新しい武器と昇格試験
昼から冒険者ギルドにやって来た。
「眠ぃ……」
昨日は、深夜まで皆の武器の調整をやっていた。
その為、ほんとさっき起きた。
俺の銃も溶かして新しく造り直した。
ルイさんが氷の竜鱗とは別に、自分の竜鱗もくれたからだ。
聖属性の竜鱗は、どの属性とも相性がいい。
武器に加えると浄化の効果が付与される。
今回、4名の武器にも竜鱗を加えて造り直した。
これにより、どの魔法を放っても浄化効果が付与される。
俺、頑張った。
たぶん、今までで最高の出来だろう。
しかし、名前がな……。
夜中の変なテンションのせいか?
それとも造る最中に飲んだ酒か?
厨ニくさい名前を付けてしまった。
しかも、鑑定の名称欄にそれで表記される様になってた。
名称は、聖錬銃『ジャッジメント』。
起きて確認したときは、恥ずかしさのあまり転げ回ってしまった。
ついでに、4人のも付いてた。
俺がホントに付けたの?
ハイエルフ組のは、聖錬銃『トリニティ』。
なんで、トリニティ? 三姉妹だからか?
イナホのは、聖錬双銃『カノン』
こっちは、ホントに何を理由に付けたんだ?
「考えるだけ無駄か」
「何がです?」
俺の独り言に対して、横にいたリリスが反応した。
「ああ、武器の名前だよ」
「何か、問題でも?」
「何を理由に付けたんだろうって」
「妙なテンションでしたし、仕方ないんじゃないですか?」
「リリスたちから見てどんなだったんだ?」
「イーヒヒヒッと笑い声を上げながら鍋を煮詰めていました」
「何処の魔女だよ!?」
それ、煮詰めるじゃなくて溶かすなんだが。
さて、お喋りはこれくらいにして中に入るか。
「さて、行くぞ」
『はい!』
冒険者ギルドの中に入ると相変わらず視線が刺さってくる。
今日は、人数が多い事もあってきつい。
さっさと受付に行こう。
「兄貴!お久しぶりです!」
誰かと思ったらバルトだった。
「おっ、久しぶりだな。元気してたか?」
「お陰様でとうとうAランクに成りました」
「マジか。凄いな」
「ですが、まだまだです。精進しないと。して、そちらのお嬢さん方は?」
「うちの娘だよ。昇格試験受けさせに来た」
「なるほど。でしたら、よろしくお願いします。俺は、本日の昇格試験で盗賊役の試験官をさせて貰います」
「おお、凄いじゃん。試験官って信頼されないと出来ないだろ?」
余程、バルトたちはギルドに信頼されてる様だ。
「いえいえ、手隙きが俺たちなだけですよ」
「でも、立派な事だよ。あっ、昇格試験なんだけどーー」
「手は、抜きませんよ」
「違う違う。むしろ、気を抜くなよ。俺が連れてきた意味を考えろ」
「はい? わっ、分かりやした」
「じゃあ、また後でな」
俺たちは、受付のお姉さんに言って2階に上がった。
「これより昇格試験を開始する!」
冒険者ギルドの訓練所へ案内された。
リリスたちだけと思いきや他にもいる様だ。
5人の若い冒険者がいた。
まぁ、若いと言っても20代中盤だがな。
「試験科目は通常通りーー」
2科目行われる。
まず、1つ目が対人戦の試験。
バルトたち試験官と戦う。他人と連携しても良いし、ソロプレイも構わない。サポートに徹するのも有りだ。それらを総合的に判断される。
2つ目が魔物戦の試験。
数種類のゴーレムと戦闘する。
ウッドゴーレム → ストーンゴーレム → アイアンゴーレム
の順で行われる。
「魔物とかじゃないんだ」
「魔物だと管理が大変ですし。それに数が用意出来ませんから」
試験官の一人が教えてくれた。
まぁ、アイアンゴーレムは命令次第で、危険度A相当になるからな。
そんなこんなで試験が始まった。
対人戦の試験は、護衛対象を守りつつ敵を制圧するもの。
荷馬車を背に対象を保護した状態からスタート。
「へへっ、安心しな!命までは取らないよ!」
ナイフを構えたバルトがそう言い出した。悪役似合うな。
「さぁ、やっちまうぞ!お前たち!!」
『おうよ!』
バルトたちが冒険者に迫る。
『スタンショット!』
『えっ?』
あっ……俺は何も見なかった。
リリスたちの射撃で吹き飛んだバルトたちなんて知らない!
