一流料理人
「じゃあ、既存の食材からいきますね?」
ロゼットさんに連れてこられたのは、商会の会員食堂。
商会のって言っても普通の社員食堂と変わらない。
「そこら辺は、お任せします」
「はいよ。なら、トマトときゅうりのサラダ。フライドポテトを作るとしよう」
「包丁は、これを使うといい」
商会の料理長が包丁を貸してくれるそうだ。
「あっ、自分のあるから大丈夫。それより、オリーブオイルを鍋の半分まで頂戴」
「そんなに使うのか?」
「使うね。美味くなるなら」
一切、妥協しない。
「分かった」
油を入れて貰い、火にかける。
「油が熱くなる前に野菜を切るか」
トマトは輪切り、きゅうりは短冊切りにして岩塩を少し振ってサラダ完成。
じゃがいもは、皮を剥き、スティック状にカット。
「油がいい頃合いだ。じゃがいもを揚げる」
「なんだ、その調理は!?」
料理長が驚いている。
そういえば、揚げるって調理ないんだっけ?
「この行為を揚げるって言うんだよ。ナギサ麦を水に溶かしたモノを纏わせて揚げるのも美味いな。色々な肉や野菜、果物でも出来る」
沈んでいたポテトが浮いたら完成。
「浮いたら取り出す。塩をまぶして完成だ。皆さん、どうぞ」
「頂きます。……おお、サクッとしなんとも美味い」
「表面はサクッ、中はホクホク」
「美味い美味すぎるぞ」
「油は高いが、食材の単価は安い。その上、この味。売れるぞ!」
「塩っ気が酒にも合うよ。俺はそうしてる」
「ほう、それはセットで売れますな」
「ここいらで甘いモノといこうか。俺の持ってきたサツマイモな」
まず、これの皮を剥き、一口サイズにカットする。
熱した油、今、ポテトを揚げてたやつに入れる。
その間に水と砂糖をフライパンに入れ、ゆっくり加熱しながら水飴を作る。
「芋に串がスッと通るまで揚げる。その後、フライパンの水飴にくぐらせたら完成だ。黒ゴマを少量振りかけるのも有りだな」
大学芋です。
油が勿体なかったもんで。
「皮ごと蒸して中身を食っても美味い。カットしてサラダに入れるのも有りです」
「甘い!物凄く甘い!」
「これは、女性に売れると思います!」
「調理法も複数存在するのか!」
「マーチビーンズあるな。卵もあるか?生卵」
「いや、流石に置いてない」
料理長に聞いたが無いようだ。
やはり、腐ってる事が多いので卵は置いてないか。
「仕方ない。自前を出すか」
アイテムボックスに入れている新鮮な卵を取り出す。
マーチビーンズを火にかけ茹でる。
そして、サツマイモのカットしたものの一部を鍋で蒸す。
蒸し器が無いので、普通の皿の中央に高さのあるコップを置き代用。
鍋に仮蒸し器を置いて、皿の上にサツマイモを置く。
皿が浸からないくらいの水を入れて蓋をする。
その間に、生卵を使ってマヨネーズ作り。
アイリスがいないので魔法で混ぜる。
「待て待て、そのソースはなんだ?」
「マヨネーズ」
「マヨネーズだと!?王宮の料理長が使っている、あの!?」
「あっ、ちゃんと使ってるんだ。レシピあげたんだよね」
「なんだと!?」
「おっ、蒸し上がったな」
料理長がなんか言ってるけど、スルーでいいや。
蒸したサツマイモと茹でたマーチビーンズをマヨネーズに絡めたら完成。
味見。問題無し。
「どう?」
「ほう。これはまた、さっきと違った味わいですな」
「自分は、こっちの方が好きですな」
「いやはや、ここまでとは」
「デザートいっていい?とはいえ、切るだけだが」
「どうぞ」
「パイナップルは、表皮と芯が硬いので捨てる。こんな風に切るといい」
パイナップルの上と下を切った後、縦に表皮を剥いていく。
後は、芯を避け、縦に切っていけばいい。
