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商会ギルド

 以前から話していた商会ギルドにやって来た。


 冒険者ギルドと違い、見事なまでに小綺麗だ。


 冒険者ギルドは酒場のイメージだが、商会ギルドは会社のイメージがする。


 人の出入りも盛んに行われていた。


 中に入ると、仕切られた席が複数見受けられ、交渉による喧騒が響き渡る。


 競り場かなと思う程だ。


「受付……受付は、あっちか」


 キョロキョロ見て周り、やっと受付らしい所に辿り着いた。


「すみません。登録したいのですが、ここは受付ですか?」


 カウンターに座る女性へと声をかけた。


「はい、そうです。ここで登録も行っています」


 受付だった様だ。


「作物とかを卸したいのですが、伝手がなく。商会登録すれば紹介して頂けると聞いて来たのですがあってますか?」


「物にも寄りますが、大抵の店は、紹介出来ます」


「なら、登録をお願いします」


「かしこまりました。登録には、身分確認が必要になります。何か紹介書をお持ちですか?もしくは、ギルドカードの様な身分を証明出来るものは?無ければ時間はかかりますが、商会の身分証を発行出来ますよ」


「冒険者ギルドのカードが有ります」


 冒険者ギルドのカードをお姉さんに渡す。


「承ります。Sランクカードですね。凄い。えっと、名前は……ユリシーズ・ヴァーミリオン。ヴァーミリオン?」


 お姉さんの視線が俺とカードを行き来する。


「しょ、少々お待ち下さい。あっ、カードを少し預かっても?」


「構いませんよ」


「では、お待ち下さい」


 頭を下げた後、直ぐに去って行った。


 待つこと、10分。


 お姉さんは、箪笥の様な男性を連れて戻って来た。


 長身で、髪は角切り、鼻の下にブラシの様な髭を携え、身体付きは四角い。


「お待たせして、申し訳ありません。私、ここの副会長を務めさせて頂いてるロゼット・トリーアスと申します。会長は、只今ラグス王国の商業都市ウェンでの会議に行っておりまして、私が担当させて頂きます」


 商会の副会長だった。会長は不在らしい。


「ユーリ・シズです。よろしくお願いします」


 握手を求められたので握り返した。


「失礼。ユリシーズ・ヴァーミリオンでは?」


「公式ではそっちなんですが、今のは本名です」


「不躾な質問ですが、竜種でいらっしゃいますか?」


「ちっ、違いますよ。妻が竜種なだけで」


「奥様の名をお伺いしても?」


「マリー……マリアナ・ヴァーミリオンです」


「マリアナ……竜王様の御息女であらせられますね」


「そうです」


「……立ち話も何ですのでこちらへ。すまない、ミラ。お茶を頼む」


「了解しました」


 お姉さんの名前は、ミラというらしい。


「ささっ、こちらに」


 案内に従い移動した。





 案内された場所は、豪華な応接室だった。


 別に向こうの机でも良かったんたが……。


「では、ご要件をお伺いしましょう」


「うちで育てている作物が増えたので買取って貰いたのです。何処かお店を紹介して頂けると有り難いのですが?」


「作物ですか?現物は、お持ちで?」


「今、出しますね」


 アイテムボックスから野菜を詰めた籠を出す。


「アイテムボックス持ちですか。羨ましい限りです。中を拝見しても?」


「どうぞ。手に取って下さい」


 籠を空け、中の野菜や果物を見聞するロゼットさん。


「ほお、これはなかなか」


「食べてみますか?この果物なんか手で皮を剥けるので直ぐに食せますよ」


 ミカンをススメてみた。


 家にも多いしな。昔使ったポーションの所為ではないと思いたい。


「よろしいので?」


「どうぞどうぞ」


「では、早速。皮が薄い訳ではないですが、柔かいのですね。……頂きます」


 口に含み、味を確かめる。


「こっ、これは!?みっ、ミラ」


 後ろに控えていたミラさんを呼ぶ。


「君も食べてみてくれ!」


「えっ、良いのですか?」


「あぁ、私の味覚がおかしくないか知りたい!構いませんね?」


「えぇ、どうぞ」


 あれ、腐ってたかな?


「では、1つ。……ほぁ〜!」


 なんか、うっとりした表情をしている。


 腐ってなかったな、良かった。


「で、買取りなんですけどーー」


「これは、商会ギルド自らが買取ります!」


「えっ、良いんですか?」


 そっちだと交渉も楽で助かる。


「構いません。商会ギルド自体も店を出していますから」


「そうですか。で、いくら程になりそうですか?特にそのミカン」


「他も見た事のない物なので調べたい所ですが、ミカンは食べたので分かります」


「ほう」


「これ1つ、金貨1枚でどうでしょう?」


「ぶっ!?」


 出されたお茶を飲んでなくて良かった。


 飲んでたら吹いたな、たぶん。


「きっ、金貨1枚?」


「金貨1枚です。流石に安すぎると言うのでしたら金貨2枚でどうでしょう?」


「高過ぎないか?」


「いえ、とんでも有りません。それだけの価値があると見受けます」


「ミラさんも高過ぎだと思いますよね?」


「いえ、むしろ安過ぎると思います。しっかりした甘みと酸味のバランス。しかも生で食べられる。これは、売れると思います」


「マジか……」


 1個、金貨2枚。現代換算で2万円。


 何処の高級ミカンだ。


「今、50個程あるけど買いますか?」


「買わせて頂きます」


「他のどうします?コンロとか有れば、簡単な調理をお見せ出来ますけど?」


「お願いします。知らない物が殆どですので」


「分かる物は?」


「じゃがいも、トマト、キーウイ、ラプリカ、ナギサ麦くらいですかね」


 サツマイモとパイナップル、イチゴは知らんのか。


 キーウイは、きゅうりの事だな。


 家じゃ、普通にきゅうりって言ってるから忘れてた。


「トマトとキーウイは、サラダ。他は、何かしらを作るか」


「では、食堂に行きましょう。そこなら器具も揃っていますし」


「試食に何人か、呼びますか?」


「そうだな。役職を数名捕まえて来てくれ」


「分かりました。……ちなみに、私も参加しても?」


「俺は、良いですよ」


「だそうだ。君も混ざるといい」


「よし!」


 ミラさんは、ちっさくガッツポーズをしていた。


「では、行きましょう」


 また、案内されて施設を歩く。


「おっ、副会長が案内してる」


「あのコート。ユリシーズか」


「なんか、珍しいの卸しに来たのかね?」


「ちょっと気になるな。行き先食堂のようだし、ついていこう」


 いつの間にか、後ろに団体さんが出来た。


 誰も彼も商売の情報が欲しいのだろう。


 商魂逞しいな。

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