水を探そう
さてと水を探す為に、石を拾いますか。何故、石?と思うだろう。別に、木の枝でもいいけど、石の方が投げやすいし良く飛ぶからだ。
そうじゃない?まぁ、理由は、後で分かるさ。
とりあえず、森の中で探すが、石って意外に落ちていない。仕方ないので、地面から少し見えた石を掘りおこす事にした。
スコップ。
念じると右手に白銀のスコップが現れた。
何でも形を変えると言ったから、スコップに成るかなと思ったらちゃんと変化した。
それでは、地面を掘ろう。おやおや、少し見えていた石を掘った結果、ソフトボールサイズのモノが出て来た。これなら丁度良さそうだ。
俺は、その石を拾って、構えると。
「せいのっ!!」
真上に向かって全力で投げた。
魔力による筋力強化。意識すると、力が集まるのを感じ、パワーが増した。
石は、真っ直ぐ上に向かって、猛スピードで登って行く。目算になるが、既に地上から3000mを突破した。
おいおい、めっちゃ筋力上がってるな!!
というか、普通なら見えないが集中すると見えるこの不思議。
「物体置換!」
唱えると同時に、石と自分の位置が入れ替わった。その為に、石を拾ったのだ。確かに枝でも良いが、あまり高く上がらないからな。軽いし。
そして、現在、石の代わりに俺の身体が上昇し続けている。
この魔法には、ある特性があるのだ。
それは、対象への運動エネルギーが消えない事。だから、石の代わりに俺の身体が上昇している。
しかし、石と違い、俺の身体の方が質量も空気抵抗も大きいので直ぐに止まるだろうよ。
結局、俺の身体は、更に100m程進んだ時点で落下が始まった。
よし、目的達成。予定通り、この高さなら森全体を見渡せる。
この高さからまずは、水を探す。サバイバルにおいて、水は重要だからな。川でも泉でもどちらでも良い。とにかく、水だ。
探した結果、森の中央を大きな川が流れているのが確認出来た。そして、いくつかの泉も確認出来た。
更に、ラッキーな事に、拠点の側にも泉が1つ存在していた。
飲めるのかどうか? 鑑定を行う。
名称:なし
説明:グラディス山脈に濾過されたミネラル分豊富な湧き水。飲用可能。
天然の泉だから名前は無いわな。周りの山は、グラディス山脈というらしい。そして、問題の飲用だが可能だった。
鑑定の結果が確かならな。
ついでに、他も見渡した結果、近場で色々なモノを見つける事が出来た。本当に、食料が豊富な場所に転移させてくれたらしい。
胡椒に果物と色々だ。胡椒はまんま胡椒の実で、果実は、たぶん異世界の固有種だろう。リンゴに似ているが、金色に近い黄色をしている。
名称:ゴールドアッポ
説明:マナ濃度の高い場所に自然発生する。稀少な果実の為、高値で取引される。滋養強壮によく、マナの回復効果有り。また、栄養価が高く、これ1つで2〜3日は過ごせると言われる。食用可能。干し柿ならぬ干し林檎にする事をオススメします。
「………」
なんか、オススメされたのだが……。
確かに、干した方が保存に適しているしな、後で加工しよう。皮を剥いて、干しておくだけだし。あれ、それだけで良いんだっけ?なんとかなるか!
これで、獲物が獲られずとも食に困る事はないだろう。
山の麓にも、岩塩が存在するのも見えたし。これで、食の心配は無くなった訳だ。
さて、地上に戻るとしよう。まだ、空中だからな。
はい、どうやって戻るか?
それは簡単。普通に、空間転移で地上に帰ればいいだけだ。
じゃあ、何故、初めにしなかったのか?
それは位置が正しく認識出来なかったからだ。
空間転移の条件は、一度訪れた場所もしくは目視した場所。または、認識出来る範囲内のみ。
一度訪れた場所以外は、認識する必要がある。要は、目印が必要という事だ。
だから、魔力感知で背後を認識すれば、直接見ていないのにそこに移動も出来る。
今回は、上空にモノが無い為不可能。鳥でも飛んでいたら楽だったんだがな。
目印として、石を投げる事でそこまでなら可能にした。
入れ替えにしたのは、転移だと自分は移動しても石はそのままなので後から降って来て危ないからだ。
あの高さからだとなかなかの衝撃になる。
今回、食料の場所を目視で認識する事が出来たので、次からは回収に空間転移が行える様になった。
「空間転移」
俺は、無事、地面に戻ってきた。やはり、足場があった方が落ち着く。
分かった事だし、水を汲みに……何に汲めと?
桶やら器やらを用意していなかった事に気付いた。直ぐに創るとしよう。
まず、桶は木を空間魔法でくり抜いて造る。これは、一瞬で完了。
貯める容器はどうしよう?
木でもいいけど腐ったり、カビたりしそうだしな。石かな?石なら硬いし、劣化もそうそうしないだろう。苔が生えそうだけど。後、重さによる持ち運びも空間転移があるから問題ないな。石をくり抜いて造ろう。
いや、そもそも水だけ空間転移させればいいのでは?
そしたら、貯めるのに苦労しなくていいじゃないか。器だけ造って、そうしよう。
あの山なら適度な石がゴロゴロしてるだろ。行ってから適度な石をくり抜いて造ろう。
ついでに、岩塩も取りに行かないといけない。塩分も重要だ
そうと決まれば、即行動開始。
先程見た場所を想像し、"空間転移"と念じた。その瞬間、視界は一瞬で切り替わり山へと辿り着いた。