1日が終わった。


 問題が起こったのは、2日目。


「は〜い、リーダー各員に連絡です。魔物を感知しました」


 インカム越しに連絡する。


「個体名称は? それと数と位置は、どうなってますか?」


 ゴーヴァンの声が返ってきたから問題なく伝わってる様だ。


 魔力感知で確認した結果を伝える。


「名称は、レギオンウルフ。総数32匹。左右に分かれて囲まれてる」


「!?」


「馬車を止めて撃退しますか?」


 ゴーヴァン以外の声が聞こえた。


 確か、『オラクル』のエヴァンだったか?


 苗字は、聞いていない。


「それは、ダメ」


「何故です?」


「背後から馬車に追いついたにもかかわらず、追随してる事から止まるのを待ってる可能性がある。止まった瞬間、襲われる。各馬車に待機してる訳ではないから護衛が間に合わない」


「なら、どうやって対処を?」


「馬車は走らせたまま、俺とイナホで右側を制圧します。弓持ちは、漏れたのが来た場合狩ってくれ。それが終わったら連絡するので反対側も頼みます」


 イナホの方が手数が多い為、制圧には向いている。


「「「了解」」」


「イナホ!準備は良い?」


「問題有りません!主様!」


「リリア!ロングバレルと氷の竜撃弾(ドラグニルバレット)を渡す。これを使って漏れた魔物を狩ってくれ。ただし、火だけ絶対使うな」


 聖錬銃用強化パーツと渡したくなかったが仕方なく新しい竜撃弾を渡した。


「何故、ダメなんですか?」


「爆音で馬が暴れかねない」


「了解しました」


「あと、カリスさん!お願いが有ります!」


 馬車の中にいるカリスさんに声をかけた。


「はい、何でしょう?」


「貴方の分のインカムをリリアに貸して下さい」


 実は、冒険者ギルドから支給されたのは、全部で5個。


 その1つをカリスさんが持っている。


「リリアさんに?」


「俺の指示を直接伝えたいからです」


「分かりました、どうぞ」


 カリスさんから受け取り、リリアに渡す。


「では、作戦開始だ」


 イナホと共に転移。


「ガウッ!?ガウガウッ!!」


 気付かれた。珍しい。匂いに敏感なのか?


 まぁ、どうでもいい。狩るだけだ。


「イナホ。背中は任せろ。好きにやれ」


「あぁ……お任せ下さい!主様!」


 なんか妙に燃えてる気がするけど気のせい?


 レギオンウルフは、俺たちに気付いて集まってくる。


「半分任せる。行くぞ!」


「はい!」


 いつも通り斬って斬って斬りまくる。


 避けた奴は、銃で撃ち落とす。


 ……こっちは、もう直ぐ終わり。


 イナホは?


「終了しました」


 マジで!?


 魔力感知で確認する。


 ホントに終わってた!!


「すまん。急ぐ」


 まさか、先に終わるとは思わなかった。


 直ぐ様、複数同時に狩れる位置への転移を繰り返し終わらせた。


「終わりましたので、反対に移ります」


 予定通り、インカムで連絡を入れた。


「よし、反対に行こう。イナホ」


「はい、主様!」


「ちょうどいい。ゲームをしよう。1番狩れなかった人がお願いを1つ聞くって事で」


「えっ!? がっ、頑張ります!!」


 今度は、負けないぞ。





 *******************




 何だ、この状況。


 ゴーヴァン・マクギリスは、困惑していた。


 馬車の上から見ていて、どんどんレギオンウルフの数が減っていくのを確認出来た。


 Sランク冒険者のユリシーズだけなら分からなくもない。


 しかし、1番狩っているのは、連れていた獣人の少女。


 両手のマジックアイテムから放たれる魔法が、レギオンウルフを一撃で沈める。


 しかも、彼らはゲーム感覚でやっているのだ。


「マジかよ……」


 一緒に見ていた仲間もこの状況に驚きを隠せない。


「ゴーヴァンさん!そっちに4匹行きました!お願いします!」


「っ!? お前たち構えろ!」


 森からレギオンウルフが抜け出して来た。


「射て!!」


 合図と同時に弓矢が複数放たれる。


 それらは、弧を描きレギオンウルフへ当たーー。


 らなかった。マズい。


「急いでつがえろ!」


 レギオンウルフは、直ぐそこまで迫っている。


 もう一度、魔物に狙いをつけ……ようとしたら凍結した。


「「「「はぁ?」」」」


 レギオンウルフは凍結後、粒子になって消えていった。


「リリア。グッジョブ!」


「ありがとうございます、ユーリ様!」


 この声は、ハイエルフの娘か? 彼女が何かしたのか?


 話から察するに彼女が倒してくれたらしい。


「制圧終了したので戻ります」


 彼の声が響いてきた。


 かかった時間は、5分。


 5分で彼らは32匹のレギオンウルフを殲滅した。





 *******************





 負けたよ。手数で負けたよ。


 こっちには15匹いたが、そうそうに4匹逃げた。


 で、俺が4匹倒す間にイナホは6匹狩った。


 数が合わない?最後の1匹は?


 最後の1匹は、リリアが狙撃した。


 俺が狩ろうとした奴が目の前で凍結した。


 俺も素直に銃だけでやるべきだったかな?


 結局、イナホ6匹、リリア5匹で、俺4匹。


 2人に負けた……だと!?


 まぁ、約束はイナホだけだから……。


「ユーリ様。ゲームの件、私も参加したのでお願いします。最下位は、ユーリ様ですので」


 あれ? なんで知ってるの?


 ……インカムのボタン押しっぱなしだった。


 えっ、リリアのお願いも聞かないといけないの?


 そういえば、イナホだけとは言ってなかったな。


 別に構わないか。


 さすが末っ子、ちゃっかりしてる。


「ok。分かった。良いよ」


「ありがとうございます」


 後に、この約束が原因でユーリが腰を痛める事になるとは知る由もなかった。

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