属性剣の効率的な運用
最近、陽射しが強くなって来た。そろそろ、夏だろう。
今日は、農業試験場の各種エリアの成果を確認する。
遊びで造った属性剣。
空間接続で落下させ、加速させた後、獲物にぶつけるってやり方で狩りをしていた時期があったが、今はしていない。
命中する度に威力に負けて、相手と共に砕け散る。
フラガラッハや炎魔剣イフリート程じゃないと無理だった。
だから、農業に生かせないかと考えた。
気付いたのは、炎の属性剣を抜いた時。
鞘から抜くと大気が変化する事に気付いた。
他の剣でも似たような現象が起こっていた。
属性剣は、環境影響の効果があるようだ。
だから、農業試験場で実験始めた。
火の属性剣。
土に刺すと土壌の水分が減少、大気は乾燥。
熱帯の乾燥した土地に変わった。
なので、それらの土地の植物を植えた。
例えば、トマト。
「なんだこれ。糖度がヤバいな」
水分が減ると糖度が上がると聞いたことがあったので試したら、外のに比べて糖度が跳ね上がった。
果物と言っても差し支えないだろう。
パイナップル。
果物の実験として植えた。
熱帯植物だから良いと思って。
最初は、中央に花が出ても、葉はトゲトゲで大きな草にしか見えなかった。
そこから花辺りが一気に膨らみ実になった。
糖度と酸味のバランスは、最高だった。
皆にも好評な様で食卓に上がる。
口直しに最高だしな。
当然、アイリスも食べる。
昔、妊婦にパイナップルはダメだったが、あれに医学的根拠はない。
普通に食う分には問題ないだろう。
ただ、アイリスは食い過ぎるので注意。
水の属性剣。
これが一番重宝している。
この土地は、塩分濃度が高い。
野菜もスキル影響が無いと育ち辛い。
水の属性剣を刺すと塩分濃度が下がった。
土壌の水分量が上がったからかもしれない。
これにより、通常の農業が可能になった。
但し、抜くと土壌の濃度差によって、1週間ほどで戻る。
現在、畑の仕切りや立て札に水の刻印をして刺している。
さて、そんな俺の目の前に広がるのは、稲とナギサ麦の畑。
1回目は、塩分濃度により途中で枯れた。
2回目は、属性剣により順調に成長。
来週には、収穫可能そうだ。
久しぶりに米が食える。
リリア希望のナギサ麦も順調だ。
これは、稲より先に収穫出来た。
普通の土地では、1年に2回収穫可能だそうだが、ここでは、4回行けそうだ。
稲の方は、予測だが年2回になりそうだ。
稲の生産増やそうかな?
……手が回らないな。止めよう。
和国との取引まだかな?
風の属性剣。
これは、なんというか、渦?
刺した場所を中心に風の渦が生まれた。
とは言っても、激しいものではない。
そよ風程度だ。
この風が花粉を飛ばせないかと考えた。
部屋の中心に置いているので、部屋全体を循環している。
これならわざわざ受粉の作業が要らないのでは?
受粉で思い出したので、イチゴを植えた。
種からの為、2週間程で花が咲き、花粉が舞い始める。
最初、普通に入って花粉まみれになった。
風除けの魔法必須。
結果は、受粉成功。
2日後には、小さな実を付けていた。
1週間程で赤い立派な実へと変わった。
生育速度としては、2週間程だろう。
味は、ミルク無しでも充分甘い。
一度実をつけてからは、週1で収穫出来ている。
まぁ、消費もその分多いがね。
ジャムにお菓子に、そのままと大人気だ。
他の属性剣は、農業以外で使用中。
氷の属性剣。
上級刻印が問題だったのだろうか?
部屋が凍結した。
慌てて、炎魔剣イフリートで解凍。
封印しようとしたが、旧式冷蔵庫を思い出した。
確か、上部に氷を入れるだったか?
記憶を参考に氷の属性剣をセットして、上は冷凍庫、下は冷蔵庫になる様に作製した。
結露による水滴は、冷蔵庫の高さを上げて真下に容器をセット。
掃除担当が捨てる事にした。
これでアイテムボックス以外の保存が可能になった。
下級刻印により凍結ナイフも製作された。
これによりシャーベットが可能になる。
今の人気は、ゴールドアッポのシャーベットだ。
俺は、パイナップルの方が好きだが、理解してくれるのはリディアだけだな。
1人じゃ多いし、半分あげよう。
雷の属性剣。
これは、酷い。
川で釣りをする時に使われる。
マリー考案。
使い方は、こうだ。
鞘から抜きます。
雷の属性剣は、放電開始。
柄に紐を括りつけた後、川に投擲。
数秒後、川に魚が浮き上がる。
死んだ訳ではない。
痺れて仮死状態なだけだ。
マリーは、魔法で同じことをしてたらしい。
道理で釣りに行ったのに直ぐに帰って来ると思った。
……生きる為だ、慈悲はない。
こんな感じで色々やっている。
「属性剣って、便利やわ〜」
「そうそう手に入るもんじゃないんですけど……」
「属性剣使って農業とか、普通の冒険者ならキレる所業だよね!」
そんなツッコミを入れてくるマリーとアイリス。
「遊びで作ったやつだぞ。あれ」
「まず、刻印を施せる人が殆どいませんし。あれ1本で金貨100枚いきますよ」
元値は、Bランクの鋼鉄剣。大銀貨3枚。
それに魔法刻印を施しただけ。
もっともコレでも高いのだけどな。
一般男性の平均日当が銀貨5枚。
3日分の給与と同じだ。
「冒険者の収益より割がいいんだよな。ポーションの販売とかも」
「狩ってる人間が多いからね。そうなるよ」
「まぁ、属性剣で遊ぶのも冒険者するのも趣味みたいなもんだから適当でいいだろ。あっ、イチゴきれたけど追加いる?」
「「いる!!」」
アイテムボックスからイチゴを出す。
「しかし、作物増えたな。アイテムボックスにもかなり入ってるぞ」
パネル一面が食材で埋め尽くされている。
スライドして見るが、それが3面ほど。
無限且つ時間停止のアイテムボックスだから良いが、普通なら腐るよな。
「でしたら、以前の計画実行されてはどうです?」
「え〜っと、なんだっけ?」
「孤児院に食材を寄付する話ですよ」
「大丈夫か?見た事の無い食材とかあるぞ」
「食べ物なんですから焼くなり蒸すなりすれば、分からなくても食べられると思いますよ」
「そりゃあ、そうだが」
出来れば美味しく食ってもらいたい。
「人数増やすのも有りじゃない?」
「人数?ここの?」
「うん。ミズキたちを見ていて大変そうだと思って」
「そういや、掃除とか基本丸投げだったな」
一応、自分の部屋は自分でしているけど。
「最近、私やマリーは気を使われて手伝えないしさ」
「そうですね。後2〜3人増えて欲しい所ですね」
「2〜3人ねぇ……」
奴隷売買は、禁止だしな。
「少し考えておくよ」
今すぐ、ヤバい訳ではないし。
「今更だけど、商人に売れば?過剰分」
人員の話になったけど、元々はその話だった。
「それが1番無難だな。考えなくて良いし」
「それなら、商会ギルドに登録すると最適な人紹介してくれますよ」
「なら、ちょっと行ってみることにするよ」
今日は遅いし、明日にでも行ってみよう。
ちなみに、人員問題は俺が風の属性剣を応用して、サイクロン掃除機を作った事で解決した。
フランやユキが、嬉々として使っているのを目撃する。