「パイナップルは、焼いても美味いからオススメです。あっ、イチゴはそのままでどうぞ。日光で乾燥させても美味しいです」
「この紅い実は、ラグスのグラベリーに似ているな」
「ああ、だが、糖度は段違いだ」
「乾燥出来るのなら保存もきくな」
どれもこれも好評だった。
グゥ〜〜。
味見はしたけど、ちゃんと食っていないからお腹が減った。
「ロゼットさん。昼まだなんで。厨房借りて昼食わせて貰いますね」
「あっ、すみません。気付かずに」
「いえいえ。満足して頂いた様で何よりです」
さて、何食おうか。
マヨネーズが少し残っているな。
アイテムボックスからグランドベアの肉とワサビを取り出す。
クマ肉にナギサ麦をまぶし、油を引いたフライパンで焼く。
クマ肉だから臭いと思ったら全然違った。
偏見良くない。
焼いてる間に次の工程に移る。
ワサビを擂り下ろして、ワサビマヨネーズへ。
醤油に砂糖とみりんを溶かし、焼いているクマ肉と絡める。
クマ肉の表面に照りが付いたら皿に移し、ワサビマヨネーズをかけて完成だ。
「それでは、いただき……手を離してくれませんか?」
ロゼットさんと料理長に肩を掴まれた。
「いや、気になったもんで」
「後学の為に少し頂けないかと」
「え〜っ、俺の昼飯なんですが」
「分けてくれるなら、うちの人気メニュー出すからさ」
「そうです。代金をお支払いしましょう。まず、そのお肉は何です?」
「グランドベア」
『!?』
「カリーナ産のグランドベア。肉質が厚くて美味い」
「ぐっ、グランドベアですか?」
「そうです。俺が狩ったやつですよ。皮とかはギルドに売りましたけど、肉だけは売らなかったので」
「ははっ、そんなまさか」
冗談だと思った人の発言をロゼットさんが否定した。
「いや、あり得る。ユーリさんは、Sランクだしな」
『Sランク!!』
あれ、冒険者に見えないのかな?
「アンタ、一流の料理人じゃないのか?」
「俺がいつ料理人って言ったよ。これは趣味だ」
料理人だと思われてたらしい。
弱そうに見えるからとかじゃないよね!?
きっと、そうじゃないよね!?
「その話は置いといて。俺、もう食っていい?」
「ちょっと待て!直ぐに作る!」
「それの四分の一を、金貨10枚でどうでしょう?」
ロゼットさんがそう言って来た。
金貨10枚ならあげてもーー。
「金貨10枚だと?俺は、15枚出す!」
「じゅっ、18枚!」
「22枚!」
あれ? オークションになってねぇ?
「馬鹿!グランドベアだぞ!40枚だ!」
いきなり金額が、ぶっ飛んだよ。
「出来たぞ!これが俺の料理だ!」
「早いな」
料理長に出されたのは、野菜スープ。
「もう作ってあって、温めるだけだった。このスープは、ロックバードの骨をじっくり煮込んで出汁を取り、肉と野菜を加えて塩こしょうで味付けしたものさ」
……どっかで聞いたレシピじゃねぇ?
「誰に習った?」
「王宮の料理長だが?」
俺のレシピやん!
「今度会ったら、ユーリに食って貰いましたと言っといてくれ。そしたら、分けてやるぞ」
「うん?分かった」
「で、そっちは誰が勝ちました?」
「ええ、私が勝ちましたとも」
ロゼットさんだった。
「貴方、最安値提示してませんでしたか?」
「どうせ、皆が参加して来ると思ったので最安値を提示しただけですよ。誰も参加しなければ、その額で食べれますし」
食えない人だな。
「分かりました。どうぞ」
「おお、これがグランドベアですか」
「頂くぜ!」
「「………」」
2人共、一口食ったら意識が飛んだ。
「お〜い、帰ってこ〜い!」
「「ハッ!!」」
「ヤバい。美味さのあまり意識が……」
「すっ、素晴らしいです」
そんなこんなで騒ぎになったが試食会は、無事終了した。
ちなみに、グランドベアの金額は金貨55枚となりました。




