クエスト報酬と妊娠
宴会もあって翌日。
「こちらがSランク冒険者のギルドカードになります」
ビリーさんからAランクカードと引き換えに白銀のカードを渡された。
「事前に作っておいて良かったです。ミスリル製なので無くさない様にして下さいね。再発行料高いので」
ミスリル製か。
前のは、重かったけどこっちは軽いな。
あれ?項目が増えてる。
「師弟関係。ベルフォート・ミューズ。ベル?」
「あっ、それ、私です」
「何か、間違っていましたか?ギルさんよりそう伺っていたのですが」
「いえ、俺がベルのフルネーム知らなかったもので」
「問題ないなら良かったです。後、ギルさんから伝言です。ユリシーズさんがSランクになった事に合わせて、ギルさんの妹君マリアナ・ヴァーミリオンさんにSランクのギルドカードが配布されました」
「「はぁ!?」」
アイリスも知らなかった様だ。
「これに伴い、制限は付くものの共にクエストへの同行が可能です」
「いいのか、それ?」
「大丈夫ですよ。そもそも竜種は強いので原則試験要らずでして、姫様におかれましてその実力は十分。また、ギルドで止め置かれてる高難易度クエストとか頼みやすくなりますからとの事です」
「まぁ、そっちがいいなら良いや」
いつも留守番させるの寂しかったのかな?
「これで、うちのチームは全員Sランクになったな」
「皆、頑張った」
「凄い事ですよね。メンバーが全てSランク冒険者で構成されているなんて。仮でユリシーズさんも入ってるんですよね?」
「ユーリで良いです。そういや、保留だった」
「アタイは、構わないよ」
「私も構わないわ」
「ユーリなら問題ない」
「師匠がいれば無敵ですね」
「でも、そんなにクエストしてないんだよな」
「だったら同盟を結べばいいのでは?」
「アライアンス?」
「チーム同士による同盟です。ダンジョンや高難易度クエストの際の招集で優先されます」
「それも有りだね。今と変わらず自由に出来るから」
「だったら、チーム名決めない?」
「チーム名重要。それが通り名になる」
「あれ?師匠って既に通り名ありませんでしたっけ?」
「いや、知らないんですけど」
一応、アイリスの顔を見た。
「私も知らない」
顔を横に降っている。アイリスも知らない様だ。
「はい、報告受けてますよ。確か、真紅の風です」
「ナニソレ」
そんな厨二病名、誰が付けた。
「竜王祭で100人抜きした時から呼ばれる様になったと。倒された人たちが口々に風が吹いた瞬間に気を失ったと証言した事が由来と聞いています」
英雄覇気が原因か。
しかも、シンボルになってる真紅のコートとかけたのね。
「カッコいいじゃねぇか!」
「でも、風より嵐の方が強くない?」
「一思いに切るのは?」
「真紅……良くないですか?師匠」
真紅か。
それなら一層、アレがいいな。
「紅蓮」
「紅蓮?」
アイリスが聞いてきた。
「アイリスの名の由来は、花って言ったな」
「うん。青い花」
「なら、俺は紅蓮。真紅の蓮の花を指す言葉だ。猛火の炎も示す。赤と青。対の色。夫婦という対だからこれが良い」
「対の色……うん!良いと思う!」
アイリスも良いようだ。
「という訳なので、紅蓮で登録お願いします」
「分かりました。紅蓮。確かにしっくりきますね」
「いいじゃねぇか!チーム紅蓮!」
「これは、お祝いね」
「目出度い」
「紅蓮!真紅の意味もあってピッタリです!」
この日、チーム名が紅蓮になり同盟チームが出来た。
場所を移して会議室。
「では、クエスト報酬を配布する」
「待ってくれ!」
マッドさんが立ち上がった。
「俺は、何もしていない。だから、報酬は要らない」
「いや、救助活動してたでしょ」
「やったのは、それだけだ。クラーケンに攻撃すらしていない」
「アンタがそれを言い出したら、アタイらも同じなんだよ。救助しかしてねぇ。そもそも、ユーリがいる時点でこうなる事は見えてたよ」
「マスターもそれを作戦に組み込んでいましたから問題有りませんよ」
ビリーさんがフォローする。
「形だけでも受け取ったらどうです?要らないなら、孤児院にでも寄付してくれると嬉しいのですが」
経験から貧しいのは、心を蝕むからな。
「ギルドとしても受け取って貰わねば示しがつかぬ。嫌なら先の提案を推奨する」
「分かった。貰っておく。マスタートカレフ。後で、寄付手続きを頼みます」
「あい、分かった。では、続けよう。今回の報酬は、各自、金貨200枚とする。おーい、持ってきてくれ」
ギルド職員さんたちが、目の前に金貨10枚重ねを縦5横4に置いて出ていった。
「大判振る舞いだね」
「昨日、解体した結果、大型の魔石が出た。その結果だ」
「アイテムボックスから出した時の紅い宝石?」
「そうだ。あれに金貨1200枚の値段がついた」
「なるほどね。有り難く貰うよ」
「では、皆さん帰りましょうか」
「今からここに転移門開くよ」
「本当ですか?助かります」
「そういえば、空間魔法の使い手だったな」
「そうですよ。定期的に買い出し来るのでよろしくです」
「なら、来たときはたまに顔を出してくれ。クエストを頼むかもしれん」
「分かりました。でも、1年ほど長期のクエストとかは受ける気、無いですけどね」
「どうしてだ?」
「何か、あるのかい?」
カトレアも気になる様だ。
「アイリス来て」
アイリスを呼んで横に立たせる。
「彼女が妊娠しました」
「出来ちゃった」
『何だって!?』
マッド以外は、事情を知っているので驚愕している。
「スライムが妊娠するのか?」
「どっちが産まれるの?」
「意外過ぎる」
「人と魔物って交配出来るんですね。あっ、半神か」
「魔物か、半神か、はたまた別の何かか。報告が必要ですね」
「魔族の原点が、魔人と聞くからな。魔族じゃないのか?」
「そこは、産まれてみないと分からないな」
「でも、どうやって気付いたのですか?師匠」
「今朝、朝食の手伝いでスライム状態になって貰おうとしたら変身出来なくなってた」
「たぶん、体内に異物。赤ちゃんが居ると思って」
「それで俺が鑑定したら、妊娠中だったという訳だ」
「おめでとうございます!アイリスさん!」
「おめでとう。アイリス」
「おめでとう。アイリスちゃん」
「おめでとさん。アイリス」
「おめでとうございます。アイリスさん」
「だから、直ぐに帰ろう。ゲート」
会議室と竜王国冒険者ギルド前を繋いだ。
「それじゃあ、失礼します」
挨拶をした後、門をくぐって皆が通ったら消した。
「私は、ギルドへの報告があるのでこれで失礼します」
最初にビリーさんが抜けた。
「それじゃあ、私たちも行こうかね」
「何処か、行くのか?」
「ラグス王国に帰るのさ。一応、あそこが拠点だからね。産まれるくらいにまた来るよ」
「ヤバいクエストなら呼べよ。直ぐ行くから」
「ははっ、期待してるよ。じゃあな」
「剣ありがとう、またね」
「また、来る。バイバイ」
「師匠。また、来ますので今度新しい文字教えて下さい」
「あぁ、気を付けてな」
「はい、失礼します」
カトレアたちは、帰途についた。
「帰るか、我が家に」
「うん」
俺は、アイリスと手を繋ぎ、王宮へと歩き出した。