帯電して痙攣しているけど気のせいだ!
ちょっと泡を吹いて奴もいるけど、ポーションを試験官に渡しておけば大丈夫だろう!
「えっと、終了します……」
『………』
皆、リリスたちを見て呆然としている。
「ユーリ様、やりました!」
「人に対しても有効の様です!」
「もう少し、威力あげても良いのでは?」
「主様! コレ、しっくりきます!」
そんな事は、気にも止めず喜んでいる。
「がっ、頑張ったな」
『はい』
対人戦の成績は、皆、A評価だそうです。
次で、A評価を取ったら確定でBランク冒険者になるな。
「つ、次は、魔物戦の試験をします」
試験準備が始まった。
倉庫からゴーレムが並んで行進して来る。
「今からこれらと 1 対 1 で戦ってもらいます」
もう、オチが読めたな。
まず、ウッドゴーレム。
冒険者たちは、剣でバラバラにしたり、一太刀で機能停止にしたりして難なくクリア。
リリスたちもクリア。ただし……。
「ナニアレ」
銃に高密度の魔力で編まれたブレードが加わり、銃剣化してた。
それで切り裂く事、切り裂く事。細切れになってた。
「中・遠距離は問題ないけど、近距離対策に何かないかとベルさんに聞いたら教えてくれました」
「確かにベルなら持っててもおかしくないな」
魔導師の弱点は、近距離ってのは良く聞く。
冒険者の彼女が、そのままにするとは思えない。
「彼女の場合、杖を槍にする様です。槍使いとしての腕も相当なものです。3人でかかりましたが勝てませんでした」
「えっ、マジで!?」
3人の連携攻撃相手に!?
「マジです。近距離の場合、槍で牽制しつつ魔法を使うのでなかなか近寄れません。だから、更に槍の内側に入ったら防御のルーンに防がれました」
カトレアたちだけじゃなく、ベルも十分強いのな。
「次は、ストーンゴーレムで行います」
ここからは、冒険者たちも苦戦する。
勝てる者と勝てない者に分かれ出した。
リリスたちは当然、クリアだな。
ゴーレムの土手っ腹に風穴が空いて、行動停止している。
「……って、誰が竜撃弾許可したよ!?」
「いや、その、使ってみたくて!」
「ほっ、ほら、銃が新しくなったので試験です!試験!」
「やっておかないと実戦で使えないですよね?」
こっ、コイツら……。そんなに好きなのか?
「この試験での使用禁止!終了まで没収!!」
「「「そんなーー!」」」
悲鳴を上げていたが、一時没収した。
ちなみに竜撃弾を持たないイナホは、氷結弾で氷漬けにしていた。
イナホになら氷の竜撃弾あげても良いかな?
よく氷の魔弾を使うし。
誰のとは言わない蒼い竜鱗で作製した。
効果は、何処ぞのメカのアブソリュートゼロみたいに細胞レベルで凍結し砕け散った。
俺は、こっちの竜撃弾が好きだな。
「アイアンゴーレムで行います」
少し休憩を挟んだ後、アイアンゴーレム戦が開始した。
残った面子の関係上、まずは、リリスからだった。
「ユーリさん。やはり、ここに居ましたか」
呼ばれたので振り返るとビリーさんが立っていた。
「依頼主が到着しましたので、ギルド長室へ来て下さい」
「分かりました。でも、1人くらい結果をーー」
タタタタタタターン!!……ガラガラ。
マシンガンの様な連射でアイアンゴーレムが崩れ落ちた。
「……行きましょう。ビリーさん」
「いいんですか?」
「大丈夫です。全く心配いりませんでした」
没収してもやれるじゃねぇか!?
「では、行きましょう」
歩きながら、この後の結果が読めるのでどうしようと考えるユーリだった。
誰を連れて行こう。