表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/484

閑幕 従者たちの心配

 星々が瞬く、世の狭間。


 神々が住まう、その場所で話し合う者たちがいた。


「今日もタナトス様は、見ておられるのか?」


「そうですね。休憩中ずっとです」


「面白い何か、なんでしょうか?たまに、クスッと笑うのが見て取れますし」


「業務に支障がないから良いが、少し気になるな」


 彼らは、タナトス付き従者である。


 タナトスの命により、世界の管理に携わる。


「誰か、何を見てるか知らんのか?」


 その従者の疑問に答えが出る。


「下の世界を見てるみたいですよ。デスクに寄った時見えましたから」


 それに答えたのは、最年少の従者だ。


「何か、あったか?」


「異変は、感じていませんね」


「昔の様な大戦の兆しも無いですし」


「そもそも、たまに笑われるのですからヒトを見ているのでは?」


「新しい勇者が生まれたとか」


「今の魔王は、マトモだから生まれないだろ。あれは、抑止の存在だし」


「考えるくらいなら聞きましょう。自分、一思いに聞いてきます」


「ちょっ!?」


 止める前にタナトスへと近付いていく最年少従者。


 最年少なだけあって、恐れを知らぬ。


 心配のあまりオロオロする従者たちであった。





 **********************





「おやおや、まぁまぁ」


 竜王祭の一件で妻が増えた様だ。


 しかも、奴隷の少女たちを引き取った。


 薬師のスキルも順調そうだな。


 エリクサーで傷を癒やしてあげていた。


 寿命が伸びることを忘れてるみたいだが、特に問題ないだろう。


 創る人のスキルも活躍中か。


 おっ、刻印に気付いた様だ。


 最低限の魔法知識があるから刻印も活かせるだろう。


「これは鋳造だな」


 この世界に鋳造という概念はない。


 彼の世界で生まれたモノだ。


 魔法がない故の生きる知恵の1つ。


 それに彼が学んだ技術でもある。


 これは、銃か。


 銃の構造に魔法を組み込んだのか。


「しかし、出回るのは困るな」


 あっ、ヤバさに気付いた。


 というか、竜撃弾(ドラグニルバレッド)凄いな。


 特級クラスの威力があるぞ。


 まぁ、護身用にするらしいし、本人しか造れないから大丈夫だろう。


「タナトス様」


 いつの間にか、側に従者が来ていた。





 ********************





 私は、タナトス様付きの従者でエピメテウスという。


 タナトス様の様子が気になって声をかけてみた。


「どうしました?今、休憩中でしょ?それとも、緊急案件ですか?」


「いえ、そういう訳ではありません」


 タナトス様は、何時もと変わらずに接してくれる。


「ただ、楽しそうだなと思いまして。何を見ているのですか?」


「ふむ。……一緒に見ますか?」


 予想外なお誘いがきた。


「良いのですか?」


「ええ、貴方なら特に問題もなさそうですしね」


「でしたら、是非」


「では、こっちへ」


 タナトス様の側にて、水鏡を見る。


 そこには、一人の青年が映っていた。


「彼は……半神(デミゴッド)ですか?」


 私の鑑定による結果だ。


「ええ、人から進化しました」


 それはなんとも……。同情を禁じ得ない。


「相当、苦労したのでしょうね」


 人から半神への進化は容易ではない。


「そうですね。5人分もの不幸を背負ってましたし」


「不幸?」


「いえ、こちらの話です。おや、とうとう属性剣を作った様ですね」


 映像には、属性剣を鍛冶により造る様子が映されていた。


 それを武器にするのかと思っていたら違った。


「えぇーー、なんか農業に使い始めたのですけど……」


「ほう、色々な用途があるんですね」


「あっ、ズルい。釣りであんなのって」


「くっくく……」


「クラーケン!やはり、アレでしょうか?」


「アレでしょうね」


 彼は、クラーケンへ向けて大型の銃砲を構えた。


「わぁーお、上部が吹き飛んだ。アレ?あの弾って」


「神剣フラガラッハ。それの形態変化したものですね」


「あげたんですか?」


「内緒ですよ」


「言いませんよ。宝物庫で眠るよりは良いでしょう。長老なら激怒しそうですが」


 タナトス様付きの従者の中に口煩いのがいる。


 最年長な事もあり、自分たちは裏で長老と呼んでいる。


「なら、他言無用を命令します」


「承りました」


「おお、奥さん妊娠しましたね」


「彼女、スライムなんですよ」


「マジですか?」


「マジです。今は、スライムになれない様ですけどね」


「スライムと半神の子って……何です?」


「おそらく、魔族ですね。魔人との交配で産まれた種族ですし」


「魔人。一部の魔物を指す言葉でしたっけ?」


「そうですよ。人型と魔物体の2つの姿を持つ者と思っている人が多くいます。しかし、魔物体が人型になってる者がいますからね。知性の有る二足歩行の魔物って認識で大丈夫です」


「なるほど」


 大変、勉強になった。


「こんな面白いものを一人で見ていらしたのですね」


「あはは、聞かれませんでしたからね。今や仕事の合間の気分転換に見てます」


「ズルいですよ。俺ももっと見たいです」


「なら、次から誘う様にしましょうか?」


「ホントですか!?」


「ええ、ただし、彼には内緒でね」


「分かっていまよ。口煩いですから」


「では、今日はこれくらいにしましょう。まだ、休憩時間ありますし。休んでは?」


「そうします」


 タナトス様は、また、仕事に戻っていった。


 さて、俺も休憩にーー。


「おい、エピメテウス」


 捕まったよ。


「結局、何を見ていたんだ?」


 やべぇ、何て言おう。


「Sランク冒険者が増えたみたいでしてね。その活動を見ているようです。色々な人がいて面白かったですよ」


 嘘は、言っていない。嘘は。


 彼、Sランク冒険者だし。


「なるほど。確かに変なクエストとかもあるから、見ていて楽しそうだな」


「そうなんですよ」


「これで心配は、無くなりましたね」


「ああ、これで安心出来る」


 アンタが心配し過ぎなだけだけどな。


「ほら、それより休憩時間少なくなってますよ。飯に行きましょう」


 よし、この流れに乗って会話を終わらせよう。


「お腹空きましたよね?」


「おお、そうだった!」


「ヤバい、定食残ってるかな?」


「無かったら単品頼めば良いじゃないですか?」


「馬鹿、そしたら高いだろ」


 神の世界は、今日も穏やかに流れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